🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#83 異世界に水陸両用車

日々の忙しさに追われる平凡な会社員の三崎は、ある雨の日、仕事の帰り道に見つけた水陸両用車に興味を惹かれ、試乗することにした。見た目は派手な外観で、巨大なタイヤと独特のフォルムを備えたその車を一度乗りこなしてみたいと思ったのだ。エンジンをかけると、ゴロゴロと低く唸りをあげ、期待を抱かせる力強い音が響いた。

「よし、出発！」

車が動き出すと、三崎は突如として濃い霧に包まれ、次の瞬間、見知らぬ湖に浮かんでいた。景色はどこかファンタジックで、周囲には青く輝く森が広がっている。慌てて車を操作しようとするが、なんと湖の真ん中でエンジンが止まってしまった。

「こんなところで故障かよ……って、そもそもここどこだ？」

彼が辺りを見回していると、水面から現れた長い青い首を持つ巨大な生物が、こちらをじっと見つめていた。古代の神話に出てくるドラゴンそのものだ。目が合った瞬間、そのドラゴンが大きな声で笑い出した。

「異界のものよ、よくぞ我の眠りを妨げたな。この地を踏みし者には試練を与える決まりだ。もし生き残りたいなら、この湖を越えて大地を目指すがいい！」

三崎は「え？ 俺が？」と呆然としたが、ドラゴンに背を向けて泳ぐわけにもいかない。仕方なくもう一度キーを回すと、奇跡的にエンジンが復活した。半信半疑でアクセルを踏むと、車は湖を力強く滑り出し、荒波に翻弄されながらも進み始めた。

湖を渡り切ると、そこは広大な草原だった。歓喜したのも束の間、巨大な岩が次々と空から降ってくる。「おいおい、試練ってこういうことか！」と思わず声を上げたが、三崎は前進を決意し、機体を巧みに操って岩を避け続けた。

やがて岩が収まり、目の前に輝く都市が現れた。疲れ果てた三崎が車を降りると、ドラゴンが姿を変えて現れ、静かに告げた。

「見事だ、よくぞ生き延びた。お前には、この世界での特別な力を授けよう。」

三崎は異世界での冒険が始まることを悟り、微笑みながら頷いた。
この水陸両用車があれば、どこまでも行けると思った――。