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#67 ヘリポート転生
しおりを挟む俺が最後に見たのは、ビルの屋上のヘリポートだった。真夜中の都市で、救助のヘリを待つかのように強風が吹き荒れる。だが、突然の事故で体は宙を舞い、そのまま視界は暗転した。
──目を覚ますと、見知らぬ場所にいた。周囲を見渡すと、どうやらここもまたヘリポートのようだ。ただし、異様な点がひとつ。空に見えるのは……無数の星ではなく、輝く異形の「扉」だった。まるで無限の世界が空に浮かんでいるかのようだ。
「おや、お目覚めか?」
声に振り向くと、そこには長い耳をした精霊のような女性が立っていた。彼女はやさしく微笑みながら、ヘリポートの中心に描かれた謎の紋章を指し示した。
「これは転生のヘリポート、つまり『ゲート』です。あなたは、どの扉へ行きたいですか?」
俺は思わず混乱した。
「選べる……のか?」
「ええ。ここは無数の異世界へのヘリポート。ですが、選べるのは一度きりです。どこを選ぶかによって、次の人生が決まります」
空を見上げると、扉ごとに見える景色が微妙に異なっていた。竜が飛び交うファンタジーの世界、全員が騎士のような世界、あるいは機械に支配された世界……。
「でも、選ぶ基準が分からない」
と、俺は戸惑いながら言った。
すると、彼女はニコリと笑った。
「どの世界でも結局は同じことが起きるかもしれません。転生の行き先は、運命が決めることが多いですから。さあ、どうします?」
俺は深呼吸して、一つの扉を指差した。
「そこだ」
選んだ瞬間、彼女は何かをつぶやき、扉が開いた。そのまま俺は再び暗闇に吸い込まれるようにして飛び込んだ。
だが、開かれた世界は、以前とまったく同じビルの屋上だった。しかも、俺が今立っているのは──ヘリポートの上だ。
「……戻ってきた?」
ビルの管理人が不思議そうにこちらを見つめている。だが、俺がヘリポートのど真ん中に立っていることも、そして今までの転生の記憶も、すべて夢だったかのように感じる。
ただ一つ分かるのは、この屋上での事故が「運命」だったということ。そして、俺が選んだ「戻る」道が、また新たな物語を始めるための選択肢だった。
向こうからすればここも、異世界。
一度死んで、元の異世界へ転生したのだった――。
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