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ポロポロ

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「えーと、ポロポロさん?」

「ポロポロって呼び捨てでいいわよ。アタシそういうの苦手なのよね。だから合わせてもらえると嬉しいんだけど?」

「じゃあ、ポロポロ。この指輪についていくつか質問したいんだけどいいかな?」

「いいわよ、なんでも聞いて」

 ふんぬと胸を張るポロポロ。いくら張ったところでまな板なのは見なかったことにしよう。ノームの血が混ざってるなら仕方ないよな、運命だ、うん。

「この指輪と交換で、どのくらいの食べ物と交換したいと思ってるのかな?」

「んーそうね。お昼と夜のメニュー、それぞれ1人前ずつでどうかしら。おいしい物は好きだけどあんまり量は食べられないのよね。ほんと、小さな体が恨めしいわ」

「え、それだけでいいの? ずいぶん安くない?」

 確かこの世界にきてすぐに質屋に行ったときに魔道具が売ってるのを見たけど、とても食事数回分なんていう値段じゃなかったような気がする。

 それともあそこの店にあった物が特別高価なだけで本当はそんなにしないとか?

「人族には貴重な物かもしれないけと、アタシにはそんな大した物じゃないのよ。その指輪、リングの細工はともかくとして石に魔法を付与するだけならあっという間にできるし。それにさっきも言ったけどそんなたくさんのお金持ち運ぶのは大変だから物々交換の方が楽なのよ」

「なるほどね。でもそれだと、他の妖精やノームから苦情もあるんじゃない? ポロポロがあんまり投げ売りみたいなことしてると相場が落ちるから困る人もいるんじゃ?」

「うっ。よ、よく分かるわね。実はそれで住んでいたとこを追い出されてお腹空かせていたのよ。フラフラしてたらあんまりいい匂いがしていたものだから、つい……」

 物でもサービスでもなんでも、適正価格ってものがあるからね。うちで売ってるかき氷や丼、焼き肉だって本当はもう少し安くすることもできるけど、そうすると他の飲食店が困る。飲食店が困ればそこに卸してる問屋なんかも困る。そうするとお金が動かなくなったりして巡りめぐってうちの屋台も困る。

 まして、魔道具なんて貴重な物ならなおさらだけど……

「ちなみにこれにはどんな魔法が付与してあるの?」

「これは、石が安物だからたいしたものじゃないわ。苦痛軽減の初級魔法で、せいぜい足の小指をタンスの角にぶつけた痛みが腕にしっぺされたくらいの痛みになるくらいってとこかしら」

「え、今なんて?」

「だから、足の小指を――」

「そっちじゃなくて、石が安物だからっていうのは?」

「そのままよ。核となる宝石の品質や大きさによって付与できる魔法効果も変わってくるの。それに成功率も関わってくる感じ。でも、中級魔法ならともかく上級以上の魔法を付与できる石はなかなかないわね」

 オレはそっとクリスが出したエメラルド(メロン味のかき氷を食べさせたら出しました)を取り出すとポロポロの前に置く。

「この宝石ならどう?」

「どれどれ……うん、なかなかの物よ。純度は凄いけど、大きさは小さいからそうね……初級の回復魔法くらいなら100パーセント成功すると思うわ。中級だと40パーセントくらいで……上級は、さすがにこれじゃあ無理かしら」

「あの、ポロポロさん?」

「だから呼び捨てでいいってば。なによ?」

「このくらいの宝石たくさんあるんだけど、もし良かったら1日1回魔法付与してくれないかな? そうしたら、うちの屋台の食事、毎日ご馳走するけど」

「え、本当に?」

「もちろん。なんなら、お酒を含む飲み物もつける」

「え、え、え? なんかアタシに都合が良すぎる気がするんですけど罠とか騙したりとかじゃないわよね?」

「そんなことするもんか。ポロポロのその才能、ムダにするのはもったいないと思っただけさ」

「て、店長ー!」

 がしっ

 ポロポロがオレの人差し指を握って握手。契約成立だ。
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