異世界実況ヒカリチャンネル

クレール・クール

文字の大きさ
上 下
9 / 32

作戦会議

しおりを挟む
「で、どう思う?」

 泊まっている宿からほど近い距離にある酒場で、ある程度おなかが満たされたところで切り出した。

「わたしはやってみるべきだと思いますよ」

「わたしもメルル殿と同意見だな。ここ数日の動きを見る限りでは、ジュエルタートルの弱兵なら余裕だろうな」

 2人とも賛成か。

 オレも基本的には挑戦してみたいと思っているんだよな。

 いつまでもゴブリンばかりじゃ動画映えもしないし、新しい場所で新しい魔物と戦うのはいい刺激になると思う。

 でも、気がかりもある。

「ジュエルタートル……亀だっけか? その亀ってどんな魔物なんだ?」

「手足が鱗に覆われて、武器や魔法を扱う程度には知能が高いな。年功序列で、上位者の命令は絶対らしいから軍のような行動を取ることもある」

「なるほど、武器を使うのか。ゴブリンよりも手ごわそうだな」

「確かにゴブリンよりは手強いが、そう苦労する相手でもないな。奴らは全身を鉱物や宝石で出来た甲羅に覆われていてな。その重さのせいで動きそのものは若い亀ならゴブリンと同程度だ。ただしパワーは比べ物にならないからな。しっかりと動きを読み、攻撃は盾で防ぐのではなく躱すようにして出来る限り喰らわないようにすることが大事だな」

「甲羅に覆われているということは、剣や槍はききにくいのか?」

「ああ。甲羅はさすがにたいした硬さだから、Dランク以下の冒険者の攻撃では歯が立たないだろうな。
 もっとも甲羅は素材としての価値が高いから、高ランクのベテランでもできるだけ甲羅は傷つけずに戦うのがセオリーだ」

 ああ、そういえばギルドの受付嬢もそんなことを話していたっけか。

「それじゃあ、どうやってその亀を倒せばいいんだ?」

「普通なら甲羅に覆われていない部分、つまり首や手足を攻撃するな。鱗に覆われていると言っても竜種というわけでもないからな。普通に斬れる。わたしの試験の時は、1匹だけでうろついていたところを後ろから首を刎ねてやった」

 ミリゼットの剣技のすごさはこの数日でよく分かった。みんなも見たよな? 見てない人は前回の投稿を要チェックだぞ。

 さすが魔法も使えないのに剣技のみでCランクまで昇りつめただけのことはあると思っていたけど、今のオレたちと同じFランクの頃から凄かったんだろうなあ。

 とてもオレにあの動きは真似できるとは思えない。いくら不意打ちとはいえ1発で首を落とす自信もないし、そもそもそこまで接近できるかもわからない。

 前にも説明したようにオレの身体能力は日本の一般男子と同じ程度だからな。

 ミリゼットもそれは分かっていたのか、さらに説明を続ける。

「ヒカリ殿ならもっと簡単に倒せるぞ? 奴らは物理防御は確かに高いがその分魔法に対する抵抗力は並程度だ。ヒカリ殿がゴブリンに使っている……雷魔法と言ったかな? あれを使えば苦も無く倒せるだろうさ」

「なるほど。でも、オレはともかくメルルはどうなる? 攻撃魔法なんて使えないぞ?」

「それも問題ない。今回出された課題はパーティー向けのものだから、パーティーで1匹狩ればそれで達成だ。ソロの冒険者の場合はまた同じくらいの難易度の別の課題が出されることになっているからな」

「へぇー。そこまで考えてあるんだな。でもパーティーの人数によっても難易度が変わるんじゃないか?」

「高ランクの試験にでもなればそうかもしれないが、これくらいなら大差はないさ。わたしたちは3人パーティーだが、2人でも6人でもパーティーでさえあれば同じ試験内容だ」

「あの、少しいいでしょうか?」

「ん? どうしたメルル殿?」

「ギルドの方は鉱山跡まで半日とおっしゃっていましたよね? ということは、日帰りではなかなか厳しいですよね?」

「うむ、メルル殿の言う通りだ。行きは確かに半日で行けるが、帰りは亀の素材も運ばないといけないからさらに時間がかかるからな。安全な場所を見つけて夜営し、2日がかりでやるのがいいだろう。そのあたりをうまくこなせるかというのも、FランクとEランクの差ということだろうな」

「なるほど、わかりました」

 どうやら、考えていた以上に冒険者ギルドもしっかりと考えて試験内容を用意していたみたいだな。

 街中や、最近のオレたちがやっていたような街の外でもごく浅い部分で仕事をするのが初心者のFランクならば、それよりも多少深いところまで行けるようになるのがEランク冒険者だ。

 距離が延びれば戦利品を運ぶのにも工夫がいるだろうし、時間配分にも注意を払う必要がある。

 そのあたりが出来るかどうかを見極めるための試験ということか。もちろん戦闘技術的なものもあるのだろうけど。

「よし、それじゃあこの試験は受けようと思う。2人もそれでいいか?」

「はい、もちろんです」

「ああ。ヒカリ殿ならきっと受けると思っていたぞ」

 2人が肯定しするのを確認し、パーティーリーダーとして指示を出す。

「明日はいつものようにしっかり休息をとることにしよう。そして明後日の昼間は夜営に必要な資材の買い出しをしようと思う。ミリゼット、このあたり必要になりそうな物があればリストアップしておいてくれるか?」

「ああ分かった。任せてくれ」

「そしてその後はいつもの平原か浅い森かで実際に夜営してみようと思う。いきなり亀の鉱山の近くでやるよりは、経験があったほうがいいだろうからな。朝になったら街に戻って追加で必要な物があれば準備し、夜は早めにぐっすり休む。そして翌朝早めに試験に出発する。これでどうだ?」

「いいと思います。安全第一です。視聴者さんもそのほうが異世界になじみやすいでしょうしね」

「メルル殿が何を言っているのか分からないところはあるが、わたしもその日程でいいと思う。入念な準備を怠ったり疲れが残った状態で遠出すると思わぬケガに繋がるからな。まだまだ駆け出しのヒカリ殿からこのような意見が出て驚いているくらいだ」

「よし、それじゃあそういうことで! 打合せはここまでということで、あらためて今日の依頼達成に乾杯するか。……よし、乾杯!」

「「かんぱ~い!」」

 ゴクゴクゴク……

 生温いエールをいっきに煽る。

 安全第一、いのち大事に作戦は変わらない。

 それでもはじめての遠出と昇格試験だ。

 ワクワクしてきたぜ!


 ☆彡
 異世界実況ヒカリチャンネル
 チャンネル登録8人
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です 詳細説明 生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。 そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。 そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。 しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。 赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。 色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。 家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。 ※小説家になろう様でも投稿しております

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...