🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#113 異世界のパーマカルチャー革命

気づけば俺は見知らぬ草原に寝転がっていた。大地は乾ききり、草は黄ばんでいる。目の前には青い空と、遠くにぼやけた泥色の村。俺――矢野春斗（やのはると）は過労でぶっ倒れたはずだが、どうやら異世界に転生したらしい。

「救世主様！　どうか村を救ってください！」

声の主は痩せこけた少年だった。話を聞くと、この村は天災続きで飢饉に陥り、土は痩せ、作物がまるで育たないらしい。かつて日本で家庭菜園や自然農法に凝っていた俺は、ふと思った。

パーマカルチャー、やってみるか。

（パーマカルチャーとは、「永続する農業」を意味する言葉で、自然の生態系を模倣しつつ、持続可能で自己維持可能な生活環境や社会システムを設計する思想・手法）

パーマカルチャーとは、自然の循環を生かして持続可能な生態系をつくるデザインだ。大地が荒れ果てていようが、手はある。村人たちは半信半疑ながらも、俺の指示に従ってくれた。

まず、村の周りに「風よけ」の木を植えた。乾いた風を防ぎ、土を守るためだ。そして、牛や羊の糞を使い堆肥をつくり、荒れ地を少しずつ肥やしていく。村の皆に落ち葉や枯れ草を集めてもらい、土を覆う「マルチング」を施した。水はわずかながらも川から引き、溜め池を作る。

「村長、これが“自然農法”ってやつです。土と水と植物は循環するんですよ」

やがて土の間から作物が芽吹き始め、村人たちは歓声をあげた。さらに俺は果樹を植え、地面に根を張らせ、土の保水力を高めた。ミツバチを呼び込む花も咲かせ、村は緑に覆われていった。

季節が一巡する頃、痩せた土地は見違えるように豊かな大地に変わっていた。風除けの木々は大地を守り、鳥や虫が戻り、果物がたわわに実った。作物は自然と育ち、村人たちは食糧不足から解放されて笑顔を取り戻した。

「救世主様！　魔法でも使ったんですか？」

「いや、自然の力さ。俺たちが少し手助けしただけだ」

パーマカルチャーに魔法はいらない。自然は本来、力強く生きるシステムを持っているのだ。ただそれを、人間が少しだけ理解し、寄り添えばいい。

――この異世界に魔法使いや勇者は必要ない。大地と共に生きる知恵こそが、最大の“救い”なのだから。

俺は笑いながら、村の子供たちにクワの使い方を教える。彼らの手は土にまみれ、目は輝いていた。ここでなら、俺の知識が未来をつくる。

「よし、次は“森の畑”だ！」

俺の異世界パーマカルチャー革命は、まだ始まったばかりだ。