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第三章
責務
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流瑋の術を受けびしょ濡れになり、身を起こした齋煇は、不服そうに流瑋を睨んだ。
「どうだ?都に戻る気になったか?」
齋煇の視線に怯むことなく流瑋が冷ややかに尋ねる。
「手ぶらで帰れるか。」
齋煇はぶっきらぼうに返答する。村長の許可なく独断で帰郷したが、ろくに話も聞いてもらえず迎撃され、納得いかなかった。
流瑋は短く息を吐き、腕を組んだ。
「今、外部の者は村に入れない。」
齋煇は一瞬眉をひそめたが、すぐに思い直して言った。
「だったら楓蘭をここに連れて来てくれ。あいつに話があるんだ。」
「ふざけるな。それに村の外に出るのは村長の許可が要る。しかもこんな大変な時期に許可が降りるわけがないだろ。」
流瑋の声には厳しさが増していた。
「お前は良いのかよ。」
「私は村長に門の守衛を任されている。特に今は厳戒態勢で、外部から入ろうとする者は問答無用で排除できる。」
歳は齋煇とさほど離れていないが、流瑋の肩にはこの村を守るという責務がのし掛かっていた。
その言葉に、齋煇は目を細めて流瑋に言い放った。
「青龍の能力…孫家の人間か。名家のお嬢様なら、大人しくしてくれればいいものを。」
孫家は青龍の能力を受け継ぐ一族だ。青龍の能力は水を操る。龍の能力を受け継ぐ一族は、今では数少なくなってしまったが、孫家は正当な龍の末裔の一族だ。
「何か言ったか。」
「いや、別に。」
「ふん!さっさと諦めて都に帰れ。」
流瑋は齋煇に背を向け、これ以上面倒を増やすなと言わんばかりに吐き捨てた。
(素直には通してくれないか…仕方ない…)
齋煇は心の中で呟き、友人から借り受けた得物に手を延ばした。
カチャッと聞きなれないその音に振り返った流瑋は、齋煇が自身に向けているのを見て唖然した。
「…なんだそれは?」
「拳銃だ。」
齋煇は得意気に答えた。
「けん…じゅう…?」
流瑋の表情には理解の色が浮かばない。
(やっぱりな。これで隙を作る!)
齋煇は心の中で確信し、流瑋の肩口に向けて銃弾を発射した。
「飛び道具か!?」
流瑋は驚いて声を上げた。見慣れない武器にとっさに反射が遅れたが、流瑋の肩先は銃弾をかすめただけだった。
「悪い!見逃してくれ!」
齋煇は流瑋の隙をついて、門の方へ駆け出した。
「おい、待て!」
(しまった!見慣れない武器に油断した!)
流瑋は怒りを露わにし、齋煇の後を追った。
齋煇は門の錠を剣で破壊し、村の中に足を踏み入れた。息を切らしながら周囲を見渡した。
齋煇のこの村の記憶は十年前の記憶だ。楓蘭は母と二人で村長の屋敷の近くの診療所に住んでいた。齋煇はその診療所を目指して、駆け出した。
「どうだ?都に戻る気になったか?」
齋煇の視線に怯むことなく流瑋が冷ややかに尋ねる。
「手ぶらで帰れるか。」
齋煇はぶっきらぼうに返答する。村長の許可なく独断で帰郷したが、ろくに話も聞いてもらえず迎撃され、納得いかなかった。
流瑋は短く息を吐き、腕を組んだ。
「今、外部の者は村に入れない。」
齋煇は一瞬眉をひそめたが、すぐに思い直して言った。
「だったら楓蘭をここに連れて来てくれ。あいつに話があるんだ。」
「ふざけるな。それに村の外に出るのは村長の許可が要る。しかもこんな大変な時期に許可が降りるわけがないだろ。」
流瑋の声には厳しさが増していた。
「お前は良いのかよ。」
「私は村長に門の守衛を任されている。特に今は厳戒態勢で、外部から入ろうとする者は問答無用で排除できる。」
歳は齋煇とさほど離れていないが、流瑋の肩にはこの村を守るという責務がのし掛かっていた。
その言葉に、齋煇は目を細めて流瑋に言い放った。
「青龍の能力…孫家の人間か。名家のお嬢様なら、大人しくしてくれればいいものを。」
孫家は青龍の能力を受け継ぐ一族だ。青龍の能力は水を操る。龍の能力を受け継ぐ一族は、今では数少なくなってしまったが、孫家は正当な龍の末裔の一族だ。
「何か言ったか。」
「いや、別に。」
「ふん!さっさと諦めて都に帰れ。」
流瑋は齋煇に背を向け、これ以上面倒を増やすなと言わんばかりに吐き捨てた。
(素直には通してくれないか…仕方ない…)
齋煇は心の中で呟き、友人から借り受けた得物に手を延ばした。
カチャッと聞きなれないその音に振り返った流瑋は、齋煇が自身に向けているのを見て唖然した。
「…なんだそれは?」
「拳銃だ。」
齋煇は得意気に答えた。
「けん…じゅう…?」
流瑋の表情には理解の色が浮かばない。
(やっぱりな。これで隙を作る!)
齋煇は心の中で確信し、流瑋の肩口に向けて銃弾を発射した。
「飛び道具か!?」
流瑋は驚いて声を上げた。見慣れない武器にとっさに反射が遅れたが、流瑋の肩先は銃弾をかすめただけだった。
「悪い!見逃してくれ!」
齋煇は流瑋の隙をついて、門の方へ駆け出した。
「おい、待て!」
(しまった!見慣れない武器に油断した!)
流瑋は怒りを露わにし、齋煇の後を追った。
齋煇は門の錠を剣で破壊し、村の中に足を踏み入れた。息を切らしながら周囲を見渡した。
齋煇のこの村の記憶は十年前の記憶だ。楓蘭は母と二人で村長の屋敷の近くの診療所に住んでいた。齋煇はその診療所を目指して、駆け出した。
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