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第1話 それは最初で最後の別れ

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 人は出会い、そして別れる。それは突然のことかもしれないし、ずっと前からわかってたことかもしれない。

「私とあなたが別れるのはこれで二回目、だね。前は私から、そして今回は――――」

 でも今回は、君から。

 君が私から離れていってしまう番。未練を断ち切った人はここに残り続けることが出来ないから。ルールだから、仕方ないよね。

 君の姿が真っ白な空気に溶けて消えていく。ここからいなくなって生まれ変わって、私とは違う人と幸せになって。そう考えるとちょっとだけ悲しいけどさ。

 悲しいけど、君が幸せになってくれるならそれでも良いかなって思ってしまう。そんな私が確かにいる。

「うん。そろそろお仕事に戻らないと。じゃないとみんなに迷惑がかかっちゃうもんね」

 頬を伝う熱い液体を拭い、私はまた歩き出す。真っ白な地面には足跡の一つすら残っていなくて、彼がいた形跡も綺麗さっぱりなくなっていて。

 私はただ前だけを向いていて。

「迷える魂を輪廻の輪に乗せて、新しい命が生まれるための準備をして。輪廻から外れちゃった私には救いなんてないんだよね」

 背中から生えている純白の翼を目一杯広げて地面を蹴る。数本の羽をその場に残しながら、私はいるべき場所へと帰っていく。

「じゃあね。真っ白な私に色を塗ってくれたあなた。次は寄り道なんかしないで、そのまま行ってくれると嬉しいな」

 二度と会うことは無いと知っているから。もう、私が知っている君が消えちゃって、君が私のことを綺麗さっぱり忘れちゃうって知ってるから。





 ここは『天国』と呼ばれる場所。

 迷える魂が行き着く先。

 そこには迷子を送り届ける『天使』と呼ばれる人達がいて。

 たったそれだけの、出会いと別れのお話。
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