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忠告12(後編) 何ひとつ嘘ではない
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しおりを挟むペアシェイプのローズクォーツを桜の花びらに見立てた小さなペンダントトップ。
朝日に反射してキラキラしている――桜の、ネックレスだ……。
聞くに、ジュエリーショップの帰り際、私が化粧室に寄っている間に購入してくれたらしい。
胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。
「いつの間に……でも、指輪もいただいたのにネックレスまで……」
マリッジリングだけでも、気後れしてしまいそうなのに――こんなに素敵なプレゼントをもらってもいいのだろうか……?
胸の中で高揚感と戸惑いが交差する。
だけど、智秋さんは、察したように柔らかに頬を緩める。
「指輪もこれも、ただ単に俺があなたに身に着けてほしいと思っただけだから――気に入ったなら、受け取って」
「もちろん素敵で嬉しいですけどぉ……」
「――なら、大人しく受け取りなさい」
智秋さんはそう優しくも隙なく言い包めると、私の頭を引き寄せてきた。
寝起きで体温の低いの唇が、しっとり交わりながら私の唇を翻弄してくる。
ゆったりした動作がなんとも艶めかしくて、すぐに夢中にさせられてしまう。
「……ありがとう、ございます」
隙間から観念したように声を上げると、智秋さんが「ふふっ」と後頭部にあった手を離してくれた。
唇を貪られているうちに、いつの間にか私の体は智秋さんの上に乗せられていて、智秋さんを見下ろす形になっていた。
この体勢……ドキドキする。
「どうしても、礼がしたいっていうなら……」
ニヤリとした智秋さんはそう言って、ずっと私の背中をするする撫でていた大きな手のひらをお尻に移動させ、イタズラをはじめる。
「――っぁ、ちょ、っと……なに、してるんですか……?」
手付きが、ちょっと、いかがわしいですよ……?
それでもって、私の下の智秋さんの智秋さんも、どんどん熱くなって……その……いらっしゃるけれども……。
昨夜何度も放出したはずの熱が、たちまち身体の中で熱く燻りはじめるのがわかった。
「……週明けから奴と対峙するための英気を養うのに協力してもらいましょうか」
なんて、飢えたように囁いているけれど。
昨夜だって、ほとんど寝ていない。
そして、強請るように熱くなった身体が触れ合って――。
「ぁ……まって」
「待てなんて、思ってないくせに――」
もっと健全なプレゼントがあるのでは……?
形に残るものをあげたいんですけど……!
なんて思いながらも。
その指先に。その唇に。意識が流される。
大好きな人に求められてしまえば、結局、私の理性なんてあってないようなものだ――。
「偏屈な男に捕まって可哀想に……。でも、絆したからには諦めて、俺だけをずっと愛してくださいね――」
「――ぁっ、ぁ、……もう好きに、決まってるよ……」
離れられるわけがない。
だから、智秋さんも、私だけをずっとずっと思っていて……?
翌日からの激務と日常……そしてまだ見えない決戦に備えるように。
もう一度ふたりアイスのようにドロドロに溶けあったのだった――。
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