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#3 読めなかった未来 (ほのぼの恋愛)

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『黙って座ればピタリと当たる! 水晶占い』

 ……看板も準備オーケーだし、さてと今日も一仕事するか。何しろ、予知能力のある俺なら百パーセント未来が当たるんだ。この辺りでも俺の占いは必ず当たるとそろそろ評判になってきたし、さぁ、今日も頑張るぞ。

 あ、イテッ! 痛いなぁ、うん? 石ころか……ったく、これから仕事って時に転んじまったじゃないか。幸先悪いなぁ。予知能力のある俺とは言え、自分の未来だけはたとえ一秒先でもまったく見えないんだよなぁ。まぁ、でも自分の未来なんて決して見たいものでもないし、他人の未来なら確実に分かるんだからそれだけでもすごい能力だ、うん。

「あ、こんばんは。どうですか? 水晶占い、占っていきませんか? 百パーセント当たりますよ。……今は忙しい? あぁ、そうですか」

「あ、そちらのお父さん。どうですか? 占っていきませんか。急いでる? あぁ、それは失礼しました」

「ちょっと、そこのきれいなお姉さん、そうそう、そこのあなたです。ねぇ、百パーセント必ず当たる水晶占いなんです! 占っていきませんか? 良い? そ、そうですか! だったらこちらへどうぞ」

「いやぁ、お姉さんはラッキーですよ。何てったって僕の占いは必ず当たるんですから、必ずですよ。何を占いましょうか? はい、健康運と恋愛運ですね。かしこまりました」

「……水晶よ水晶、我に未来を見せたまえ~……あれ? おかしい何も見えないぞ? よし、もう一度……水晶よ水晶……ん? 何で何も見えないんだ……? ひょっとしたら」

「あ、あのお姉さん、今日は僕調子悪いようで。お代は要りませんので、申し訳ないのですがまた日を改めて」

 ふぅ、あのお姉さん、怒ってたな。でも可哀想な人だ。未来が見えないってことは未来がないってこと。俺の予知に失敗はないから、あのお姉さんはこの後、事故か何かで……

 ――翌日

「あ、あれ? 昨日のお姉さん?! どうして? い、生きてたんですか! あ、いや、何でもありません」

 どうしてだ? なぜこの人は生きてるんだ? 未来は何も見えなかったはずなのに……気になる……でも、今日改めて占っても結果は同じだろう。なぜだ、なぜこの人の未来だけは読めないんだ。気になるぞ。よし、占いとは別に色々聞いてみよう!

「あ、あの、お姉さん、もし良かったら昨日のお詫びに食事でもどうですか?」

 ――一年後

「いやぁ、まさか、君と結婚することになるなんて。あの時は君の未来が見えなかったからさ、てっきり……いや、まぁ、とにかく、愛してるよ、きっと幸せにするよ!」

 まさかあの時のお姉さんと俺が結婚することになるなんて。そりゃ、未来が見えなかったはずだ。
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