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菓子

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 朝。冷たい風が頬を撫でる。春の半ばのはずなのに、この時間だけはまだ冬の寒さが残っている。

 聖女が召喚されてから数日が経った。この数日間、禁書庫に行ったり神殿に通ったりと、割と忙しかった。私が忙しかったのは、主にエルヴィンのせいなんだけど。

「はぁ……。過労で倒れたら訴えますからね、ウィリアム様……」

 私は厨房にの食事を取りに行く。あずさが目覚めたのは数分前だから、今は部屋で顔を洗っている頃だろう。

「おはよう、エステルちゃん」

「おはようございます。本日も二人分、どちらも少なめでお願いします」

 あずさの分と、私の分。あの日約束したように、あれから食事は二人でとるようにしている。ちなみに「少なめ」と言っておかないと、ちょっと食べきれない量が出てしまうのだ。

「あいよっ、ちょーっと待っててね。あー、そうそう。聞いたよ。エステルちゃん、聖女様の所に行ったんだってね。どうだい? 上手くやってるかい?」

 彼女は、調理をしながら私に話しかける。なんで出来上がったものが無いかというと、あずさの希望する時間が早すぎるから……らしい。

 流石に従者向けのメニュー賄いを客人に食べさせるわけにもいかないから、特別に作ってもらっているのだ。

「まぁ、そうですね。こっちはなんとかなるんですが、神殿の方でちょっと……迷ってしまいまして」

「ああ、なるほどねぇ。エステルちゃん、ほぼずっとここで生活してきたからね。建物の様式から違うあそこで迷うのも無理ないさ」

「あはは……」

「はい、少なめ二人分。こっちはおまけのクッキーさ。聖女様と仲良くな」

「ありがとうございます。では」

 クッキーをポケットに入れてから、二人分の朝食を運ぶ。今日のメニューはサンドイッチと冷製スープだ。スープの野菜、あずさの苦手なものじゃなければいいんだけど。

 そんなことを考えながら歩いていると、ずっと向こうの方から舌打ちが聞こえてきた。サラサラの銀髪、水色の瞳。そして眼鏡……ということは、第二王子のルーカス様か。
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