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ゴブリンキャンプ
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ゴブリン。
それは、ゲームやマンガ、小説に映画といろいろと目に触れる機会の多い、スライムと並んで有名なモンスター。
強さや外見は作品によってまさにピンからキリまで。
人間の子供サイズの一般人でも倒せるレベルのゴブリンから、隊列を組んで襲ってくる知能に優れたホブゴブリンにゴブリンシャーマンにゴブリンキングなどなど各種取り揃えてられている。
基本的に一貫していることは、繁殖力が非常に高く、村や町を襲って男は殺し、女や家畜は攫っていく非常にゲスなモンスターであるということか。
僕は悪いスライムじゃないよというスライムはいても、僕は悪いゴブリンじゃないよというゴブリンの話はあまり聞かない。
そんな嫌われ役に回ることが多いゴブリンだが、果たしてこのエランディールではどうなのか?
「概ね、その通りの存在だ」
主道から外れた草原を歩きながらゴブリンの巣を探しがてら、ミリゼットからゴブリンについての情報収集をしていた。
「奴らはよく増える。町や村どころか、数が集まれば街ですら襲ってくることもあるほどだ。そういった事態を避けるため、ほとんどの冒険者ギルドで常設依頼として討伐依頼が出ている。依頼主は領主だったり裕福な商人だったり様々だ」
「つまり?」
「遠慮する必要はないということですね」
「ああ、その通りだ。奴らは奴らなりに群れを発展させるすべを知っているのか、鍛冶や商人の真似事をする連中もいる。そういった連中が増えないように早めに叩かないと、思わぬ痛手を被ることもある」
とまあ、ここまでは地球でゲームやマンガに慣れていればほとんど当たり前の情報だな。視聴者のみんなもだいたいこんなイメージだろうと思う。
オレが気になったのは一点。
「ゴブリンは森やダンジョンじゃなくて、こんな草原にいるのか?」
そう、てっきり角オオカミのいた森にでも行くものだと思っていたのだ。
「もちろん森やダンジョンにもたくさんいるさ。むしろ奴らがいない所があれば教えてもらいたいくらいだな。だが、そういった危険地帯にいるゴブリンは大抵の場合は草原のゴブリンより強く狡猾だ。魔物どうしの縄張り争いや熊などと戦うこともあるから奴らは余計な知恵を付けて罠を張っていることもある。ベテラン冒険者ならともかく、ヒカリ殿たちのような駆け出しなら、まずは草原で野良のゴブリンを狙って経験を積んだ方がいいだろうと思ってな」
「なるほど。さすがベテラン、頼りになるな」
「わたしの場合ソロでの活動が多かったから多少偏った考えかもしれないが、避けられる危険は避けるにこしたことはないからな。まあマングースネークに不意をつかれたわたしが言っても説得力はないかもしれんがな」
そう言って少し陰のある表情を見せるミリゼット。
明るい表情も画になるが、こういった表情もいい。
「ん? わたしの顔に何かついているか?」
「いや、ミリゼットはどんな表情してても綺麗だなと思ってさ」
「な、なななな⋯⋯わたしがか?ありえんだろう?! 体付きなんてほら、こんなに筋肉ばかりだし口だって悪いのは自覚しているしそれにほら、わたしはダークエルフだぞ? 人属と違うこの長い耳だって気持ち悪いだろう?」
色黒の顔がはっきり分かるくらい赤くなってブンブン手を振りながら否定するミリゼット。
「何言ってるんだよ、その耳なんてオレたちの憧れのひとつだぞ? 気持ち悪いどころか、とあるイベントではエルフの真似をする人がたくさんいるくらい人気があるんだぞ。その口調だって、我々の業界ではご褒美だなんて場合もあるし、オレもまあ⋯⋯嫌いじゃないな。それになんだ、その⋯⋯筋肉質というよりも引き締まってるって感じがするしその⋯⋯立派なそことか女性として魅力的だし? みたいな?」
「む、むう⋯⋯そそそ、そうなのか? ヒカリ殿はけっこうマニアックな趣味なのだな? あは、あはははは」
「ヒカリさんの言う通りですよ。それに、ミリゼットさんみたいに活発な姉御肌の女性って人気があるんですよ?」
「メルル殿までそんな⋯⋯な、なんだか照れるな。今までそんな風に言われたことはいちども無かったからな」
そんな話をしながら歩くこと、道を外れてから30分。
すっかり打ち解けたオレたちだったが、不意にミリゼットが真剣な表情で止まれと合図してきた。
「この先にゴブリンがいる。数はちょうど3匹だ。どうやら食事中らしいな」
草陰から見つからないように覗いてみると、少し窪地になっている場所でゴブリンたちが焚き火を利用して何かの肉を焼いているのが見える。
「凄いな。ここのゴブリンは火も使うのか」
「ヒカリ殿たちの故郷では使わないのか?」
「ああ。話に聞いただけでオレも直接ゴブリンを見るのは初めてなんだが、あいつらは肉は生のままで食うイメージだった」
「なら、その認識は改めたほうがいい。先程も言ったが奴らは頭がいい。逃すとやっかいになるかもしれんから気付かれる前に不意打ちがベストだ」
「具体的には?」
「攻撃魔法が使える者がいるパーティーなら、まずは遠距離から攻撃して敵の戦力を削ってから一斉攻撃だな。その場合、最初に攻撃した魔法使いは敵を牽制しつつ逃げ出す奴がいないか見張ったり、周辺に他の危険が迫っていないか確認したりするのが一般的だ。魔法使いがいないかわりに射手がいる場合も同様だな。わたし達の場合はヒカリ殿が魔法で攻撃し、そこにわたしが突撃してヒカリ殿が援護。メルル殿は引いた位置から指示と警戒がいいだろう」
「なるほど、なかなか大変そうだな。ちなみに遠隔攻撃が出来ないパーティーの場合は?」
「その場合はもっとも防御力に優れた者が囮りになり敵の注意を引き、その背後から攻撃役が倒していくな。ちなみにソロならば敵が3匹以上いる場合は戦わん。相手をするなら2匹までだな」
「安全第一だから?」
「そうだ。無理して怪我でもすればとてもではないが割に合わないからな」
ゴブリンたちは焼けた肉を食いながら、ギャアギャアと耳障りな声をあげている。
「用意はいいか?」
メルルとミリゼットが頷くのを確認して、オレは魔法を発動させる。
「【エアロカッター】」
圧縮された空気が鎌鼬のようにゴブリンに襲いかかり、肉を口にしていた1匹の上半身と下半身を分かれさせた。
「「ギャギャッ?!」」
慌てたのは残り2匹のゴブリンだ。
手に持っていた肉を落とし、慌てた様子で自分たちに危機が迫っていることを知ると棍棒を持って立ち上がる。
そして立ち上がったところに
「ふっ!」
メルトリーゼの剣の一撃が1匹の首を跳ね飛ばす。
「はあっ!」
返す刃でもう1匹を狙うが、棍棒で僅かに剣を逸らされゴブリンの肩口に大きな傷を負わせるとどまった。
「ギャギャ⋯⋯ギャア!」
残された最後のゴブリンは手にしていた棍棒をミリゼットに投げつけるが、それをミリゼットは簡単にかわす。
しかし、もともとダメージを与えようとしたわけではなかったのだろう。
ゴブリンは投げつけた直後には身を翻し逃走を図ろうとしたが
「ギッギギギ⋯⋯」
逃げようとした先に、銀髪の人間⋯⋯正確には人間ではないのだが⋯⋯自分の仲間2人を倒した人間よりも遥かに存在感の強い女を見つけ、足を止めてしまった。
「【エアロカッター】」
動きを止めて立ちすくんでいるゴブリンに、2発目の風魔法を打ち込むと、最初に倒したゴブリンのようにその体が2つに分かれた。
「大丈夫かメルル?」
「はい、大丈夫ですよ。ありがとうございますヒカリさん」
はじめての戦いを終えて興奮が止まらないオレのところへミリゼットがやってくる。
「今回はもう大丈夫だが、魔物や魔獣の中には首を切ったくらいでは死なぬ者ものもいるからな。すぐに気を抜くのは油断につながるぞ」
言葉では注意をしてくるが、そう言うミリゼットの顔にも満足感が浮かんでいる。
「さて、他の魔物が来る前にさっさと後始末をしてしまうか。約束通り解体はわたしがするから2人は警戒を頼む」
「分かった」
「任せてください」
ミリゼットは慣れた手付きでどんどんゴブリンを解体し、透明な魔石を取り出し、その後ゴブリンの死体に火をつけて燃やしてしまった。
「こいつらは持って帰っても素材としての価値はないからな」
その後、もう2匹のゴブリンを見つけ同じように危なげなく倒してオレたちはチャチャッカレに帰還した。
戦果はゴブリン5匹。
3人パーティーとしてはせいぜい2~3日分の生活費になるかどうか。
ミリゼットが半分を取り、残りをオレとメルルで分ける。
そしてこれから今日最後の仕事。
タックとベティーから言われていなかっとしても必ずやっていたであろうこと。
そう。
パーティー結成&初依頼達成記念の飲み会だ!
それは、ゲームやマンガ、小説に映画といろいろと目に触れる機会の多い、スライムと並んで有名なモンスター。
強さや外見は作品によってまさにピンからキリまで。
人間の子供サイズの一般人でも倒せるレベルのゴブリンから、隊列を組んで襲ってくる知能に優れたホブゴブリンにゴブリンシャーマンにゴブリンキングなどなど各種取り揃えてられている。
基本的に一貫していることは、繁殖力が非常に高く、村や町を襲って男は殺し、女や家畜は攫っていく非常にゲスなモンスターであるということか。
僕は悪いスライムじゃないよというスライムはいても、僕は悪いゴブリンじゃないよというゴブリンの話はあまり聞かない。
そんな嫌われ役に回ることが多いゴブリンだが、果たしてこのエランディールではどうなのか?
「概ね、その通りの存在だ」
主道から外れた草原を歩きながらゴブリンの巣を探しがてら、ミリゼットからゴブリンについての情報収集をしていた。
「奴らはよく増える。町や村どころか、数が集まれば街ですら襲ってくることもあるほどだ。そういった事態を避けるため、ほとんどの冒険者ギルドで常設依頼として討伐依頼が出ている。依頼主は領主だったり裕福な商人だったり様々だ」
「つまり?」
「遠慮する必要はないということですね」
「ああ、その通りだ。奴らは奴らなりに群れを発展させるすべを知っているのか、鍛冶や商人の真似事をする連中もいる。そういった連中が増えないように早めに叩かないと、思わぬ痛手を被ることもある」
とまあ、ここまでは地球でゲームやマンガに慣れていればほとんど当たり前の情報だな。視聴者のみんなもだいたいこんなイメージだろうと思う。
オレが気になったのは一点。
「ゴブリンは森やダンジョンじゃなくて、こんな草原にいるのか?」
そう、てっきり角オオカミのいた森にでも行くものだと思っていたのだ。
「もちろん森やダンジョンにもたくさんいるさ。むしろ奴らがいない所があれば教えてもらいたいくらいだな。だが、そういった危険地帯にいるゴブリンは大抵の場合は草原のゴブリンより強く狡猾だ。魔物どうしの縄張り争いや熊などと戦うこともあるから奴らは余計な知恵を付けて罠を張っていることもある。ベテラン冒険者ならともかく、ヒカリ殿たちのような駆け出しなら、まずは草原で野良のゴブリンを狙って経験を積んだ方がいいだろうと思ってな」
「なるほど。さすがベテラン、頼りになるな」
「わたしの場合ソロでの活動が多かったから多少偏った考えかもしれないが、避けられる危険は避けるにこしたことはないからな。まあマングースネークに不意をつかれたわたしが言っても説得力はないかもしれんがな」
そう言って少し陰のある表情を見せるミリゼット。
明るい表情も画になるが、こういった表情もいい。
「ん? わたしの顔に何かついているか?」
「いや、ミリゼットはどんな表情してても綺麗だなと思ってさ」
「な、なななな⋯⋯わたしがか?ありえんだろう?! 体付きなんてほら、こんなに筋肉ばかりだし口だって悪いのは自覚しているしそれにほら、わたしはダークエルフだぞ? 人属と違うこの長い耳だって気持ち悪いだろう?」
色黒の顔がはっきり分かるくらい赤くなってブンブン手を振りながら否定するミリゼット。
「何言ってるんだよ、その耳なんてオレたちの憧れのひとつだぞ? 気持ち悪いどころか、とあるイベントではエルフの真似をする人がたくさんいるくらい人気があるんだぞ。その口調だって、我々の業界ではご褒美だなんて場合もあるし、オレもまあ⋯⋯嫌いじゃないな。それになんだ、その⋯⋯筋肉質というよりも引き締まってるって感じがするしその⋯⋯立派なそことか女性として魅力的だし? みたいな?」
「む、むう⋯⋯そそそ、そうなのか? ヒカリ殿はけっこうマニアックな趣味なのだな? あは、あはははは」
「ヒカリさんの言う通りですよ。それに、ミリゼットさんみたいに活発な姉御肌の女性って人気があるんですよ?」
「メルル殿までそんな⋯⋯な、なんだか照れるな。今までそんな風に言われたことはいちども無かったからな」
そんな話をしながら歩くこと、道を外れてから30分。
すっかり打ち解けたオレたちだったが、不意にミリゼットが真剣な表情で止まれと合図してきた。
「この先にゴブリンがいる。数はちょうど3匹だ。どうやら食事中らしいな」
草陰から見つからないように覗いてみると、少し窪地になっている場所でゴブリンたちが焚き火を利用して何かの肉を焼いているのが見える。
「凄いな。ここのゴブリンは火も使うのか」
「ヒカリ殿たちの故郷では使わないのか?」
「ああ。話に聞いただけでオレも直接ゴブリンを見るのは初めてなんだが、あいつらは肉は生のままで食うイメージだった」
「なら、その認識は改めたほうがいい。先程も言ったが奴らは頭がいい。逃すとやっかいになるかもしれんから気付かれる前に不意打ちがベストだ」
「具体的には?」
「攻撃魔法が使える者がいるパーティーなら、まずは遠距離から攻撃して敵の戦力を削ってから一斉攻撃だな。その場合、最初に攻撃した魔法使いは敵を牽制しつつ逃げ出す奴がいないか見張ったり、周辺に他の危険が迫っていないか確認したりするのが一般的だ。魔法使いがいないかわりに射手がいる場合も同様だな。わたし達の場合はヒカリ殿が魔法で攻撃し、そこにわたしが突撃してヒカリ殿が援護。メルル殿は引いた位置から指示と警戒がいいだろう」
「なるほど、なかなか大変そうだな。ちなみに遠隔攻撃が出来ないパーティーの場合は?」
「その場合はもっとも防御力に優れた者が囮りになり敵の注意を引き、その背後から攻撃役が倒していくな。ちなみにソロならば敵が3匹以上いる場合は戦わん。相手をするなら2匹までだな」
「安全第一だから?」
「そうだ。無理して怪我でもすればとてもではないが割に合わないからな」
ゴブリンたちは焼けた肉を食いながら、ギャアギャアと耳障りな声をあげている。
「用意はいいか?」
メルルとミリゼットが頷くのを確認して、オレは魔法を発動させる。
「【エアロカッター】」
圧縮された空気が鎌鼬のようにゴブリンに襲いかかり、肉を口にしていた1匹の上半身と下半身を分かれさせた。
「「ギャギャッ?!」」
慌てたのは残り2匹のゴブリンだ。
手に持っていた肉を落とし、慌てた様子で自分たちに危機が迫っていることを知ると棍棒を持って立ち上がる。
そして立ち上がったところに
「ふっ!」
メルトリーゼの剣の一撃が1匹の首を跳ね飛ばす。
「はあっ!」
返す刃でもう1匹を狙うが、棍棒で僅かに剣を逸らされゴブリンの肩口に大きな傷を負わせるとどまった。
「ギャギャ⋯⋯ギャア!」
残された最後のゴブリンは手にしていた棍棒をミリゼットに投げつけるが、それをミリゼットは簡単にかわす。
しかし、もともとダメージを与えようとしたわけではなかったのだろう。
ゴブリンは投げつけた直後には身を翻し逃走を図ろうとしたが
「ギッギギギ⋯⋯」
逃げようとした先に、銀髪の人間⋯⋯正確には人間ではないのだが⋯⋯自分の仲間2人を倒した人間よりも遥かに存在感の強い女を見つけ、足を止めてしまった。
「【エアロカッター】」
動きを止めて立ちすくんでいるゴブリンに、2発目の風魔法を打ち込むと、最初に倒したゴブリンのようにその体が2つに分かれた。
「大丈夫かメルル?」
「はい、大丈夫ですよ。ありがとうございますヒカリさん」
はじめての戦いを終えて興奮が止まらないオレのところへミリゼットがやってくる。
「今回はもう大丈夫だが、魔物や魔獣の中には首を切ったくらいでは死なぬ者ものもいるからな。すぐに気を抜くのは油断につながるぞ」
言葉では注意をしてくるが、そう言うミリゼットの顔にも満足感が浮かんでいる。
「さて、他の魔物が来る前にさっさと後始末をしてしまうか。約束通り解体はわたしがするから2人は警戒を頼む」
「分かった」
「任せてください」
ミリゼットは慣れた手付きでどんどんゴブリンを解体し、透明な魔石を取り出し、その後ゴブリンの死体に火をつけて燃やしてしまった。
「こいつらは持って帰っても素材としての価値はないからな」
その後、もう2匹のゴブリンを見つけ同じように危なげなく倒してオレたちはチャチャッカレに帰還した。
戦果はゴブリン5匹。
3人パーティーとしてはせいぜい2~3日分の生活費になるかどうか。
ミリゼットが半分を取り、残りをオレとメルルで分ける。
そしてこれから今日最後の仕事。
タックとベティーから言われていなかっとしても必ずやっていたであろうこと。
そう。
パーティー結成&初依頼達成記念の飲み会だ!
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