前世は聖女だったらしいのですが、全く覚えていません

夏目

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広場

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「……は、はっ、は、は」

 最初に確認したのは自分の指だった。変な夢を見ていた気がする。苦悩と叫び、血の臭い。その全てが頭の中をぐるぐると回る。

「う……」

 吐き気が堪えられず、唾液をこぼす。ドロシーは脂汗をかきながら、唇を拭った。

 ミカエル。あれは、守護天使ミカエルだ。誰に言われずともそう確信を持っていた。

 彼の声が聞こえて、ドロシーは体が崩れていくのを感じた。
 シャイロックの目玉が溢れんばかりに見開かれ、伸ばされた手の無骨さがいまでも脳裏に焼き付いている。

 ドロシーは、死んだのだろう。ミカエルが殺した。殺して、くれた。
 シャイロックが生み出したあの惨劇は本当にあったことなのか……。

 オズが死んでから、ドロシーが死ぬまでの全てが現実のことだとは信じられなかった。
 だって、あんな地獄、現実に起こってはいけない……。

「ドロシー」

 声に体を震わせる。

「気分が悪いのか」

「しゃ、シャイロック様」

「青褪めているな。あの女達と親しかったのか」

「あの女達……?」

 体の震えが止まる。どういうことだ。何故、シャイロックがここにいる?
 どうしてドロシーは鞭で打たれていない。
 二度。二度だ。
 ドロシーはロズウェルの鞭で折檻を受けているときに戻った。今回とてそうだと思い込んでいた。だが、ドロシーの体に鞭の焼けるような痛みはなく、目の前にはシャイロックがいた。

 台車は視界の端にある。広間を見上げる街の人に紛れて、シャイロックはドロシーを心配そうに見つめている。

「磔になっている女どもだ」

「あ……」

 作業場へ行く前だ。シャイロックと広間の磔になったお針子達を見たすぐあと。このあと、作業場に行って犯人が神父だと分かる前だ。
 どうして、ここに戻っている?
 鞭で打たれているはずなのに。

「異端審問官の手口ではなさそうだ。磔に使われた釘が聖具ではないからな。邪を祓い、モナークの威光を知らしめる。あの者どもの考えることはいつも変わらん」

「シャイロック、様ぁ……」

「どうした?」

 俺の名前を何度も呼んでと、心配そうに覗き込んでくる彼に対して恐怖心が一切、わかない。
 おかしい。
 さっきまで確かに体が震えでいたはずだ。あの惨劇を見て、吐いた。胸に気持ち悪さが残っている。
 だというのに、シャイロックに安心感すら抱いている。

「わ、私は……」

 どうなっている。何かがおかしい。
 ……いや、そもそも、おかしかったのだ。
 どうしてドロシーはシャイロックをここまで信用している?
 助けられ、食事を貰った。働き口まで用意してくれるという。魔法使いの彼が。
 おかしいとは、思わないのか。疑念を抱いた癖に、どうしてそれが嫌悪感にならなかった。
 薄気味悪さに繋がらなかった?

「……魔法」

 シャイロックはドロシーに魔法を使っている。
 疑心の種を潰し、信用を得られるようにする悪徳の術だろう。そうでなければ、ドロシーが会って二日ほどの人間をこうも信用するものか。
 けれど、分かったところで、ドロシーにはシャイロックが怖くなかった。警戒しなくてはならないと分かっているのに、恐怖心がない。

 どうしよう。

 子供達とオズがこのあと何者かに首を掻き切られて死ぬのに、考えがまとまらない。そもそも、ドロシーがどうにか出来るのか?
 シャイロックに縋って、惨劇が起きた。けれど、力がないドロシーが、オズを救うことなんて本当に出来るの?

 天秤がゆらゆらと揺れる。
 シャイロックから逃げて、オズを連れてどこかに……。
 でも、どこに? 王都への道は閉ざされている。
 逃げる場所もない。
 そもそも、王都への道でオズもドロシーも殺された……。

「魔法がどうかしたのか」

「あ……」

 側にシャイロックがいることを忘れてすっかり悩みこんでいた。

「ま、魔法。魔法で彼女達を蘇らせることは出来ないんですか?」

 そう口からこぼしていた。ドロシーは自分の大胆さに驚き、前の生で起こった記憶をゆっくりと掘り起こす。

 シャイロックが行った蘇りは肉体だけだったように思えた。オズは苦しみ始め、喉を掻きむしった。シャイロックは死そのものは覆せないと言っていたはずだ。

「蘇らせる、か。死んだ人間から情報を聞き出そうと?」
「出来ませんか」
「お前の望むことは出来ないだろうな。蘇らせても、死からは逃れられない。話を聞くことは叶わないだろう」
「……シャイロック様はそれを試したことがあるのですか?」

 まさかとシャイロックは肩を竦めた。

「死者蘇生にはデメリットが存在する。生と死の境界は明確なものだ。そう易々と飛び越えられるものではないし、飛び越えるべきではない」
「なら、どうして」

 オズを蘇らせたんですか。

 思わずこぼした言葉に、シャイロックの眉根が寄る。口を押さえてなんでもないと首を振る。

「……どうなっている。早く、オリバーを呼びつけよ。賢人たる彼にこれが誠の魔女狩りか確かめさせねば」

 威厳のある声の響きに、ドロシーは視線を動かした。
 従者を引き連れ現れたのは、仕立てのいいスーツを着た紳士だった。片眼鏡をかけた彼は素早く命令を下すと、広間に磔にされた女達を一人ずつ見て回った。

「領主様だ」

 ドロシーでも知っている豪奢な馬車に描かれた家紋は、西の街のシンボルでもある。街の外壁の旗に描かれたものと一緒だ。

 オズと先生が言っていた。領主の従兄弟の奥方も魔女として殺されたのだと。

「……ドロシー、あの男の隣の女は誰だ」

「隣の女、ですか?」

 領主の影に隠れるようにほっそりとした女性がいることに気がついた。金髪の長い髪を結い上げ、真っ白なドレスを着ている。見るからに上流階級の女性だが、領主に娘がいるという話は聞いたことがなかった。

「……あ」


 顔に見覚えがあった。シャイロックがオズを蘇らせた時に逆らっていた王女だ。街の人に殴り殺された……。

「あの人は、わ、分かりません。領主様には息子が一人と聞いています」

「領主が敬っているように見えるが」

「西のこの街に領主様より偉い方なんていません」

「では、他の街から来たようだな」

 シャイロックは興味をひかれたように群衆に紛れて領主に近づいていく。
 あの惨劇が頭にチラついた。置いていけない。シャイロックのあとを追う。

「ボリビア卿、わたくしにお任せを。モナーク様より賜ったこの力でお力添えいたしましょう」

「い、いえ、アーニャ王女のお力をお借りするのは」

「ご遠慮なさらず。西の街を訪れることとなったのもモナーク様のお導き。今こそわたくしの力でこの者達が魔女であるか調べましょう」

「あ、……い、いえ」

 歯切れの悪そうな領主の様子に首を傾げていると、シャイロックが耳打ちをしてきた。

「西の領主は何故ああも女達のことに躍起になる? 愛人でも磔にされているのか」

「さ、さあ? どうなんでしょうか」

「……王女が西の街にいるのはいつものことなのか?」

「王族の方は王都にいるものでは?」

 ドロシーが孤児だから知らないというわけではないだろう。明らかに異質な組み合わせだった。西の街に王族が住むとは聞かない。遊びに訪れるというのはたまに聞くけれど。

「では王都への道を塞がれ立ち往生している手合いか」

「シャイロック様と同じですね。シャイロック様はご存じですか? その……王女のことを」

「知らん。俺は王族に興味がない」

 ばっさりと切り捨てたシャイロックは、思わしげに王女を見遣ると片眉を上げる。

「面倒な女だ。聖力を持っているらしい。神父どもと違って秤を用いずとも、魔を探り当ててみせるぞ」

「そ、それはつまりシャイロック様が魔法使いだとバレてしまうということですか!?」

 慌てふためくドロシーを尻目にやれ困ったと横柄にシャイロックは肩を竦める。

「シャイロック様!」

「まあ、狼狽えるな。俺に考えがある」

 嫌な予感しかしない……。ドロシーが慌てて袖を掴むが、彼は振り返り微笑むだけで抵抗を終わらせた。
 シャイロックはドロシーと手を繋ぐ。

「――お困りのようなら、手を貸そうか」

 偉そうな物言いで領主と王女の前に躍り出たシャイロックは、二人を順に見た。

「俺とこの助手が、お力になろう」

「しゃ、シャイロック様!?」

 度胸というには無鉄砲過ぎる解決方法に驚愕し、名前を叫ぶ。
 何やってるんだ、この人!
 ドロシーの心臓はばくんばくんと跳ねていた。
 魔法使いとバレる前に、問題を解決させようということなのだろう。
 豪胆過ぎる!

「――貴殿は」

 領主が訝しげに誰何する。どこの馬の骨だと顔に書いてあった。

「錬金術師協会No.00002、シャイロックだ。デコスタ製薬の名誉顧問も務めている。お力になれると自負しているが?」

「デコスタ製薬!? 名誉顧問ということは幹部会のメンバーであったか。これは不躾を失礼した」

「デコスタ製薬? ボリビア卿、有名なのですか」

 ドロシーも知らない。というか、製薬とは何だろうか。薬師のこと?

「王都以外で活動している製薬会社です。七年前の流行病の特効薬で大層名をあげた。王が勲章を授与したたった一つの会社でございますよ」

「特効薬……? 特効薬、ですか。それはご苦労ですわね。ただ、そんな方が魔女のことをお分かりになるのかしら」

「アーニャ王女! シャイロック殿にお任せいたしましょう。デコスタ製薬は皆が医者である特異な会社。信用がおけます。お姿を見るに、東部から来られたようだ。東部の領主はデコスタ製薬に異端者の死体を検分させているとも聞きますので」

「よくご存じだ。流石はボリビア卿。東の街ではランカスター殿に贔屓になっている。西を治める偉大なる方の話も、よく」

「ランカスター殿が! それはそれは……」

 知らない名前ばかり飛び交う。ドロシーは西の領主がボリビアと呼ばれているのも初めて知った。
 ドロシーにとっては領主はここにいる彼のことで他の領主と区別する必要などなかったのだ。
 シャイロックは出鱈目を言っているのだろうか。六英雄の一人で、魔法使いで、竜で……そして、領主も認める会社の偉い人間?

 途方もない違う世界の人。隣にいるのが不思議な、高貴な人なのか。

「ボリビア卿、よろしければこちらの淑女をご紹介いただけるか。なに分、デコスタの者で、王都の方には疎い」

「アーニャ・リッテンベルク・シュイーナ。第五王女よ。王都ではわたくしのことを聖女と呼ぶ者もいるわ」

「聖女!」

 嘲笑を噛み殺すようにシャイロックは声を張った。

「それは素晴らしい。聖力もお強いようだしな」

「あら、分かるの。医者如きが」

 明らかに侮蔑的な視線を王女はシャイロックに向けていた。

「王都には疎いとは言っていたけれど、わたくしもお前達のことは疎いわ。デコスタ製薬というのも聞いたことがない」

「何分小さな製薬会社。耳に入るはずもない」

 ……疎いドロシーでも分かる。シャイロックも王女のことを挑発するように慇懃無礼に振る舞っている。形だけ敬語を使っているということがありありと分かった。

「さて、この女達だが。魔女には到底見えないな」

「や、やはりそうだろうな。だがこの磔は異端審問官によるものだろう」

「そうとも限らないと思うが。聖具が一つも使用されていない。魔を祓うのならば、聖具がなければ。これは見よう見まねの模倣犯だろう。ただの殺戮者がこの街にいるということだ」

 周囲が騒ついた。王女がシャイロックを睨み付ける。

「いたずらに民を煽るのは感心しません。魔女という可能性も捨てきれません」

「か、彼女達はお針子です。王都のパーティーのためにドレスを縫っていました」

「――何者ですか」

 名前を問われて肩をびくつかせる。今までシャイロックにだけ向けられていた王女の視線が初めてドロシーに注がれる。
 苛立ちを含んだ瞳に気圧される。体が萎縮した。

「わ、私は、ドロシーと、言います。彼女達と同じ仕事場で仕事をしていました。昨日の夜、体調が悪くなって休みました。そしたら、皆が、死んでいました」

「同僚ということですか。彼女達は魔女ではないのですか」

「わ、私が魔女に見えますか? 彼女達は普通のお針子です。ただの街の娘達です。魔法なんか使えない」
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