🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#116 異世界の座談会

気づくと、私は白い円卓の前に座っていた。円卓を囲むのは、奇妙な顔ぶれ。長い耳のエルフ、獣耳の少女、甲冑姿の騎士、そして禍々しい魔王らしき男。
さらにその中に混ざる、ジャージ姿の中年男性と、セーラー服の女子高生――そして私だ。

「えー、それでは座談会を始めましょう。テーマは『異世界転生について』です！」  
司会役らしきローブ姿の老人が宣言すると、全員が拍手をした。
え、どういうこと？ 　私は混乱していたが、周囲は真剣そのものだった。

まず口を開いたのは、女子高生だった。  
「私はトラックに轢かれて転生したんですけど、最初からスキルとかステータスが見えるの、超便利でした！ それで、冒険者ギルドで……」  
お馴染みすぎる展開に、私は思わず頭を抱えた。

続いて、中年男性が語り始める。  
「いやぁ、俺はブラック企業で過労死して転生したクチだよ。最初はスライムからのスタートだったけど、吸収進化で魔王まで登りつめた。今じゃ社員――じゃなくて、眷属が1000人超えたよ！」  
この異世界、どんだけ転生者を受け入れてるんだ。

他のメンバーも口々に語り出す。  
「転生したら最強の魔剣だった」
「俺なんか、逆に地球に転生して弱体化したぞ」
「私は神様にお詫びスキルを10個もらいました」
……耳を疑うような話ばかりだ。

ふと、司会の老人が私に話を振った。  
「ところであなた、どんな経緯でこちらに？」  
私は慌てて言い訳する。  
「あ、いや、その、転生とかじゃなくて、ただのサラリーマンです！ 気がついたらここにいて！」  
すると全員が一瞬、沈黙した。

そして、魔王が重々しく口を開いた。  
「……異世界転生者じゃない？ それはまずいな」  
「まずい？」  
「この世界に転生者以外が来ると、バランスが崩れるんだ。自然界が、君を排除しようとする」  
「排除？」  
背筋が凍る。全員が悲しげに私を見つめている。エルフがそっと呟いた。  
「ごめんなさい……もうすぐ来るわ」

その瞬間、天井が砕け、巨大なトラックが降ってきた。  
「え？」と思う暇もなく、私の視界は真っ白になった――。

気がつくと、また白い円卓に座っていた。
ただし、今度のメンバーは少し違う。中世の貴族風の男、龍の姿をした女性、そしてロボットらしき存在。
円卓の中心には「座談会テーマ：さらにその次の異世界転生」と書かれた看板が立っていた。

「またかよ……」  
私は天を仰いだ。
そういえば、毎度これが異世界だったのだ。
うっかりしていた――。