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忠告4 俺なりに最大限だいじにします

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「……もちろん、はじめに國井さんに伝えたように『今後とも結婚も交際もするつもりない』という気持ちは嘘ではありません。周囲から悪魔だのロボットだの言われてますが、その通りで、自分が冷めた人間なのも自覚しています。だから、恋愛ごとのような面倒なものに、首をつっこむ気はなかった」

 島田さんは自らの心に触れていくような口ぶりで、ひとつひとつ提示していく。
 それに耳を傾けながら私は、秘書室に忠告に来たときの彼を思い出した。

 あのときの彼は、ピリピリとしていて人を寄せ付けないというか、“私”というよりも“見合い”や“結婚”から逃れたいようにもみえた。

 それがどういう思いから起因しているのかは分からないけれど。そうやってこれまで、女性を遠ざけてきたのは確かだろう。

「……だけど、どうしてなのか――」

 主張のさなか。ふいに、言いよどむ彼。

「トマトのような顔で必死に思いを告げてきた國井さんを、悪いように思わなかった――」

 え……。

 続けられたその言葉に、息が止まった。 

「……あんなにまっすぐ体当たりしてくる奇異な人がはじめてだったからかもしれませんが……。あのとき、矛盾した自分に疑問を覚えました。
 今までの私なら、キッパリ断っていたはずなんです。なのに、どうしてなのか、その場を離れることができなかった。それどころか、ふいに引き止めて、この案を思いついたりとかしまして……。
 まぁ――だからこれは……悪くいって利用、良く言って私の追求心を満たすための提案とでも言いましょうか……。少しのあいだ婚姻関係を結んでもらえれば、会長たちを黙らせることもできるし、もう少し國井さんという人物を知ればこの不快な疑問を処理することができるかもしれない……。
 もちろん、私に好意を寄せているあなたにだからできる提案ですけど……それだけでないのは、事実です」

 島田さんはたまに作業の手元を止めながらも、これまでの心の内を確認するようにして、ポンポン思いを口にしていく。

 もとより。

『自分の気持ち、自分でわからないの…!?』とか。

『告白してきた相手に偽装結婚とか、鬼畜の所業ですよ?!』とか。

『なんで偽装結婚なんて、おかしなこと思いついちゃったんですか!』って思わないでもないけれど。

 ふだん冷静沈着でクールな悪魔と恐れられている彼が、そんなことを考えていたという事実が信じられなかった。

 もっとも、トマトとか、奇異な人とか、不快な疑問とか。辛辣さは満載だけれど……。

 どんな形であろうと島田さんが一世一代の告白を受け取り、私を知りたいと思ってくれたのは嬉しいし、

 今まで仕事の付き合いをしてきて、彼がいかに歯に着せぬ反面そつない人なのかは分かっている。

 彼ほど頭のキレる人なら、私を本当の意味で利用して、偽装結婚に持ち込むことだって容易なはずなのに。

 こうして腹を割って話してくれたということは、私の気持ちに向き合おうとしてくれている証拠だと思う。

 それが彼にとって、まだ名前のつかない、ただの不可解で矛盾した気持ちだとしても。

 五年間ずっと島田さんを思ってきた私にはこれ以上ないほど素敵なことで。

 これ以上ないほどに……心が震えた。
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