三姉妹のせいいっぱい

とものりのり

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乗れない自転車

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今日は次女のはなちゃんの誕生日です。
家族みんなではなちゃんの誕生日パーティーをしています。

出前のお寿司とピザにお母さんとはなちゃんが作った大きなケーキをおいしく食べています。
すると
「ピンポーン」
チャイムが鳴りました。

お母さんが玄関へ行くと宅配便でした。
「はなちゃん、おじいちゃんとおばあちゃんからも誕生日プレゼントが届いたわよ」
それを聞くとみんな玄関に行きました。

プレゼントは自転車でした。
まゆちゃんとひとみちゃんが声をそろえて
「いいなぁ。新品の自転車」
と言いましたが、はなちゃんは浮かない顔をしています。
「私、自転車乗れないのに」
と、言うとみんなはおどろきました。

お父さんが
「そう言えばはなちゃんが自転車乗ってる所、全く見ないな。ひとみちゃんとまゆちゃんは乗ってるけど」
と言いました。

はなちゃんがうつむきながら
「どうしよう。おじいちゃんとおばあちゃんがせっかく買ってくれたのに」
と言うとお父さんが
「はなちゃんが最後に自転車に乗ったのはいつだ?」
と聞くとはなちゃんは
「小学校三年生の時だから二年くらい前」
と言いました。

お父さんは
「もう五年生だしやってみたらすぐ乗れるかもしれんぞ。明日公園でやってみよう」
その後も、誕生日パーティーは続きましたが、はなちゃんは浮かない顔をしていました。

次の日、ひとみちゃんと公園へ行って自転車に乗るを練習しました。
はなちゃんはヘルメットとプロテクターをつけています。
ひとみちゃんが
「運動の事なら私にまかせて」
自信たっぷりに言いました。

はなちゃんは自転車にまたがりこぎますが、体を小さく丸めてぎこちない動きです。
そして1メートルも進まずに転んでしまいました。
はなちゃんは頭をかかえて
「やっぱりだめだ。どうしよう」
と言いました。

その後も自転車の後ろを持って走ったり、前を引っ張りながら走ってみたりしましたが、全然うまくいきませんでした。

はなちゃんは
「私、昔から運動音痴なの。足は遅いし、逆上がりは出来ないし」
と言うとひとみちゃんは
「はなちゃんはお母さんに似たんだね。お母さんも自転車乗れないって言ってた」
と言うとはなちゃんは
「え!このままじゃ私は大人になっても自転車にのれないの?」
と言ってうなだれました。

はなちゃんが
「ひとみお姉ちゃん、自転車に乗れるようになるコツはないの?」
と聞くとひとみちゃんは
「私は物心ついた時には自転車に乗ってたから、どうやって乗れるようになったのか分かんない」
と言いました。

その後も暗くなるまで練習しましたが、自転車に乗れるようにはなりませんでした。
家に帰ると傷だらけになったはなちゃんを見てお母さんがびっくりしました。
「はなちゃんケガしてるじゃない。無理しなくていいのよ」
と言うとはなちゃんは
「おじいちゃんとおばあちゃんがせっかく買ってくれたから、もう少しがんばってみる」
と言いました。

次の日はひとみちゃんとまゆちゃんにも練習を手伝ってもらいました。
まゆちゃんははなちゃんが自転車に乗るのをカメラで撮り始めました。

まゆちゃんが
「ひとみお姉ちゃん、これ見て」
と言ってカメラで撮った画像を見せます。
どれも体を小さく丸めてぎこちない格好でした。
はなちゃんは
「私はこんな風に自転車に乗ってたの?」
と言いました。

その後、ひとみちゃんが自転車で走る格好をよく見て練習しますが、体を丸めた格好は直りませんでした。

はなちゃんは
「私は昔から怖がりで自転車に乗るのが怖くてあんな格好になっちゃうのよ」
と言うとまゆちゃんが
「はなお姉ちゃんはお母さんに似たんだね。
お父さんから聞いたんだけど、お母さんは運転する時に怖くて時速30km以上出せなかったんだって。
だから免許取れなかったんだって」
と言うとはなちゃんは
「え!このままじゃ私は大人になっても車を運転できないの?」
と言ってうなだれました。

その後も練習しましたが、乗れるようにはなりませんでした。
夕方になるとお母さんが迎えにきました。
傷だらけになったはなちゃんを見てお母さんははなちゃんを抱きしめて言いました。
「はなちゃん、もういいのよ。まじめで頑張り屋のはなちゃんの事お母さん好きよ。でもね、どんなにがんばってもできない事はあるのよ」

それを聞いたはなちゃんは
「でも、おじいちゃんとおばあちゃんに悪いから」
と言うとお母さんは
「おじいちゃんとおばあちゃんにはお母さんも一緒にあやまってあげるから、はなちゃんはこんなにがんばったんだからおじいちゃんもおばあちゃんも許してくれるわ。もういいのよ」
それを聞くとはなちゃんは
「うわーん」
と大声で泣き出しました。

その後みんなで家に帰るとお父さんが玄関の前で待っていました。お父さんがお母さんから話を聞きました。

お父さんがはなちゃんの頭をなでながら言いました。
「はなちゃんは本当にがんばり屋だな。自転車なんか乗れなくたっていいんだぞ」
はなちゃんは
「でもみんなできるのに私だけできないんだよ。行きたい所にも行けないよ」
と言いました。

お父さんは
「できない事をいくらがんばってもしょうがないだろ。遠くに行きたいならバスや電車を使えばいいんだよ」
と言うとはなちゃんは
「なるほど」
と言いました。

お父さんは
「できない事をがんばるより、はなちゃんは料理が得意なんだから料理をがんばればいい。今度おじいちゃんとおばあちゃんが来たらおいしい手料理を作ってびっくりさせてやれ」
と言うとはなちゃんは元気よく
「うん、私料理がんばるね」
と言いました。

まゆちゃんが
「じゃあ、はなおねえちゃんはこの自転車いらないって事ね。私もらっていい?」
と聞くとひとみちゃんが
「私だってその自転車ほしい!」
と言いました。

はなちゃんが
「じゃあ、がんばり屋さんにあげようかな」
と言うと
ひとみちゃんが
「私、がんばって足速くなったよ。100メートル13秒台で走れるようになったの」
と言うとまゆちゃんが
「そんなに速く走れるなら自転車いらないじゃない。50メートル13秒台の私にこそ自転車が必要だわ」
と言いました。そのやりとりを見てお父さんとお母さんとはなちゃんは笑いました。
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