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#84 貴重な塩の賢者
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目を覚ますと、僕は見知らぬ異世界の砂漠に立っていた。目の前には、肌を刺すような砂嵐と果てしない砂丘の連なり。
「……なんで僕がこんなところに?」と自問したが、答えはない。ただ一つ気になるのは、自分の手に握られている粗末な袋だった。中を覗くと、白い結晶がぎっしり詰まっている。「塩……?」不思議に思って袋を眺めていると、背後から声が聞こえた。
「そこの者、塩を持っているのか?」
振り返ると、立派な鎧に身を包んだ兵士が数人、こちらをじっと見つめていた。
「はい、これですけど……」
兵士の一人が驚いた顔で叫んだ。
「それは貴重な塩じゃないか! この砂の国では、塩こそが金と同等に価値があるのだ!」
どうやらこの世界では、塩は極めて希少な資源らしい。飲み水よりも貴重で、人々は物資と塩を交換して暮らしているという。あまりの驚きに言葉が出ない僕を見て、兵士たちはにやりと笑った。
「その塩を我々の王に差し出せ。そうすれば褒美を与えよう」
気が進まなかったが、逆らうと命の保証はない。この奇妙な世界で生き延びるためには、従うしかないのだろう。
城に連れて行かれると、豪華な玉座に座る王が僕を待っていた。王は僕が持っている塩袋に目を細め、静かに問いかけてきた。
「お前がこの貴重な塩を持ち込んだのか?」
「はい……」と答えると、王はにっこりと微笑み、こう言った。
「ならば、お前にはこの国で最も光栄な役目を与えよう。塩の賢者として、我が国に豊かな塩をもたらすのだ」
それが何を意味するのかわからないまま、僕は不安な気持ちで頷いた。だがその瞬間、王が目の前に魔法陣を描き、僕に祝福をかけた。
「賢者よ、汝に塩の力を授けよう!」
その瞬間、身体に異様な力が宿るのを感じた。試しに地面を一握りすくうと、なんと砂が白い結晶に変わっていくではないか。僕は驚きのあまり声をあげた。
「これって……全部塩に?」
王は笑みを深め、静かに言った。
「これで我が国は、塩の楽園となるのだ」
こうして、僕は望まぬまま「塩の賢者」として生きることになった。ただ、この砂の国を豊かにするたびに、僕の身体は少しずつ塩に変わっていくのだった……。
「……なんで僕がこんなところに?」と自問したが、答えはない。ただ一つ気になるのは、自分の手に握られている粗末な袋だった。中を覗くと、白い結晶がぎっしり詰まっている。「塩……?」不思議に思って袋を眺めていると、背後から声が聞こえた。
「そこの者、塩を持っているのか?」
振り返ると、立派な鎧に身を包んだ兵士が数人、こちらをじっと見つめていた。
「はい、これですけど……」
兵士の一人が驚いた顔で叫んだ。
「それは貴重な塩じゃないか! この砂の国では、塩こそが金と同等に価値があるのだ!」
どうやらこの世界では、塩は極めて希少な資源らしい。飲み水よりも貴重で、人々は物資と塩を交換して暮らしているという。あまりの驚きに言葉が出ない僕を見て、兵士たちはにやりと笑った。
「その塩を我々の王に差し出せ。そうすれば褒美を与えよう」
気が進まなかったが、逆らうと命の保証はない。この奇妙な世界で生き延びるためには、従うしかないのだろう。
城に連れて行かれると、豪華な玉座に座る王が僕を待っていた。王は僕が持っている塩袋に目を細め、静かに問いかけてきた。
「お前がこの貴重な塩を持ち込んだのか?」
「はい……」と答えると、王はにっこりと微笑み、こう言った。
「ならば、お前にはこの国で最も光栄な役目を与えよう。塩の賢者として、我が国に豊かな塩をもたらすのだ」
それが何を意味するのかわからないまま、僕は不安な気持ちで頷いた。だがその瞬間、王が目の前に魔法陣を描き、僕に祝福をかけた。
「賢者よ、汝に塩の力を授けよう!」
その瞬間、身体に異様な力が宿るのを感じた。試しに地面を一握りすくうと、なんと砂が白い結晶に変わっていくではないか。僕は驚きのあまり声をあげた。
「これって……全部塩に?」
王は笑みを深め、静かに言った。
「これで我が国は、塩の楽園となるのだ」
こうして、僕は望まぬまま「塩の賢者」として生きることになった。ただ、この砂の国を豊かにするたびに、僕の身体は少しずつ塩に変わっていくのだった……。
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