27 / 32
キャスカサイド
しおりを挟む
「……! ……!!」
ん……なんでしょう? ずいぶん騒がしいですね。わたしの眠りを妨げるものは許しませんよ?
それにしてもずいぶんと硬いベッドですね。 あれ、この感触は石? ベッドから落ちてしまったんでしょうか。でもわたしの寮、床は木だったような。
思い出しました。
ヒカリさんの引っ越し祝いに誘われて、差し入れやパーティーグッズを買いに行っているときにいきなり後ろから羽交い絞めにされて意識を失ってしまっていたようです。
寮にいったんお金や着替えを取りに戻ろうとして、普段あまり使わない裏道を使ったのがいけなかったのでしょうか。
いつもなら決して使わない道でしたが、はやくヒカリさんたちのところへ戻りたいという気持ちが強すぎたのかもしれません。
「……っ! …………ろ!」
どうやらわたしはどこかの部屋に監禁されているようですが、どうにも先ほどから外が騒がしいです。
手足を縛られているので動きにくいですが、なんとか扉まで移動します。
扉は外から何かで押さえつけられているのか開かなかったです。
でも、物音は少しですがさっきよりも聞こえます。
耳を当てて集中し、何が起きているのか確かめたほうがいいかもしれません。いえ、そうするべきでしょう。情報は命とギルドマスターから教えられましたし、わたし自身も冒険者のみなさんにそう伝えています。
聞こえてくる音や声は、争っているような音や悲鳴、パニックに陥っている怒鳴り声。
声のいくつかには覚えがあります。
何度断ってもしつこくわたしに絡んできた冒険者の連中です。
まさか、あいつらがわたしがさらわれたのを知って助けにきてくれているのでしょうか?
ありえませんね。どちらかといえばわたしをさらった側でしょう。
とにかく、逃げ出すには今がチャンスです。
これでも元冒険者、しかも斥候ですから縄の扱いにもそれなりに自信があります。
まずは両手……次に両足……
なんとか無事に拘束を解くことができました。
さて、これからわたしはどう動くべきでしょうか。
このままどこかに隠れて助けを待つというのも選択肢のひとつではありますが、どうも何やら緊急事態が起こっているようです。
とりあえず何が起こっているのかまず確認を……。
部屋を見回すと、高い位置に換気用の小さな窓がありました。鉄格子もはまっているのであそこから逃げ出すのは無理ですが、外の様子が分かるかもしれません。
石造りの壁の隙間に足をかけ、窓から外を覗きます。
あれは……オーク? いえ、ハイオークでしょうか?
そしてやはり、見覚えのある冒険者たち。
ハイオークは確かに強敵ではありますが、Dランクくらいの冒険者が3人でかかれば勝てない相手ではありません。
なのに、冒険者たちは一方的にやられています。逃げ出そうとしてもオークらしからぬ素早さで回り込まれて、……もう見ていられません。
あいつはただのハイオークではないのでしょうか?
そういえば、チャッチャカレから西のほうで、昔オークの氾濫があったと聞いたことがあります。
その生き残りが進化したとしたら……まさか、オークキング?
これは一刻も早く逃げ出したほうがよさそうです。
そう覚悟を決めたその時。
頑丈な扉がたったの一撃で外側から破壊されました。
破片が顔に当たり血がでていますが、扉を破ったソレから目を離すことができませんでした。
動いたら殺される。
これは予感……いえ、確信。
ギルドの教本に載っている、伝説の魔物。
いまだに窓の外から聞こえてくる、勝鬨をあげているオークキングよりもさらに格上で、北のジュエルタートルの神と同格の存在。
オークオーバーロード。
その絶対者がわたしの頭をつかみます。
ブラックアウトする寸前に頭に浮かんだのはあの人のこと。
「助けて、ヒカリさん」
ん……なんでしょう? ずいぶん騒がしいですね。わたしの眠りを妨げるものは許しませんよ?
それにしてもずいぶんと硬いベッドですね。 あれ、この感触は石? ベッドから落ちてしまったんでしょうか。でもわたしの寮、床は木だったような。
思い出しました。
ヒカリさんの引っ越し祝いに誘われて、差し入れやパーティーグッズを買いに行っているときにいきなり後ろから羽交い絞めにされて意識を失ってしまっていたようです。
寮にいったんお金や着替えを取りに戻ろうとして、普段あまり使わない裏道を使ったのがいけなかったのでしょうか。
いつもなら決して使わない道でしたが、はやくヒカリさんたちのところへ戻りたいという気持ちが強すぎたのかもしれません。
「……っ! …………ろ!」
どうやらわたしはどこかの部屋に監禁されているようですが、どうにも先ほどから外が騒がしいです。
手足を縛られているので動きにくいですが、なんとか扉まで移動します。
扉は外から何かで押さえつけられているのか開かなかったです。
でも、物音は少しですがさっきよりも聞こえます。
耳を当てて集中し、何が起きているのか確かめたほうがいいかもしれません。いえ、そうするべきでしょう。情報は命とギルドマスターから教えられましたし、わたし自身も冒険者のみなさんにそう伝えています。
聞こえてくる音や声は、争っているような音や悲鳴、パニックに陥っている怒鳴り声。
声のいくつかには覚えがあります。
何度断ってもしつこくわたしに絡んできた冒険者の連中です。
まさか、あいつらがわたしがさらわれたのを知って助けにきてくれているのでしょうか?
ありえませんね。どちらかといえばわたしをさらった側でしょう。
とにかく、逃げ出すには今がチャンスです。
これでも元冒険者、しかも斥候ですから縄の扱いにもそれなりに自信があります。
まずは両手……次に両足……
なんとか無事に拘束を解くことができました。
さて、これからわたしはどう動くべきでしょうか。
このままどこかに隠れて助けを待つというのも選択肢のひとつではありますが、どうも何やら緊急事態が起こっているようです。
とりあえず何が起こっているのかまず確認を……。
部屋を見回すと、高い位置に換気用の小さな窓がありました。鉄格子もはまっているのであそこから逃げ出すのは無理ですが、外の様子が分かるかもしれません。
石造りの壁の隙間に足をかけ、窓から外を覗きます。
あれは……オーク? いえ、ハイオークでしょうか?
そしてやはり、見覚えのある冒険者たち。
ハイオークは確かに強敵ではありますが、Dランクくらいの冒険者が3人でかかれば勝てない相手ではありません。
なのに、冒険者たちは一方的にやられています。逃げ出そうとしてもオークらしからぬ素早さで回り込まれて、……もう見ていられません。
あいつはただのハイオークではないのでしょうか?
そういえば、チャッチャカレから西のほうで、昔オークの氾濫があったと聞いたことがあります。
その生き残りが進化したとしたら……まさか、オークキング?
これは一刻も早く逃げ出したほうがよさそうです。
そう覚悟を決めたその時。
頑丈な扉がたったの一撃で外側から破壊されました。
破片が顔に当たり血がでていますが、扉を破ったソレから目を離すことができませんでした。
動いたら殺される。
これは予感……いえ、確信。
ギルドの教本に載っている、伝説の魔物。
いまだに窓の外から聞こえてくる、勝鬨をあげているオークキングよりもさらに格上で、北のジュエルタートルの神と同格の存在。
オークオーバーロード。
その絶対者がわたしの頭をつかみます。
ブラックアウトする寸前に頭に浮かんだのはあの人のこと。
「助けて、ヒカリさん」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる