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#45 懸賞金の鎖
しおりを挟む主人公のレインは、異世界に転生してから五年が経っていた。彼はかつての世界で「平凡」を生きたが、この世界での彼は、犯罪者として知られていた。しかも、罪を犯した覚えは一切ない。それでも彼の首には大金の懸賞金がかけられ、どこへ行っても追われる身だった。
「今日もか……」
レインは朽ち果てた教会の窓から、地平線に沈む夕陽を見つめながらつぶやいた。彼の顔には疲労の色が濃く刻まれている。
足音が近づいてきた。ドアが軋む音と共に、一人の女性が入ってきた。彼女は長い黒髪をなびかせ、冷たい笑みを浮かべている。
「見つけたわよ、懸賞金100万ゴールドの男」
女性はゆっくりとした足取りでレインに近づいた。
「俺が犯した罪は、何なんだ?」
レインは冷静を装いながらも、胸の奥で燃え上がる疑問を抑えられない。
女性はレインの目をじっと見つめた。
「あなたが存在していること、それ自体が罪よ。この世界では、誰もが何かを得るために誰かを犠牲にする。あなたは転生者。転生者は、この世界の法則を乱す存在。その秩序を維持するために、あなたは狩られる。」
レインは呆然とした。彼がこの世界に来た理由はただ一つ、穏やかな生活を送りたかっただけだ。だが、その望みは異世界の法によって破壊された。
「懸賞金は、あなたが生き続ける限り上がり続ける。だからこそ、あなたを消す必要があるの」
彼女はそう言って、銀の短剣を取り出した。
「そうか……懸賞金ってのは、俺を罠にかける鎖だったんだな」
レインは苦笑を浮かべた。
「それなら、俺が消えたところで、この世界は何も変わらないさ」
彼は剣を構えた。
「でも、少なくとも今の俺は、無意味に終わりたくない」
剣戟の音が響いた瞬間、世界は静寂に包まれた。
誰も知らないが、その夜を境に、懸賞金の掲示板にはレインの名前が消えた。そして、懸賞金そのものもまた、意味を持たなくなっていた。
彼の存在が消えたことで、むしろ世界の秩序は崩れ始めていたのだ。
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