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忠告13 ようやくわかったこと

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「……なにか、言えないことがあるんですね?」

「ん、んなわけないだろう……! 俺と國井の仲だろう? 嘘をつくわけねぇだろう!」

「いやいや、切腹間際の武士みたいな顔で言われても、説得力ありませんって……!」

 まさか……元恋人とか……?
 ……女性で、あんなに美人。
 どうしても、頭はそんな方向に行ってしまう……。

 気になって仕方なくて、何度も食らいついていると。

「――そもそも……隠してるって言ったら、お前の方だろう……?」

 いきなり棚に押し込もうとしていた本でズビシッ! と鼻先を指され、びくんっと背筋が伸びる私。

「え……! 私ですか?」
「そうだよ! さっき会長やクリスと話していた、引き抜きのこと! この俺が、知らないとでも思ってんのか……?」
「――!」
 
 今度は私のほうが。黙らされてしまう。

 なんと……やっぱり、聞いていたらしい。
 会長との話まで聞かれていたとは……。
 でも、これでダニエル会長を避けてくれたことに、合点がいく。

「仕方ねぇが……よし! 今日、飯食い行くぞ!」
「はい……?」

 そして、突然だけど、なにかがはじまった。

 ……え? 食事? 食事って言ったの……?

 藤森さん、悪阻の奥さんが心配でいつも早く帰ってるって言ってたよね?

「バカヤロー! 國井の一大事だ! 今日ばかりは、お前に付き合ってやる! ぜんぶぜんぶ吐いてもらうからな……?」

 藤森さんは私の心を見透かしてそう訂正すると、両手に本を抱えながら目の前に立ちふさがって来た。

 なんだか、話をすり替えられた挙げ句、面倒なことに、なってしまった……。

 智秋さん、ヘルプです……。



 ✽✽✽ side 智秋


 ――ふぅ……だいぶ長引いたな。

 時刻は二十二時過ぎ。
 レセプションのミーティングを終え、室長とふたり秘書室へ戻る。
 休み明けは、みな気が緩んでいるのかミーティングの進みが悪すぎる。
 まだ、やりたい仕事も残っているのに、もうこんな時間か。

 デスクに腰を下ろし、眼鏡をはずし目頭を摘む。
 すると、瞬く間に気の抜けた笑顔で笑いかけてくるいつもの彼女の顔が脳裏をよぎった。

 早く帰って、癒やされたい。寝ているかもしれないが、彼女を腕に収めて眠るのもまた、至福のときだ……。

 やはり今日は早めに帰ろうと、デスクを片付けようとしたとき、ポケットの中でスマートフォンが震えた。

 桜さんからの急用であれば困ると思って、急いで指先でスクリーンをタップする。
 しかし。
 
【愛しの嫁は預かった。筋肉マッチョでナイスガイなイケメン(元)相棒より♡】

「…………………」

 画面を睨みながら、たっぷり数十秒ほど固まった。

「なに固まってんのよ」と横から室長にこづかれような気がするが、聞こえない。

 気色の悪い文面のあとに、眼鏡のガリ勉キャラのスタンプ。
 そして、極めつけには……テーブルに突っ伏してヨダレを垂らす桜さんの写真だ。
 酔いつぶれているらしい。

 
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