17 / 21
新たな客
しおりを挟む
暑かった夏もようやく終わり、秋の風が吹くようになった。
うちの畑も実りの秋を迎えている。
根菜類、芋類を中心に10種類ほど。
里芋やレンコンを使って豚汁でも作りたいけど肝心の豚肉が無い。
異世界では豚肉の代わりにオークを食べることが多いと、あれは確か⋯⋯パートの鴻池さんに聞いたことがあるけど、この辺りにオークは生息していない。
アシェラ曰く「オークの長たるオークキングでも、この森では生き抜けません」だそうだ。残念。
ああ、けんちん汁なら作れるな。それと雄羊でジンギスカン。体も温まるし、栄養もある。
今夜にでもさっそく作るとするか。
まずはゴボウの下拵えをしようとしたタイミングでアシェラから声がかかった。
「森で魔獣に襲われていた人間を発見しました」
発見されたのは4人の成人男性と2人の成人女性。
それと10才くらいの少女が1人。
全員ボロボロになり意識は無いみたいだけど、看病してくれていたハイエルフによると命の危険はないらしい。良かった。
「重症で死にそうでしたのでいちおう保護しました。いかがいたしますか?」
「回復魔法とか、薬草とかに詳しいやつはいるか? どうしてこんな森の中にいたのか、話を聞きたいから治療して静養してもらおう」
「デイジーが回復薬を魔法で作れます。呼んできますね」
デイジーの回復薬は、水魔法で作った水に彼女の特別な魔力を溶かしこんだもの。
それを意識が無いので、無理やり口の中に流し込んでいく。
「ん⋯⋯う⋯⋯うぅ、ここは?」
ほどなく1人が意識を取り戻した。
「ここは安全な場所だ。怪我の具合はどうだ?」
大精霊といわれるクラスのデイジーが作る回復薬はゲームに出てくるエリクサーなどの最上級の代物だ。
見る限り怪我は治っているようだが、念のため聞いておかないとな。
「⋯⋯信じられない。もう駄目かと覚悟していたのに、むしろ普段より体の具合がいい気すらする。お前が⋯⋯いや、あなたが俺たちを助けてくれたのか?」
「俺の仲間たちが魔獣にやられそうなあんたたちを見つけて連れてきた。治療したのは、そこにいるデイジーだ。礼なら彼女たちに言ってくれ」
「そうか。危ないところを救ってもらい感謝する」
ハイエルフやデイジーに振り返り、深々と頭を下げて感謝の言葉を口にする。
身に纏う雰囲気や物腰からして、少なくとも悪い奴ではなさそうだな。
「それで、なんでこんな森の中にいたんだ?」
「そ、そうだ! ミーア様⋯⋯ミーア様もご無事だろうか?」
慌てた様子の彼の視線の先には、傷もすっかり癒え、
疲れて眠る少女の姿があった。
うちの畑も実りの秋を迎えている。
根菜類、芋類を中心に10種類ほど。
里芋やレンコンを使って豚汁でも作りたいけど肝心の豚肉が無い。
異世界では豚肉の代わりにオークを食べることが多いと、あれは確か⋯⋯パートの鴻池さんに聞いたことがあるけど、この辺りにオークは生息していない。
アシェラ曰く「オークの長たるオークキングでも、この森では生き抜けません」だそうだ。残念。
ああ、けんちん汁なら作れるな。それと雄羊でジンギスカン。体も温まるし、栄養もある。
今夜にでもさっそく作るとするか。
まずはゴボウの下拵えをしようとしたタイミングでアシェラから声がかかった。
「森で魔獣に襲われていた人間を発見しました」
発見されたのは4人の成人男性と2人の成人女性。
それと10才くらいの少女が1人。
全員ボロボロになり意識は無いみたいだけど、看病してくれていたハイエルフによると命の危険はないらしい。良かった。
「重症で死にそうでしたのでいちおう保護しました。いかがいたしますか?」
「回復魔法とか、薬草とかに詳しいやつはいるか? どうしてこんな森の中にいたのか、話を聞きたいから治療して静養してもらおう」
「デイジーが回復薬を魔法で作れます。呼んできますね」
デイジーの回復薬は、水魔法で作った水に彼女の特別な魔力を溶かしこんだもの。
それを意識が無いので、無理やり口の中に流し込んでいく。
「ん⋯⋯う⋯⋯うぅ、ここは?」
ほどなく1人が意識を取り戻した。
「ここは安全な場所だ。怪我の具合はどうだ?」
大精霊といわれるクラスのデイジーが作る回復薬はゲームに出てくるエリクサーなどの最上級の代物だ。
見る限り怪我は治っているようだが、念のため聞いておかないとな。
「⋯⋯信じられない。もう駄目かと覚悟していたのに、むしろ普段より体の具合がいい気すらする。お前が⋯⋯いや、あなたが俺たちを助けてくれたのか?」
「俺の仲間たちが魔獣にやられそうなあんたたちを見つけて連れてきた。治療したのは、そこにいるデイジーだ。礼なら彼女たちに言ってくれ」
「そうか。危ないところを救ってもらい感謝する」
ハイエルフやデイジーに振り返り、深々と頭を下げて感謝の言葉を口にする。
身に纏う雰囲気や物腰からして、少なくとも悪い奴ではなさそうだな。
「それで、なんでこんな森の中にいたんだ?」
「そ、そうだ! ミーア様⋯⋯ミーア様もご無事だろうか?」
慌てた様子の彼の視線の先には、傷もすっかり癒え、
疲れて眠る少女の姿があった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
踊れば楽し。
紫月花おり
ファンタジー
【前世は妖!シリアス、ギャグ、バトル、なんとなくブロマンスで、たまにお食事やもふもふも!?なんでもありな和風ファンタジー!!?】
俺は常識人かつ現実主義(自称)な高校生なのに、前世が妖怪の「鬼」らしい!?
だがもちろん前世の記憶はないし、命を狙われるハメになった俺の元に現れたのは──かつての仲間…キャラの濃い妖怪たち!!?
ーーー*ーーー*ーーー
ある日の放課後──帰宅中に謎の化け物に命を狙われた高校2年生・高瀬宗一郎は、天狗・彼方に助けられた。
そして宗一郎は、自分が鬼・紅牙の生まれ変わりであり、その紅牙は妖の世界『幻妖界』や鬼の宝である『鬼哭』を盗んだ大罪人として命を狙われていると知る。
前世の記憶も心当たりもない、妖怪の存在すら信じていなかった宗一郎だが、平凡な日常が一変し命を狙われ続けながらも、かつての仲間であるキャラの濃い妖たちと共に紅牙の記憶を取り戻すことを決意せざるをえなくなってしまった……!?
迫り来る現実に混乱する宗一郎に、彼方は笑顔で言った。
「事実は変わらない。……せっかくなら楽しんだほうが良くない?」
そして宗一郎は紅牙の転生理由とその思いを、仲間たちの思いを、真実を知ることになっていく──
※カクヨム、小説家になろう にも同名義同タイトル小説を先行掲載
※以前エブリスタで作者が書いていた同名小説(未完)を元に加筆改変をしています
最強魔導師エンペラー
ブレイブ
ファンタジー
魔法が当たり前の世界 魔法学園ではF~ZZにランク分けされており かつて実在したZZクラス1位の最強魔導師エンペラー 彼は突然行方不明になった。そして現在 三代目エンペラーはエンペラーであるが 三代目だけは知らぬ秘密があった
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
【完結】魔獣の傷をグチャグチャペッタンと治したらテイマーになっていました〜黒い手ともふもふ番犬とのお散歩暮らし〜
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
★第四回ファンタジーカップ参加作品★
主人公は5歳の誕生日に両親から捨てられた。
真っ黒な髪に真っ黒な瞳。
そして、授かったスキルは回復属性魔法(闇)。
両親のスキルを授かることが一般的な世界で、主人公は異質の存在、悪魔と呼ばれた。
そんな彼は森で血だらけに倒れているウルフ三匹と出会う。
いざ、スキルを使うとグチャグチャと体を弄る音が……。
気づいた時には体一つに顔が三つくっついていた。
まるで地獄の門番ケルベロスにそっくりだ。
そんな謎のウルフとお散歩しながら、旅をするほのぼので少しダークなファンタジー。
お気に入り登録、コメントどんどんお待ちしております!
コメントしてくださると嬉しいです٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる