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冒険者たち
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タックの衝撃的な報告から数時間後、まだ陽は昇っていないが空が白み始めてきた早朝。冒険者ギルドにはCランク以上の冒険者が集められていた。
といっても今チャッチャカレにはAランクとSランク冒険者は存在していないので、CランクとBランクだけではあるのだが。
「まじかよ……オークキングが……」
「キャスカがオークどもに? くそ、なんてこった」
「話をよく聞け。キャスカの安否はまだ不明だ。諦めるんじゃない」
「オークキングより強い奴がいるかもしれないなんて……オレたちじゃ勝ち目ねえよ」
昨夜の酒も抜けきらないうちに緊急招集ということで半ば強制的に集められた冒険者たちも、ギルドマスターの口から語られた内容を耳にして二日酔いも眠気も一気に吹き飛んだ。
DランクからCランクに昇格する際の試験内容がハイオークの討伐であるため、集められたメンバーは全員がオーク族討伐の経験者ということになる。
しかしそのハイオーク討伐とて簡単なものではないのだ。
生半可な武器や防具ではハイオークには歯が立たず、魔法も使ってくるために何も考えずに突っ込むだけでは残念な事故が多発するレベル。
この壁が越えられずDランクのまま冒険者生活を終える者も数多い。
苦労して何とかハイオークを倒した者は、ランクアップ時にさらに強力なオークの存在を教えられる。
オークキング。
鋼鉄のような皮膚に覆われ、剣や槍でダメージを与えるのはAランク以上でないとまず不可能。
知力も高く、部下のオークやハイオークを囮として使い高ランク冒険者のパーティーを罠にはめ一網打尽にすることもあるという。
遭遇しても決して手を出すな。とにかく逃げ帰り情報を持ち帰れ。
それがぎりぎり可能となるのがCランク冒険者なのだ。
「落ち着け。 まだオークキング以上の奴がいると確定したわけではない」
ざわつく冒険者たちを落ち着かせるためギルドマスターが声を張り上げる。
「可能性があるというだけだ。しかし、可能性がある以上無視することはできん。万がいちオークキング以上の存在……オークオーバーロードが存在したとすればこのチャチャッカレだけではなく国の危機だからな。そこでBランクのパーティーは西の砦に向かい、正確な情報を持ち帰ってもらいたい。最優先はオークオーバーロードとオークキングの情報。次にキャスカ救出に先行しているヒカリたちパーティーの保護だ」
ギルドマスターとしては、ギルド職員であるキャスカ救出を最優先にしたいという気持ちはもちろんある。しかしここに至っては情報を最終戦にせざるをえない。苦渋の決断であった。
「Cランクの者たちは街道の警備を行う者と領主様へ報告する者に分かれてもらう」
「「「おう!!!」」」
冒険者たちは威勢よく声をあげると、それぞれの担当ギルド職員と打ち合わせをはじめた。
「ギルドマスター」
「タック? どうしたんだ」
「オレは……ヒカリたちのところへ行くぜ」
「お前はDランクだから参加は強制じゃないんだぞ。それにずっと動きっぱなしじゃないか」
「頼む。戻ると約束したんだ」
「……分かった。だが、ひとつ条件はつけさせてもらおう」
「条件?」
「後ろでお前を睨んでいるベティはお前が説得すること。それと、必ず無事でかえってこい」
「ああ。分かった」
といっても今チャッチャカレにはAランクとSランク冒険者は存在していないので、CランクとBランクだけではあるのだが。
「まじかよ……オークキングが……」
「キャスカがオークどもに? くそ、なんてこった」
「話をよく聞け。キャスカの安否はまだ不明だ。諦めるんじゃない」
「オークキングより強い奴がいるかもしれないなんて……オレたちじゃ勝ち目ねえよ」
昨夜の酒も抜けきらないうちに緊急招集ということで半ば強制的に集められた冒険者たちも、ギルドマスターの口から語られた内容を耳にして二日酔いも眠気も一気に吹き飛んだ。
DランクからCランクに昇格する際の試験内容がハイオークの討伐であるため、集められたメンバーは全員がオーク族討伐の経験者ということになる。
しかしそのハイオーク討伐とて簡単なものではないのだ。
生半可な武器や防具ではハイオークには歯が立たず、魔法も使ってくるために何も考えずに突っ込むだけでは残念な事故が多発するレベル。
この壁が越えられずDランクのまま冒険者生活を終える者も数多い。
苦労して何とかハイオークを倒した者は、ランクアップ時にさらに強力なオークの存在を教えられる。
オークキング。
鋼鉄のような皮膚に覆われ、剣や槍でダメージを与えるのはAランク以上でないとまず不可能。
知力も高く、部下のオークやハイオークを囮として使い高ランク冒険者のパーティーを罠にはめ一網打尽にすることもあるという。
遭遇しても決して手を出すな。とにかく逃げ帰り情報を持ち帰れ。
それがぎりぎり可能となるのがCランク冒険者なのだ。
「落ち着け。 まだオークキング以上の奴がいると確定したわけではない」
ざわつく冒険者たちを落ち着かせるためギルドマスターが声を張り上げる。
「可能性があるというだけだ。しかし、可能性がある以上無視することはできん。万がいちオークキング以上の存在……オークオーバーロードが存在したとすればこのチャチャッカレだけではなく国の危機だからな。そこでBランクのパーティーは西の砦に向かい、正確な情報を持ち帰ってもらいたい。最優先はオークオーバーロードとオークキングの情報。次にキャスカ救出に先行しているヒカリたちパーティーの保護だ」
ギルドマスターとしては、ギルド職員であるキャスカ救出を最優先にしたいという気持ちはもちろんある。しかしここに至っては情報を最終戦にせざるをえない。苦渋の決断であった。
「Cランクの者たちは街道の警備を行う者と領主様へ報告する者に分かれてもらう」
「「「おう!!!」」」
冒険者たちは威勢よく声をあげると、それぞれの担当ギルド職員と打ち合わせをはじめた。
「ギルドマスター」
「タック? どうしたんだ」
「オレは……ヒカリたちのところへ行くぜ」
「お前はDランクだから参加は強制じゃないんだぞ。それにずっと動きっぱなしじゃないか」
「頼む。戻ると約束したんだ」
「……分かった。だが、ひとつ条件はつけさせてもらおう」
「条件?」
「後ろでお前を睨んでいるベティはお前が説得すること。それと、必ず無事でかえってこい」
「ああ。分かった」
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