145 / 166
忠告15 あなたと一からはじめたい
1
しおりを挟む
忠告15―― あなたと一からはじめたい
「――ビックリしました……。まさかクリスがレノックスおじさんに、何も報告していなかったなんて――」
パーティー終了後。お邸の戸締りを任された私たちの和やかな声が、静かに響いた。
「俺も、気づいたときは、まさかと思いましたけどね……」
――あれからレセプションパーティーは一旦どよめいたものの、無事に大盛況のまま終了した。
終了後、移動したゲストルームでは、改めてレノックス家親子三世代にて状況整理と今後についての話し合いが行われた。
気の収まらないレノックスおじさんのクリスへのお説教が、何度も響き渡っていた。
『まったく、お前というやつは――』
『だって、セクレタリーは自分で選んでいいって』
『それとコレとは別だ!』
――まぁ、確かにクリスにはビックリしたけれど、それよりも、その異変にいち早く気づき、利用した智秋さんに驚かされたと言えるだろう……。
人並み以上の業務をこなしながらも、優れた洞察力を発揮し、そして、LNOXの経営状況を利用してのコンサル契約の導入案。
今回の勝負は、智秋さんの圧勝だと言える。
ちなみに、クリスは引き抜きの件を咎められる事を懸念し、パーティーの日取りを内密にし、全て終わったあとの事後報告しようとしたんだとか。
日頃からクリスの近況報告を密告していた智秋さんが話の食い違いに気づき、レノックスおじさんへ打ち明けることで、発覚したらしい。 二人が内通していた事情を知ってムンクの叫びのようにショックを受けるクリスを見て、智秋さんの笑顔はとてつもなく悪い顔をしていた。
そして――そうして事態が収束した頃、合流したのは、なんと……イズミさんだった。
なんで? と驚きでいっぱいになる私。
『――2週間くらい前に、僕の補佐で訪れていたイズミに、島田が直接交渉しにきたんだ』
そこで、片付後こっそり見守っていた私の隣にやってきて詳細を教えてくれたのは、永斗社長だった。
『イズミはね、僕の友人のコンサル会社にヘッドハンティングされていった、うちでもかなりの優秀な社員だったんだ』
話し合う一行を見ながら、本社にいた頃のイズミさんの様子が明かされていく。
『学生時代から友人の起ち上げた会社でSEもやってみたいで、本社にいた頃は経理をやりながら社内のIT化にも大きく貢献してくれた。経営支援はもちろん電子やIT関連にも強いイズミなら、LNOXほど最適な場所はないと思う――』
永斗社長の話を聞いて納得した。
数値に強く税務経験の豊富な経理ならコンサル軸でも幅広く活躍できるだろう。それに加えて、IT関連にも強いなんて……。智秋さんが直々にお願いするのも頷けるかもしれない。
『まぁ……今回たまたま僕の補佐でこっちにいたのと、友人の会社だから融通をきかせられたのは幸運だったよね?』
もちろんそこには、イズミさんの会社の社長さんと友人だという、永斗社長のお力添えもあっただろう。
それから、フーズで密会と考察を重ね、さっきダニエル会長に提示したあの資料が出来ていったんだとか。
お礼を伝えると、永斗社長はいつもみたいにふわりと笑い、ひと足早くイズミさんを連れ、その場を立ち去ってしまった――。
――なにはともあれ、一件落着だった。
「――ビックリしました……。まさかクリスがレノックスおじさんに、何も報告していなかったなんて――」
パーティー終了後。お邸の戸締りを任された私たちの和やかな声が、静かに響いた。
「俺も、気づいたときは、まさかと思いましたけどね……」
――あれからレセプションパーティーは一旦どよめいたものの、無事に大盛況のまま終了した。
終了後、移動したゲストルームでは、改めてレノックス家親子三世代にて状況整理と今後についての話し合いが行われた。
気の収まらないレノックスおじさんのクリスへのお説教が、何度も響き渡っていた。
『まったく、お前というやつは――』
『だって、セクレタリーは自分で選んでいいって』
『それとコレとは別だ!』
――まぁ、確かにクリスにはビックリしたけれど、それよりも、その異変にいち早く気づき、利用した智秋さんに驚かされたと言えるだろう……。
人並み以上の業務をこなしながらも、優れた洞察力を発揮し、そして、LNOXの経営状況を利用してのコンサル契約の導入案。
今回の勝負は、智秋さんの圧勝だと言える。
ちなみに、クリスは引き抜きの件を咎められる事を懸念し、パーティーの日取りを内密にし、全て終わったあとの事後報告しようとしたんだとか。
日頃からクリスの近況報告を密告していた智秋さんが話の食い違いに気づき、レノックスおじさんへ打ち明けることで、発覚したらしい。 二人が内通していた事情を知ってムンクの叫びのようにショックを受けるクリスを見て、智秋さんの笑顔はとてつもなく悪い顔をしていた。
そして――そうして事態が収束した頃、合流したのは、なんと……イズミさんだった。
なんで? と驚きでいっぱいになる私。
『――2週間くらい前に、僕の補佐で訪れていたイズミに、島田が直接交渉しにきたんだ』
そこで、片付後こっそり見守っていた私の隣にやってきて詳細を教えてくれたのは、永斗社長だった。
『イズミはね、僕の友人のコンサル会社にヘッドハンティングされていった、うちでもかなりの優秀な社員だったんだ』
話し合う一行を見ながら、本社にいた頃のイズミさんの様子が明かされていく。
『学生時代から友人の起ち上げた会社でSEもやってみたいで、本社にいた頃は経理をやりながら社内のIT化にも大きく貢献してくれた。経営支援はもちろん電子やIT関連にも強いイズミなら、LNOXほど最適な場所はないと思う――』
永斗社長の話を聞いて納得した。
数値に強く税務経験の豊富な経理ならコンサル軸でも幅広く活躍できるだろう。それに加えて、IT関連にも強いなんて……。智秋さんが直々にお願いするのも頷けるかもしれない。
『まぁ……今回たまたま僕の補佐でこっちにいたのと、友人の会社だから融通をきかせられたのは幸運だったよね?』
もちろんそこには、イズミさんの会社の社長さんと友人だという、永斗社長のお力添えもあっただろう。
それから、フーズで密会と考察を重ね、さっきダニエル会長に提示したあの資料が出来ていったんだとか。
お礼を伝えると、永斗社長はいつもみたいにふわりと笑い、ひと足早くイズミさんを連れ、その場を立ち去ってしまった――。
――なにはともあれ、一件落着だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
169
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる