🎊異世界転生が流行っているので1ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 (▶20から毎日投稿挑戦開始)

ノアキ光

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#57 排水口の世界へ

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「あれ、詰まったな……」  
カケルは台所の排水口に顔を寄せた。何かが奥に引っかかって水が溜まり始めている。手を伸ばし、奥の方を探るが、ぬるっとした感触が指先に広がるだけで何も掴めない。

「もっと奥か?」  
彼は勢いに任せて手を深く突っ込んだ――その瞬間、体が一気に引っ張られ、視界がぐるりと反転した。

目を開けると、カケルは不思議な場所に立っていた。周囲は巨大なパイプと水路だらけで、上空には無数の排水口が浮かんでいる。
「ここは……下水道のような異世界?」と戸惑うカケルの前に、奇妙な生物が現れた。体は水でできているようで、どことなくジェル状だ。

「ようこそ、『パイプ王国』へ!」その生物が陽気に叫ぶ。  
「俺はスライム王、ここでのガイドだ。さて、君はどの排水口から来た?」  
「いや、俺はただ水道が詰まってて……」
とカケルが事情を説明すると、スライム王は真剣な表情になった。  
「それは一大事だ! パイプ王国に水の流れを司る『排水の女神』の怒りが及んだかもしれないな!」

スライム王の案内で、カケルは女神の神殿へと向かった。道中では、「流されし者」と呼ばれる他の迷い人たちが暮らしていた。彼らは、異世界に来た人々がここに閉じ込められ、パイプの流れに沿って生きることを強いられていると語る。だが、その中の一人が言った。

「この世界、実は出口があるんだ。だが、それは見つけた者しか通れない――排水口の“逆流”に飛び込む勇気があればな。」

神殿に到着すると、「排水の女神」と名乗る巨大な蛇のような姿の神が現れた。  
「貴様、排水の流れを乱した罪でここに召喚されたのだ。だが、試練を乗り越えれば元の世界に戻してやろう。」

試練は、流れを読み解き、女神に正しい水のルートを示すことだった。カケルは家での水道修理の経験を思い出し、勇気を持って答えた。
「水の流れは、抵抗が少ない方へ――つまり、ここでは心を軽くすることが解決だ。」

すると、女神は笑った。
「その心の流れこそ正解だ。戻るがよい!」  
次の瞬間、カケルは再び回転する視界の中へ――

目を開けると、カケルは自宅のキッチンにいた。排水口を覗くと、水はきれいに流れている。
「なんだったんだ、あれは……?」
そうつぶやきながらも、彼はふと感じた。異世界で学んだように、物事は時に流れに任せた方がうまくいくのだと。

「ま、これからはあまり詰まらせないようにしよう。」
そう誓ったカケルは、少しだけ成長した気がしていた。

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