異世界実況ヒカリチャンネル

クレール・クール

文字の大きさ
上 下
2 / 32

エランディールの冒険者

しおりを挟む
 この動画を見てくれているみんな、はじめまして。もしくは、お久しぶり。

 以前他のチャンネルでマイチューバーをやっていたから知っている人もいるかもしれないな。

 今回、わけあって心機一転新しくチャンネルを開設してやっていくことになったんだ。

 またみんなに楽しんでもらえるように頑張るから、面白いと思ってくれたらチャンネル登録よろしく頼むな。

 さて、俺が今いる場所がどこだか分かる人はいるかな?

 ヒント1
 道路はご覧の通り未舗装だ。
 街中なら石畳が敷いてあるところもあるが、一歩外に出たら大都市近郊以外はどこもこんな感じらしいぞ。

 ヒント2
 あたりを見渡しても高いビルなんかは見つからない。
 そのかわりにさっき額から角が生えているウサギを見つけたな。
 お、あっちには角オオカミの群れがいるな。

 ヒント3
 これは大ヒントだ。ほらあそこ、革鎧を着た戦士や、杖を持ってローブを着込んだお姉さんが角オオカミのに向かっていったぞ。

 これだけヒントを出せば分かるよな?

 そう。ここは異世界エランディール。

 まあすぐには信じられないかもしれないけど、本当なんだなこれが。

 思い返せば俺がここに来てからもう1か月近くになる。

 右も左も分からない異世界に行くことになって、どれだけ苦労したことか⋯⋯。

 ただ、エランディールに来たのが俺1人きりでなかったたのはせめてもの救いだったかな。

 あと、異世界といえばお約束のチート能力にも助けられ⋯⋯てはいないな。
 いや、実はまだ使いこなせていないんだ。

 誰だって剣と魔法の世界に来て、自分に魔法が使えるとなったら試し打ちしたくなるもんだよな?俺だけじゃないよな?

 はい、やりすぎました。手加減が分からずあたり一面は元風景が分からないほどの阿鼻叫喚の地獄絵図に⋯⋯。

 ま、まあその話はまた機会があればすると思う。予定は未定だけどな。

「ヒカリさん、あの方達、角オオカミと戦うようですよ」

 声まで気品溢れるこの女性が、俺と一緒にやってきたメルトリーゼ。俺はメルルと呼んでいる。

 銀色の髪を伸ばし、しなやかですらっと長い手足に整った顔立ち。控えめな胸以外は抜群のプロポーション。

 彼氏彼女いない歴=年齢の視聴者諸君はもちろん、リア充とかいう希少な連中だって老若男女関係なく目が釘付けになるはずさ。

 何しろ彼女は、女神なんだからな。

「ヒカリさん」

 おっと、とりあえず彼女のことは置いておいてこっちに集中するか。

「はあっ!」

 戦士が剣を構え、声を張り上げ角オオカミと対峙し、その後ろに隠れるように魔法使いのお姉さんが位置取りをしている。

「タック、右から2匹くるわ!」

「く、左からもだ。右の2匹はベティーに任せた」

「わかったわ。任せて」

 角オオカミと戦っている彼らは、俺たちが雇った冒険者だ。

 チャンネル登録を増やして再生回数を増やす方法はいろいろあるが、俺たちは冒険者として様々な冒険をしていくことを基本方針とすることにした。

 とはいえ、俺は魔力だけは有り余ってているがいまだに制御がうまくいかない。しかも肉体的には地球にいた頃のままなので、体力や身体能力はこちらの世界の平均にも満たないだろうと考えた。

 この1か月、俺たちはまずは生活基盤を固めることとエランディールの常識を学ぶことを目的として過ごしてきた。

 幸いというかなんというか、この世界の言葉は読み書きも含めて理解できるので助かったな。

 ちなみに、今はナーロッパ大陸の共通語で話しているんだけど、この動画を見てくれている視聴者の諸君にはそれぞれの国の言葉で聞こえているはずだ。
 うまく聞き取れていない国の人がいたら、コメント欄に書いておいてくれたらメルルに頼んで調整してもらうからよろしくな。

 ああ、念のため概要欄にも書いておくか。

 お金に関しては、俺が今までマイチューバーとして稼いだ分だけは、こちらの世界の通貨に両替されて持ってくることが出来ていた。

 あまりたいした金額ではないけど、無一文で放り出されたり、魔王討伐に王命で向かうのに雀の涙ほどの支度金しか渡されない勇者に比べたらずっとましだと思う。

 ちなみにこの動画にも広告は付くはずで、それが俺たちの活動資金にもなるから本っ当にチャンネル登録まだの人はポチっと宜しくお願いします。

 まあ、そんなこんなで冒険者の仕事と生活ぶりを見学することをギルドに依頼した結果、彼らと同行することになったわけだ。

「土の精霊ノームよ、我が魔力と引き換えにその力を示せ【アースショット】!!」

「うらっしゃああ! 次! そいやあぁ!」

 魔法使いが呪文を唱えると、テニスボールサイズの土の塊が角オオカミ目掛けて撃ち出される。

 一撃で倒し切るほどの威力は無いようだが、それでも当たった音が「ボキッ」と聞こえることから、かなりの威力はあるらしい。

 1匹の足が折れ、もう1匹の角オオカミが魔法で怯んだところへ追撃のアースショットが命中する。

「ベティーよくやった。後は任せろ」

 自分の受け持ちの2頭を瞬殺したタックが魔法のダメージで動きが悪くなっている角オオカミに飛びかかり、あっという間にその息の根を止めた。

「大丈夫だったか? 怪我はないかヒカリ、メルル」

 肩で息をしているタックが聞いてくる。

「ええ、大丈夫です。それにしても、さすがDランク冒険者ですね」

 俺のかわりにメルルが答えると、照れたように頭をかきながら「いやあそれほどでも」と答えるタックにベティーが「調子に乗らないで、しっかりまわりの警戒は続けなさい!」と怒られていた。

 うん、どうやらヒエラルキー的にはベティーのほうが上らしいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。 元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。 登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。 追記 小説家になろう  ツギクル  でも投稿しております。

処理中です...