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#71 文部科学省の力

主人公・田中悠斗（たなか ゆうと）は、文部科学省の若手官僚だ。深夜までの残業でいつもどおり眠気に耐えながら帰路につく途中、彼は突然、闇の中から現れた光に吸い込まれ、気がつくと見知らぬ場所に立っていた。

目の前に広がるのは、石造りの城や塔が立ち並ぶ古典ファンタジーのような街並み。
「ここはどこだ……？」そう呟く彼の耳に、年配の男の声が響く。
「ここは異世界の魔法王国・アルカディア。君をここに招いたのはこの国の王、ルーディン十三世じゃ。」

悠斗は何が何だかわからないまま、王の元へ案内され、王国の窮状を伝えられる。
「わが国は魔法技術の発展が停滞し、隣国に後れをとっている。なんとしても若き人材を育て、国家としての力を底上げしなければならん……」
そこで王が提案したのは、「異世界から現代日本の教育のプロフェッショナルを召喚し、魔法教育の改革を行う」計画だった。

「異世界でも教育改革ですか……」悠斗は苦笑いしながらも、ふと、文部科学省で積み重ねてきた膨大な知識が頭に浮かぶ。
「ならば、まずは基礎学力の底上げと、教育カリキュラムの見直しから始めましょう。」

翌日、彼は早速、魔法学院で授業を視察することにした。教室では、生徒たちが魔法書を片手に「火の玉」「風の刃」などの呪文を唱えているが、効果はまちまちだ。生徒の集中力も散漫で、魔法の威力も弱々しい。ここで彼は、文部科学省で培った「教育法」についての知識を生かすことに決めた。

「まずは『魔法の基礎理論』をしっかり学ぶ必要があります。魔法というのは、知識とイメージが大事ですから……」

彼は、文部科学省の教育方法論を応用し、理論に基づいた魔法のカリキュラムを導入することにした。
「例えば、魔法のエネルギー量を数学的に算出し、効果的な発動方法を研究していきます。」
彼の言葉に生徒たちは驚きつつも興味を示し、次第に理解が深まっていく。

また、彼は日本の「職業訓練校」モデルも持ち込み、各分野の専門技術者を育成する新しい制度を提案。「魔導工学」「戦術魔法」「医療魔法」など、専門ごとにコースを設定し、目標とする職種に応じて教育内容を細分化した。

そのうち、魔法学院の生徒たちは、目に見えて成績が向上し、周囲の国からも注目を浴びるようになった。新しい教育制度のおかげで、実戦力が身に付き、周辺の脅威に対しても自信を持てるようになっていたのだ。

ある日、隣国のスパイが彼に近づいてきた。
「なぜお前の教育は、そんなにも成功しているのだ？」
悠斗は微笑みながら答えた。
「ただ、文部科学省で学んだことを少しアレンジしただけですよ。」

だが、その成功が招いたのは、決して平穏なものばかりではなかった。急速に成長したアルカディア王国を脅威と感じた他国が、魔法戦争の準備を始めたのだ。

悠斗は迷ったが、国家の命運を背負う覚悟を決めた。そして、ある決断を下す。
「王よ、最後の切り札を使います。『次元融合魔法』を使い、現代の日本の教育機関そのものを、この異世界に一部召喚しましょう。」

こうして、文部科学省が培った教育システムそのものが、異世界の地に現れることとなった……。

異世界アルカディアの教育制度は大いに発展し、世界で一、二を争う魔法技術国家へと成長を遂げた。王は喜び、悠斗に感謝したが、彼はただ一言、
「これも文部科学省の力ですよ」とつぶやいたのだった。