🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#104 不適切にもほどがある！

俺の名前は真中良平（まなかりょうへい）、普通の会社員だった。残業続きのある日、コンビニの前で謎のトラックに跳ねられ――気がつくと俺は異世界の真ん中に立っていた。  

「おお、勇者よ！ 貴方が救世主です！」  
目の前に現れたのは、金髪の美少女魔法使い。どこかで見たようなテンプレ展開に、俺はついニヤけた。これだ、俺が求めていた冒険。地球での日々が不適切なくらい退屈だっただけに、ここで一旗揚げてやろうと意気込む。  

「で、俺の役割は？」  
「貴方は異世界統一を果たす力を持つ、伝説の魔剣『モラルブレイカー』の使い手です！」  

魔剣の名前からして、もう胡散臭い。でもまあ、物語の都合だろうと軽く受け流し、俺は魔剣を手に取った。  
「よし、試しに振ってみるか」  
そう言って剣を振った瞬間、村の向こうで誰かが叫ぶ。  

「ふ、服が消えた！」  

駆け寄ると、そこにはポツンと裸の人が残されていた。俺の剣が、消したのはどうやら“服”だったらしい。どんな防具も衣類も、俺の剣の前では無効化されるのだと。  

「不適切すぎるだろ！」  
俺は思わず叫んだ。しかし、魔法使いの少女は真顔でうなずいた。  
「はい、不適切です。ですが、それこそが世界を救う唯一の力なのです」  

どうやらこの世界では、戦争は長年続いており、敵対する種族同士の憎悪が深い。その憎しみを剥ぎ取り、真の絆を作るためには、全員を一旦“裸”にする必要があるという理屈らしい。  

「ちょっと待て、その理屈おかしいだろ！」  
「いいえ、モラルブレイカーの伝承は絶対です。ほら、早く戦場へ！」  

結局、俺は戦場に送り込まれた。そして剣を振るたび、甲冑も、布地も、靴下すらも消え去り、戦場は“服を剥がされた人々”で溢れかえった。結果的に敵も味方も羞恥心で戦意を失い、何事もなかったかのように和解するという、まさかの平和的結末に……。  

その後、俺は「裸の救世主」として異世界中で讃えられたが、内心ではずっと思っていた。  
「不適切にもほどがあるだろ！」

それでも、世界が平和になるならまあ、いいか。