8 / 32
三人の王子
しおりを挟む
着替えを済ませ、部屋を出る。最初に向かう先は、ウィリアムの執務室。
「ウィリアム様、あずさ様をお連れ致しました」
ノックをして、簡潔に用件を話す。入りなさいという声を確認した後、扉をゆっくりと開ける。
「あずさ様、こちらに」
あずさをソファーに座らせ、自分はその後ろに立つ。ここで初めて、彼女の安全以外のことに目を向ける。部屋にいたのは、第一王子ウィリアムだけではなかった。
「初めまして、聖女様。自分は第二王子のルーカスと申します」
銀色の髪に、四角い眼鏡。エルヴィンとは反対に冷たい印象を受ける青年。
あずさは訝しむようにこちらを見る。多分彼の見た目、銀髪のことだろう。確かに他の二人と比べたら異様かもしれない。
「……ええと、シリウス王国の王子は全員異母兄弟なんです」
あずさにしか聞こえないように囁く。別に聞かれて問題のあることではないが、彼の機嫌を損ねる可能性はゼロではないのだ。
「エステルー、あずさと何を話してるの?」
っと、このお馬鹿ぁ。なんで気付いちゃうんですか、というか空気読んでください。
「……」
「いえ、構いませんよ。やはりこの髪の色のことでしょう? よく聞かれますので。ただ、まさか第三王子殿の専属メイドが聖女のお付きになるとは……」
彼は眼鏡のフレームに触れながら考えこむ。
「ルーカス、私の判断に文句でも?」
「そうだそうだ! エステルはスゴいんだぞ!」
「反論などございません。ウィリアム殿がそう言うのであれば、自分はそれに従うだけですよ」
一瞬表情が歪んだように見えたが、多分気のせいだろう。ルーカスはウィリアムを一方的に敵視しているらしいから、きっと私の中のイメージが作り出した幻覚だ。
「エステルー、あずさとは上手くやってる? 歳が近い女の子同士って、なんか上手くいかない時は本当に上手くいかないって聞くけど」
あずさが軽く自己紹介を済ませた後、軽いノリでエルヴィンが私に話を振ってくる。頼むから、ちゃんと空気を読んでください……。
「エルヴィン様、仕事中ですので……」
「良いじゃないか、定時報告ってことで」
悪ノリにもっともらしい理由を付けないでほしいです。あなた絶対楽しんでますよね。
「ウィリアム様まで……。はぁ、報告すべきことは何もありませんよ」
「あずさ殿からは何かあるかい?」
「その、エステルさんにはとてもお世話になってます……はい」
「なら良かった」
やっぱり万人|(私を除く)を魅了する笑顔だ。あずさがこいつの手に落ちてしまう前に、なんとかしなければ。
「……ウィリアム様。予定も押してますし、そろそろ」
「ああ、そうだな。お前達も一緒に行くか?」
ウィリアムはルーカスとエルヴィンを誘う。もちろん結果は予想出来ているけれど。
「ウィリアム様、あずさ様をお連れ致しました」
ノックをして、簡潔に用件を話す。入りなさいという声を確認した後、扉をゆっくりと開ける。
「あずさ様、こちらに」
あずさをソファーに座らせ、自分はその後ろに立つ。ここで初めて、彼女の安全以外のことに目を向ける。部屋にいたのは、第一王子ウィリアムだけではなかった。
「初めまして、聖女様。自分は第二王子のルーカスと申します」
銀色の髪に、四角い眼鏡。エルヴィンとは反対に冷たい印象を受ける青年。
あずさは訝しむようにこちらを見る。多分彼の見た目、銀髪のことだろう。確かに他の二人と比べたら異様かもしれない。
「……ええと、シリウス王国の王子は全員異母兄弟なんです」
あずさにしか聞こえないように囁く。別に聞かれて問題のあることではないが、彼の機嫌を損ねる可能性はゼロではないのだ。
「エステルー、あずさと何を話してるの?」
っと、このお馬鹿ぁ。なんで気付いちゃうんですか、というか空気読んでください。
「……」
「いえ、構いませんよ。やはりこの髪の色のことでしょう? よく聞かれますので。ただ、まさか第三王子殿の専属メイドが聖女のお付きになるとは……」
彼は眼鏡のフレームに触れながら考えこむ。
「ルーカス、私の判断に文句でも?」
「そうだそうだ! エステルはスゴいんだぞ!」
「反論などございません。ウィリアム殿がそう言うのであれば、自分はそれに従うだけですよ」
一瞬表情が歪んだように見えたが、多分気のせいだろう。ルーカスはウィリアムを一方的に敵視しているらしいから、きっと私の中のイメージが作り出した幻覚だ。
「エステルー、あずさとは上手くやってる? 歳が近い女の子同士って、なんか上手くいかない時は本当に上手くいかないって聞くけど」
あずさが軽く自己紹介を済ませた後、軽いノリでエルヴィンが私に話を振ってくる。頼むから、ちゃんと空気を読んでください……。
「エルヴィン様、仕事中ですので……」
「良いじゃないか、定時報告ってことで」
悪ノリにもっともらしい理由を付けないでほしいです。あなた絶対楽しんでますよね。
「ウィリアム様まで……。はぁ、報告すべきことは何もありませんよ」
「あずさ殿からは何かあるかい?」
「その、エステルさんにはとてもお世話になってます……はい」
「なら良かった」
やっぱり万人|(私を除く)を魅了する笑顔だ。あずさがこいつの手に落ちてしまう前に、なんとかしなければ。
「……ウィリアム様。予定も押してますし、そろそろ」
「ああ、そうだな。お前達も一緒に行くか?」
ウィリアムはルーカスとエルヴィンを誘う。もちろん結果は予想出来ているけれど。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる