20 / 32
美人受付嬢と肝っ玉ビキニ母さん
しおりを挟む
「あれ? うちのキャスカはご一緒じゃないんですか?」
それが、オレが冒険者ギルドに着いて受付で最初に言われた言葉だった。
「昨夜も寮に帰ってきてないみたいで、今日も出勤していないので、てっきりヒカリさんのお宅でいい雰囲気になってそのまま朝帰り……いや、昼帰りコースかと思ってたんですけど」
「いや、昨夜どころか夕方にいったん分かれてから会ってないぞ? 夜の宴会には来るって言ってたのに顔を出さなかったから、オレたちも急な仕事でも入ったのかと思ってたんだけど」
「そうなんですか? キャスカさんと同室の子も、彼女が帰ってこなくて心配してたんですけど……。あ、すいません少しお待ちください。ギルドマスター!キャスカさん、ヒカリさんのとこにもいないみたいですよー」
立ち上がって手を振りながら奥にいる初老の男に声をかける。きっと彼がギルドマスターなんだろう。
「なに? それはおかしいな。あいつは男関係以外で仕事を勝手に休んだりするようなやつじゃないんだがな。なあ、兄さんええと……」
「ヒカリです」
「ああそうそうヒカリだったな。ダイヤモンドタートルで一攫千金当てたんだよな。羨ましいぜ」
「いやあ、たまたまですよ。ははは」
こっちにやってきたギルドマスターが笑いながら肩をバンバン叩く。正直痛い。年齢はそれなりにいってるみたいだけど、身体能力はオレなんかよりまだまだずっと上なんだろうな。
「で、うちのキャスカのことは本当に知らないのか?」
「ええ。おととい商業ギルドのナナさんって人といっしょに家探しを手伝ってもらって、昨日は夕方まで引っ越しを手伝ってくれたんです。それで夜に引っ越し祝いで宴会をするからいっしょにどうかって誘ったら、差し入れを持ってくるって言って帰っていきましたね。それで結局戻ってこなかったんで、てっきり急な仕事か何かでこれなくなったんだと思ってました」
さっき受付嬢に話したことをそのままギルドマスターに伝える。というか、実際それ以上のことは分からないんだから説明のしようもないんだけどな。
「昨日は急な仕事は特には無かったはずだが……おい、お前らも昨日は定時であがったんだよな?」
「ええ。昨日は受付や買い取り窓口は時間通りで閉めて残業もなかったですね」
「だよなあ。だからこそ、オレぁてっきり兄さんとそういう関係になったんだとばかり……まさか……? いや、さすがにそれはないか……」
「何か気になることでもあるんですか?」
「ん? あ、いやたいしたことじゃねえんだ。 まあ、あいつもいい大人だからそんなに心配しなくても大丈夫だろ。それで悪いんだがちょっくら捜してもらって、キャスカを見かけたらさっさとギルドに顔を出せって伝えてくれるか? 兄ちゃんのとこにいたならともかく、そうじゃないなら拳骨の一発くらいはくれてやらにゃならんからな」
「オレのとこならともかくっていうのは分かりませんが、いいですよ。ギルドマスターからの指名依頼ってことにしておきますね」
「しっかりしてるぜ。報酬は、受付の列が混んでても先頭に割り込み1回OKな権利でどうだ?」
「受注と報告の2回で」
「いいだろう。契約成立だな」
「あー、それで、寮には戻っていないのは間違いないんだよな?」
「はい、間違いなく。少なくとも今朝の時点ではいませんでした」
オレとギルドマスターの話を聞いて苦笑している受付嬢に尋ねるが、返事は予想通りのもの。
今はもう昼近い時間だから、とりあえずまずは寮に戻っていないか確認に行くか。
「あ、寮は男性は敷地内に立ち入り禁止なので、確認に行かれるならメルルさんかミリゼットさんといっしょに行ってくださいね。玄関の横に受付があるので、そこにいる寮母のビキニさんっていう方に聞いてみてください」
「ビキニ? それが名前なのか?」
「はいそうです。肝っ玉母さんっていう感じで頼りになりますよ」
そうか。ビキニな肝っ玉母さんか。誰得なんだよ。
「それじゃ任せたぞ兄さん」
「キャスカさんをよろしくお願いします」
「ああ、任しとけ」
それが、オレが冒険者ギルドに着いて受付で最初に言われた言葉だった。
「昨夜も寮に帰ってきてないみたいで、今日も出勤していないので、てっきりヒカリさんのお宅でいい雰囲気になってそのまま朝帰り……いや、昼帰りコースかと思ってたんですけど」
「いや、昨夜どころか夕方にいったん分かれてから会ってないぞ? 夜の宴会には来るって言ってたのに顔を出さなかったから、オレたちも急な仕事でも入ったのかと思ってたんだけど」
「そうなんですか? キャスカさんと同室の子も、彼女が帰ってこなくて心配してたんですけど……。あ、すいません少しお待ちください。ギルドマスター!キャスカさん、ヒカリさんのとこにもいないみたいですよー」
立ち上がって手を振りながら奥にいる初老の男に声をかける。きっと彼がギルドマスターなんだろう。
「なに? それはおかしいな。あいつは男関係以外で仕事を勝手に休んだりするようなやつじゃないんだがな。なあ、兄さんええと……」
「ヒカリです」
「ああそうそうヒカリだったな。ダイヤモンドタートルで一攫千金当てたんだよな。羨ましいぜ」
「いやあ、たまたまですよ。ははは」
こっちにやってきたギルドマスターが笑いながら肩をバンバン叩く。正直痛い。年齢はそれなりにいってるみたいだけど、身体能力はオレなんかよりまだまだずっと上なんだろうな。
「で、うちのキャスカのことは本当に知らないのか?」
「ええ。おととい商業ギルドのナナさんって人といっしょに家探しを手伝ってもらって、昨日は夕方まで引っ越しを手伝ってくれたんです。それで夜に引っ越し祝いで宴会をするからいっしょにどうかって誘ったら、差し入れを持ってくるって言って帰っていきましたね。それで結局戻ってこなかったんで、てっきり急な仕事か何かでこれなくなったんだと思ってました」
さっき受付嬢に話したことをそのままギルドマスターに伝える。というか、実際それ以上のことは分からないんだから説明のしようもないんだけどな。
「昨日は急な仕事は特には無かったはずだが……おい、お前らも昨日は定時であがったんだよな?」
「ええ。昨日は受付や買い取り窓口は時間通りで閉めて残業もなかったですね」
「だよなあ。だからこそ、オレぁてっきり兄さんとそういう関係になったんだとばかり……まさか……? いや、さすがにそれはないか……」
「何か気になることでもあるんですか?」
「ん? あ、いやたいしたことじゃねえんだ。 まあ、あいつもいい大人だからそんなに心配しなくても大丈夫だろ。それで悪いんだがちょっくら捜してもらって、キャスカを見かけたらさっさとギルドに顔を出せって伝えてくれるか? 兄ちゃんのとこにいたならともかく、そうじゃないなら拳骨の一発くらいはくれてやらにゃならんからな」
「オレのとこならともかくっていうのは分かりませんが、いいですよ。ギルドマスターからの指名依頼ってことにしておきますね」
「しっかりしてるぜ。報酬は、受付の列が混んでても先頭に割り込み1回OKな権利でどうだ?」
「受注と報告の2回で」
「いいだろう。契約成立だな」
「あー、それで、寮には戻っていないのは間違いないんだよな?」
「はい、間違いなく。少なくとも今朝の時点ではいませんでした」
オレとギルドマスターの話を聞いて苦笑している受付嬢に尋ねるが、返事は予想通りのもの。
今はもう昼近い時間だから、とりあえずまずは寮に戻っていないか確認に行くか。
「あ、寮は男性は敷地内に立ち入り禁止なので、確認に行かれるならメルルさんかミリゼットさんといっしょに行ってくださいね。玄関の横に受付があるので、そこにいる寮母のビキニさんっていう方に聞いてみてください」
「ビキニ? それが名前なのか?」
「はいそうです。肝っ玉母さんっていう感じで頼りになりますよ」
そうか。ビキニな肝っ玉母さんか。誰得なんだよ。
「それじゃ任せたぞ兄さん」
「キャスカさんをよろしくお願いします」
「ああ、任しとけ」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…
雪見だいふく
ファンタジー
私は大学からの帰り道に突然意識を失ってしまったらしい。
目覚めると
「異世界に行って楽しんできて!」と言われ訳も分からないまま強制的に転生させられる。
ちょっと待って下さい。私重度の人見知りですよ?あだ名失神姫だったんですよ??そんな奴には無理です!!
しかし神様は人でなし…もう戻れないそうです…私これからどうなるんでしょう?
頑張って生きていこうと思ったのに…色んなことに巻き込まれるんですが…新手の呪いかなにかですか?
これは3歩進んで4歩下がりたい主人公が騒動に巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んでいく3歩進んで2歩下がる物語。
♪♪
注意!最初は主人公に対して憤りを感じられるかもしれませんが、主人公がそうなってしまっている理由も、投稿で明らかになっていきますので、是非ご覧下さいませ。
♪♪
小説初投稿です。
この小説を見つけて下さり、本当にありがとうございます。
至らないところだらけですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
完結目指して頑張って参ります
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる