🎊異世界転生が流行っているので1ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 (▶20から毎日投稿挑戦開始)

ノアキ光

文字の大きさ
上 下
55 / 188

#55 玉突き事故から始まる異世界転生

しおりを挟む

 その日は、最悪の玉突き事故が起きた。  
 原因は高速道路の中央を猛スピードで走り抜けた一匹の野良猫。
追突された車は次々と連鎖し、計25台が絡む大惨事に。最前列の赤いスポーツカーに乗っていたのは、ブラック企業で過労死寸前だった男・加瀬隆。彼は事故の瞬間、視界が真っ白になり――気がつけば見知らぬ草原に立っていた。

「ここは……どこだ?」  
 頭を抱えていた加瀬の前に、一冊の古びた書物を抱えた精霊が現れる。

「おめでとうございます! あなたは他界し、異世界に転生されました」  
「え、転生?」  

 夢か現かと疑っている暇もなく、精霊は説明を続ける。

「あなたの魂は運命の連鎖により、この異世界に引き寄せられました。しかも、特典として『スキル:玉突き連鎖』を付与します!」  
「……玉突き?」  

 加瀬が困惑していると、突然、周囲の空気がピリついた。遠くから魔物の群れが迫ってくる。絶望的な状況に、加瀬は仕方なく新しいスキルを発動した。

「よし……やってみるか! 玉突き連鎖、発動!」  

 すると目の前の岩が弾け飛び、その衝撃で周囲の木々が次々と倒れ、巨大な丸太が魔物に向かって転がっていく。
丸太がぶつかった魔物は吹き飛び、後ろの魔物たちも次々と巻き込まれた。まるでビリヤードのように、群れ全体が無秩序に飛び交い、あっという間に全滅。

「……すげぇ。これ、無限に連鎖するのか?」  

 加瀬は思わず笑ってしまう。何の役にも立たないと思っていたスキルが、異世界では最強の武器になっていたのだ。

 だが、彼の物語はここでは終わらない。連鎖するのは玉突きだけではなかった。奇妙なことに、この世界にいる他の転生者たちも、同じ玉突き事故で命を落としていたのだ。しかも全員が自分だけが主人公だと思い込んでいる。  

 森の奥で出会った、剣士の青年が叫ぶ。  
「お前も転生者か?  俺は『スキル:連鎖攻撃』を持ってるんだ!」  

 その瞬間、加瀬は気づく。この世界は、事故の連鎖が魂の連鎖を生んだ場所だったのだ。異世界そのものが、一つの巨大な玉突きのように動いている――何かがぶつかれば、必ず別の何かが動き出す。  

 加瀬は苦笑いしながら、剣士に手を差し出した。  
「ま、せっかくだから協力しようぜ。俺の玉突きで、お前の連鎖を爆発させてやる」  

 こうして、彼らの物語は終わりなき連鎖の旅路へと突き進んでいく。  
玉突き事故から始まった命の連鎖は、やがて世界そのものを巻き込む巨大な物語へと成長していくのだった。

――これは、転生者たちの奇妙で壮大な玉突き連鎖の物語。どこまで続くのか、それは誰にもわからない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

処理中です...