離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています

【R18】afterStory happy honeymoon〜

その後のふたり２ ①

　
　

　……よっこいしょ、と。

　クローゼットの前に、小さな脚立を持ってきて広げる。すると、たった今帰宅し着替えていたはずの彼が、すかさず横から現れて、私からそれを奪った。

「あ、あれ……？」
「だから、高い位置にあるものを取るときは声をかけてと言ったでしょう……」

　最近ことあるごとに、こんなやりとりをしている気がする。

「……大丈夫ですよ。これに乗れば届く位置ですし、智秋さん、帰ったばかりなのに――」

　なにせ、たった二段。私が小さいだけで、普通の人なら届く位置なのだ。

「いいから。いるときくらい俺を頼ってください」

　智秋さんは困ったように微笑み、広げた脚立を使わずに、クローゼットの上のストック用のキッチンペーパーを軽々と取ってくれた。

　ほんとうに、甲斐甲斐しい。

　そして受け取ったあとは私を見て微笑み、それからまるで定められた動きのように、ここのところ丸々してきた私のおなかを撫でキッチンに向かおうとする。

　――この様子、夕食も作ろうとしていない？

「ちょ、ちょっと、まってください～……！」




　――ハネムーンの翌月に妊娠が発覚し、先日無事、妊娠八ヶ月を迎えることができた。

　現在一月の中旬。
　お腹の子は、毎日すくすく成長している。

　悪阻はさほどなく、食欲が増しそれを我慢するほうが大変だった。
　安定期に入るころ落ち着いたけれど、今でも体重が増えすぎないように配慮しながら生活をしている。

　そして、秘書室のみんなには、妊娠四ヶ月になるころに報告した。各々お祝いの言葉をくれて、驚きながらも共に喜んでくれた。

『お、おい……島田が、ひよたまクラブなんてカバンに入れて出動してきたらしいぞ……？　明日地球が滅亡するんじゃねぇかって、朝からフーズの秘書室は戦慄したらしい』

『あたしはさっき、休憩室でベビー用品検索しているのを見ちゃったんですよね……なんかこう、桜には悪いけど……心がついていかないっていうか』

　まぁ、そんな失礼な声がちらほら聞こえて来たりもするが……通常業務を続ける私を、熱心に助けてくれる。
　みんな、智秋さんの変化に驚きを隠せないようだ。