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病院の窓

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私は、病院の夜勤看護師だった。
ある日、朝方に一番奥の個室を見回りに行ったとき、患者の老婆とその息子から、恐ろしい話を聞かされた。


「夜中に、窓の外から、白い顔がこちらを見ていたんだ。目が真っ赤で、髪がぼさぼさで……。私たちは、怖くて動けなかった。しばらくすると、その顔は消えた」
私は、驚いて窓を見たが、何もなかった。窓は高い位置にあり、外からは入れないはずだった。その旨を伝えたが、老婆と息子は、自分たちの目を信じていた。私は、不思議に思いながら、その部屋を出た。

その後、私は、同僚から、その部屋の前の窓について、ある事実を知った。
数ヶ月前に、その窓から、精神科の患者が飛び降りて死んだというのだ。その患者は、白い顔に赤い目、ぼさぼさの髪をしていたというのだ。私は、その話を聞いて、背筋が凍った。あの老婆と息子は、本当に、死んだ患者の顔を見たのだろうか。それとも、ただの幻覚だったのだろうか。私には、わからなかった。
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