🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#115 ループするシミュレーション世界

目覚めると、そこは全く知らない草原だった。青い空、輝く太陽、そして背中に触れる硬い剣の感触。  
「あれ？　ここってどこだ……」  
会社帰りにスマホゲームをしていた記憶が最後だった。だが、今の自分の装備は、まるでゲーム内のキャラクターそのものだ。

「おい、お前。呆けてる暇はないぞ！」  
背後から男の声がした。振り返ると、屈強な戦士とローブを纏った魔法使い風の女性が立っている。  
「君、勇者だろ？　さっさと魔王を倒しに行くぞ！」  
「え、勇者？　いや、俺ただの会社員なんだけど……」  
言いかけるが、二人は構わず手を引く。
どうやら逃げ場はないらしい。

仕方なく進むうちに、突然目の前に巨大なドラゴンが現れた。  
「勇者！　お前の剣で奴を倒すんだ！」  
戦士が叫ぶ。俺は震える手で剣を握り、ドラゴンに向かって突進した。  
「やるしかない！」  
渾身の力で剣を振るう。
だが、その刹那—— 

「リセットしますか？」  
突然、頭上に文字が浮かび上がった。　え？　リセット？  
「何だこれは！」
俺が驚いていると、戦士も魔法使いも何も反応しない。ただ、時間が完全に止まっていた。

——俺は思い出した。この世界、スマホゲームだ。仕事のストレス解消にハマっていた最新のVRシミュレーション。  
だが、今、俺はゲームの中に「転生」してしまったらしい。

「リセット……しないと死ぬよな、これ」  
意を決して「はい」を選択すると、景色が再び暗転し、最初の草原に戻った。  
「ああ、またかよ！」  
今度こそ慎重に進もうと誓ったが、戦士と魔法使いが再び現れ、同じセリフを吐く。  
「何回これ繰り返すんだよ……！」

そして俺は気づく。このゲーム、難易度を下げる設定がない。  
「もう、仕事よりキツイぞ！」  
それでも俺は剣を握る。この無限ループの中、きっと出口を見つけてやると信じて――。