🎊異世界転生が流行っているので1ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 (▶20から毎日投稿挑戦開始)

ノアキ光

文字の大きさ
上 下
61 / 197

#61 目薬王国

しおりを挟む

俺の名前はタカシ。
ある日仕事中に、気づいたときには異世界に転生していた。目の前には美しい宮殿と、無数の人々が俺を歓迎するように集まっていた。どうやら、俺は「目薬の王国」に召喚されたらしい。

「ようこそ、救世主様!」

王女リヴィアが俺に頭を下げる。彼女は美しい金髪と、透き通るような青い瞳を持つ女性だ。なんでも、この国では「目の不調」が最大の問題で、救世主はそれを治す方法を持っているという。

「目薬を持っている者が、この国を救うのです!」

……目薬? そう言えば、転生前のポケットに目薬が入っていたことを思い出した。日々、パソコン作業で疲れた目を癒すために常備していたものだが、まさかこれが異世界で役立つとは。

俺はその目薬を取り出し、リヴィアに差し出した。

「これが……救世主様の力?」

リヴィアは恐る恐る目薬を手に取ると、一滴をその大きな青い瞳に垂らした。
すると――

「きゃあっ!」

リヴィアの目が突然眩い光を放ち、周囲の人々が驚いて後ずさりした。彼女の視界がどんどんクリアになり、まるで世界が変わったかのようだ。

「こんなに……こんなにも鮮明に見えるなんて!」

彼女は目を見開いて、歓喜の声を上げた。人々も次々に目薬を使いたがり、国中が騒然となった。

だが、異変はここから始まった。目薬を使った者たちが次々と「未来」を見始めたのだ。しかも、未来の厄災まで予知できるようになったというのだ。火山の噴火や大洪水、さらには戦争までもが見えるという。

「救世主様、この力で私たちは何をすべきでしょう?」

リヴィアが問いかけるが、俺には答えられなかった。目薬が未来を見せるなんて、そんなことは俺の世界では起こりえない。だが、この国ではそれが現実になっている。人々は未来を恐れ、次第に混乱と恐怖に陥っていった。

「全ての未来を避けることは不可能です! この目薬を使うことで、未来が変わってしまう!」

王国中で混乱が広がる中、俺は一つの結論にたどり着いた。

「もう、この目薬を使ってはいけない……」

俺はそう決意し、目薬を封印しようとしたその瞬間、王女リヴィアが泣き崩れながら言った。

「救世主様、どうかお助けを! 私にはもう、見えてしまうのです……この国が滅びる未来が!」

俺は思わずため息をつき、ポケットから予備の目薬を取り出して言った。

「ごめん、リヴィア……実はこれ、ただの市販の目薬なんだ。俺は未来を見ることなんてできないし、未来を変える力も持っていない。多分、これは偶然だ。」

その瞬間、世界が揺らぎ、俺は目を覚ました。目の前には、オフィスのデスクとパソコン。どうやら、うたた寝をしていただけだったらしい。

「ああ、なんだ、夢か……」

俺は疲れた目をこすり、いつもの目薬を一滴垂らした。

なぜか中身がずいぶん減っていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...