🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#52 誤送信から始まった異世界転生

目が覚めると、そこは真っ白な空間だった。立っているのは一人の青年。彼の名前は山田太一、平凡な会社員だ。いつも通り夜中にスマホをいじっていたはずなのに、気づけばこの場所にいた。  

「ここはどこだ？ 夢か？」  

困惑していると、突然、目の前に巨大なパネルが浮かび上がった。その画面には、こう書かれていた。  

「異世界転生プロセス進行中……対象選定ミスが検出されました。」 

「は？ 選定ミス？」  

さらに画面に新しい文字が表示される。  

「送信先：ヤマダタロウ → 誤送信：ヤマダタイチ」

「いや、待てよ！ 俺、関係ないじゃん！ タロウって誰だよ!?」  

すると、透明な女性の声が頭に響く。  

「誠に申し訳ありません。当システムのミスで転生対象が誤ってあなたになってしまいました。ですが、異世界転生は一度実行すると取り消し不可です。」  

「ちょっと待て！ 俺は普通の会社員なんだよ！ 魔王と戦うとか勇者になるとか無理だって！」  

「ご安心ください。当方は誤送信時のために、補償システムを準備しています。」  

青年の前に小さなウィンドウが浮かぶ。  

「お詫び：選べる異世界スキルリスト」  
 A：異世界株取引の天才  
 B：一瞬で家に帰るスキル（ただし二度目の発動不可）  
 C：すべての言語を理解できるが、話すと全員に誤解される呪い付き 

「いや、ろくなスキルがないんだが！？」  

悩みに悩んだ末、彼はBのスキルを選んだ。  

「……一瞬で家に帰れるなら、もう異世界とか関係ないだろ！」  

選択ボタンを押すと、光が弾け、彼は再び自分の部屋に戻ってきた。  
「ふう、危なかった……。でも、なんだったんだ今の。」  

ホッと一息ついた瞬間、スマホが震えた。画面を見ると、一件のメッセージが表示されている。  

「誤送信：お詫びスキル適用完了。なお、転生は完了しています。転送先：現実世界の『異世界支部』」  

彼が顔を上げると、窓の外には見たこともない空飛ぶ城とドラゴンが飛んでいた。  

「……俺、まだ異世界にいるじゃん！？」  

どこか遠くでスマホの通知音が鳴り続ける。次は、どんな誤送信が待っているのだろうか……。