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キャスカサイド
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「……! ……!!」
ん……なんでしょう? ずいぶん騒がしいですね。わたしの眠りを妨げるものは許しませんよ?
それにしてもずいぶんと硬いベッドですね。 あれ、この感触は石? ベッドから落ちてしまったんでしょうか。でもわたしの寮、床は木だったような。
思い出しました。
ヒカリさんの引っ越し祝いに誘われて、差し入れやパーティーグッズを買いに行っているときにいきなり後ろから羽交い絞めにされて意識を失ってしまっていたようです。
寮にいったんお金や着替えを取りに戻ろうとして、普段あまり使わない裏道を使ったのがいけなかったのでしょうか。
いつもなら決して使わない道でしたが、はやくヒカリさんたちのところへ戻りたいという気持ちが強すぎたのかもしれません。
「……っ! …………ろ!」
どうやらわたしはどこかの部屋に監禁されているようですが、どうにも先ほどから外が騒がしいです。
手足を縛られているので動きにくいですが、なんとか扉まで移動します。
扉は外から何かで押さえつけられているのか開かなかったです。
でも、物音は少しですがさっきよりも聞こえます。
耳を当てて集中し、何が起きているのか確かめたほうがいいかもしれません。いえ、そうするべきでしょう。情報は命とギルドマスターから教えられましたし、わたし自身も冒険者のみなさんにそう伝えています。
聞こえてくる音や声は、争っているような音や悲鳴、パニックに陥っている怒鳴り声。
声のいくつかには覚えがあります。
何度断ってもしつこくわたしに絡んできた冒険者の連中です。
まさか、あいつらがわたしがさらわれたのを知って助けにきてくれているのでしょうか?
ありえませんね。どちらかといえばわたしをさらった側でしょう。
とにかく、逃げ出すには今がチャンスです。
これでも元冒険者、しかも斥候ですから縄の扱いにもそれなりに自信があります。
まずは両手……次に両足……
なんとか無事に拘束を解くことができました。
さて、これからわたしはどう動くべきでしょうか。
このままどこかに隠れて助けを待つというのも選択肢のひとつではありますが、どうも何やら緊急事態が起こっているようです。
とりあえず何が起こっているのかまず確認を……。
部屋を見回すと、高い位置に換気用の小さな窓がありました。鉄格子もはまっているのであそこから逃げ出すのは無理ですが、外の様子が分かるかもしれません。
石造りの壁の隙間に足をかけ、窓から外を覗きます。
あれは……オーク? いえ、ハイオークでしょうか?
そしてやはり、見覚えのある冒険者たち。
ハイオークは確かに強敵ではありますが、Dランクくらいの冒険者が3人でかかれば勝てない相手ではありません。
なのに、冒険者たちは一方的にやられています。逃げ出そうとしてもオークらしからぬ素早さで回り込まれて、……もう見ていられません。
あいつはただのハイオークではないのでしょうか?
そういえば、チャッチャカレから西のほうで、昔オークの氾濫があったと聞いたことがあります。
その生き残りが進化したとしたら……まさか、オークキング?
これは一刻も早く逃げ出したほうがよさそうです。
そう覚悟を決めたその時。
頑丈な扉がたったの一撃で外側から破壊されました。
破片が顔に当たり血がでていますが、扉を破ったソレから目を離すことができませんでした。
動いたら殺される。
これは予感……いえ、確信。
ギルドの教本に載っている、伝説の魔物。
いまだに窓の外から聞こえてくる、勝鬨をあげているオークキングよりもさらに格上で、北のジュエルタートルの神と同格の存在。
オークオーバーロード。
その絶対者がわたしの頭をつかみます。
ブラックアウトする寸前に頭に浮かんだのはあの人のこと。
「助けて、ヒカリさん」
ん……なんでしょう? ずいぶん騒がしいですね。わたしの眠りを妨げるものは許しませんよ?
それにしてもずいぶんと硬いベッドですね。 あれ、この感触は石? ベッドから落ちてしまったんでしょうか。でもわたしの寮、床は木だったような。
思い出しました。
ヒカリさんの引っ越し祝いに誘われて、差し入れやパーティーグッズを買いに行っているときにいきなり後ろから羽交い絞めにされて意識を失ってしまっていたようです。
寮にいったんお金や着替えを取りに戻ろうとして、普段あまり使わない裏道を使ったのがいけなかったのでしょうか。
いつもなら決して使わない道でしたが、はやくヒカリさんたちのところへ戻りたいという気持ちが強すぎたのかもしれません。
「……っ! …………ろ!」
どうやらわたしはどこかの部屋に監禁されているようですが、どうにも先ほどから外が騒がしいです。
手足を縛られているので動きにくいですが、なんとか扉まで移動します。
扉は外から何かで押さえつけられているのか開かなかったです。
でも、物音は少しですがさっきよりも聞こえます。
耳を当てて集中し、何が起きているのか確かめたほうがいいかもしれません。いえ、そうするべきでしょう。情報は命とギルドマスターから教えられましたし、わたし自身も冒険者のみなさんにそう伝えています。
聞こえてくる音や声は、争っているような音や悲鳴、パニックに陥っている怒鳴り声。
声のいくつかには覚えがあります。
何度断ってもしつこくわたしに絡んできた冒険者の連中です。
まさか、あいつらがわたしがさらわれたのを知って助けにきてくれているのでしょうか?
ありえませんね。どちらかといえばわたしをさらった側でしょう。
とにかく、逃げ出すには今がチャンスです。
これでも元冒険者、しかも斥候ですから縄の扱いにもそれなりに自信があります。
まずは両手……次に両足……
なんとか無事に拘束を解くことができました。
さて、これからわたしはどう動くべきでしょうか。
このままどこかに隠れて助けを待つというのも選択肢のひとつではありますが、どうも何やら緊急事態が起こっているようです。
とりあえず何が起こっているのかまず確認を……。
部屋を見回すと、高い位置に換気用の小さな窓がありました。鉄格子もはまっているのであそこから逃げ出すのは無理ですが、外の様子が分かるかもしれません。
石造りの壁の隙間に足をかけ、窓から外を覗きます。
あれは……オーク? いえ、ハイオークでしょうか?
そしてやはり、見覚えのある冒険者たち。
ハイオークは確かに強敵ではありますが、Dランクくらいの冒険者が3人でかかれば勝てない相手ではありません。
なのに、冒険者たちは一方的にやられています。逃げ出そうとしてもオークらしからぬ素早さで回り込まれて、……もう見ていられません。
あいつはただのハイオークではないのでしょうか?
そういえば、チャッチャカレから西のほうで、昔オークの氾濫があったと聞いたことがあります。
その生き残りが進化したとしたら……まさか、オークキング?
これは一刻も早く逃げ出したほうがよさそうです。
そう覚悟を決めたその時。
頑丈な扉がたったの一撃で外側から破壊されました。
破片が顔に当たり血がでていますが、扉を破ったソレから目を離すことができませんでした。
動いたら殺される。
これは予感……いえ、確信。
ギルドの教本に載っている、伝説の魔物。
いまだに窓の外から聞こえてくる、勝鬨をあげているオークキングよりもさらに格上で、北のジュエルタートルの神と同格の存在。
オークオーバーロード。
その絶対者がわたしの頭をつかみます。
ブラックアウトする寸前に頭に浮かんだのはあの人のこと。
「助けて、ヒカリさん」
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