🎊異世界転生が流行っているので1ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 (▶20から毎日投稿挑戦開始)

ノアキ光

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#134 仕事初めは異世界で

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年明け最初の仕事の日、会社員の斉藤健太は、いつも通り憂鬱な気分でオフィスへ向かっていた。冬の冷たい風に身を縮めながら、ふと心の中で呟く。

「転職したいな……できれば、全然違う世界で。」

その瞬間、眩い光が彼を包んだ。

気がつくと、彼は巨大な宮殿の中に立っていた。金色の装飾が施された壁、神秘的な魔法陣。そして目の前には、いかにも偉そうな王様とその側近たちが並んでいる。

「ようこそ、異世界の勇者よ!」と王が宣言する。
「我が国を滅ぼさんとする魔王を討つため、お前を召喚した!」

斉藤は混乱しつつも、自分が「異世界転生」というやつをしてしまったことを悟る。これはまさに夢にまで見た大冒険の始まり――そう思いきや。

「では、まずお前にこの世界での役職を割り当てよう。こちらの適性診断を頼むぞ。」
と側近が彼に魔法の紙を手渡す。

紙に触れると、何やら不思議な文字が浮かび上がり、次の瞬間、結果が読み上げられた。

「役職:庶務係。」

「……庶務係?」
斉藤は耳を疑った。

側近が説明する。
「我が国の戦争準備には大量の書類が必要です。君の仕事はその管理と整理だ。」

「え、ちょっと待ってください! 僕、戦うために来たんじゃないんですか?」

王が咳払いをする。
「いやいや、勇者よ。我が国では書類の整備こそが魔王討伐の鍵なのだ。武器や防具の配備、戦略会議の議事録、そして冒険者への報酬管理――すべてが君の手にかかっている。」

そして斉藤は、煌びやかな宮殿の一室に案内された。そこには山のように積まれた書類と、埃をかぶった机があった。

「こちらが君の仕事場だ。よろしく頼むぞ!」

その日から、斉藤の異世界生活が始まった。
彼は最初こそ不満を抱きながらも、次第にその仕事に没頭していく。なぜなら、この世界の書類は魔法で動くのだ。意識を集中すれば、ペンが勝手に走り、棚の書類が整理される。
斉藤は現実世界での事務スキルを駆使し、効率化を進めた。

彼の努力により、軍備は整い、冒険者たちの士気も高まり、魔王討伐は順調に進んでいった。
やがて、魔王が倒されたという報告が届いた。

国中が歓喜に湧く中、王は斉藤を称えた。
「斉藤殿、君のおかげで我が国は救われた。今後もぜひ、この国で働いてくれないか?」

だが斉藤はきっぱりと断る。

「すみませんが、僕には帰るべき世界があります。そっちでも、たくさん書類が待ってるんで。」

王は感動の面持ちで頷き、彼を元の世界へ送り返した。

――そして斉藤は、デスクに山積みの書類を見つめながら、異世界での経験を思い出す。

「やっぱり、こっちの書類の方が厄介だな……。」

だが、その目はどこか清々しく、仕事を始める手には迷いがなかった。

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