🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#39 異世界のハンコ押し業務

主人公・大和（やまと）は普通の会社員。
ある日、上司に頼まれてハンコを押す書類の山を前に、ひたすら「ハンコ押しマシン」と化していた。無機質な作業に飽き飽きし、昼休みにはつい口にした。

「こんな仕事、異世界にでも飛ばしてくれないかな……」

そして、その瞬間だった。

視界が歪み、気づけば目の前に広がるのは異世界の壮大な風景。しかし、手元に残されていたのは、一通の奇妙な通知書だけだった。その通知にはこう書かれていた。

「ハンコ予告：あなたの転生先にて、3日後に封印されし魔王の復活が予告されています。準備を怠らぬよう、ご留意ください」

大和は意味不明な状況に戸惑いながらも、魔王の復活を防ぐための手がかりを探すべく、村を巡り始める。
現地で聞いた話では、魔王を封印するために必要なアイテムはただ一つ。「伝説のハンコ」。

しかし、問題はそのハンコがどこにあるのか全くわからないこと。途方に暮れた大和は、異世界の住民たちに助けを求めるが、誰も信じてくれない。
「ハンコで魔王を封印？　そんなバカな話があるか！」
と笑われるばかり。

3日が経過し、魔王復活の刻が迫る。絶望的な状況の中、大和はついに運命の瞬間を迎えるが、思いがけない形でハンコが姿を現す。

それは、大和が元いた世界で大量に押していた“あのハンコ”だった。

「まさか……これか！」

大和は急いでそのハンコを手に取り、魔王の前で封印の儀式を始める。
しかし、肝心の封印のプロセスは、やけに官僚的で面倒な手順が必要だった。
「提出先はどこ？」「印鑑証明書は？」という問いかけが次々と浮かぶが、大和は冷静にすべてに応じ、最後の一押しを済ませる。

魔王は驚きの表情を浮かべたまま、封印されてしまった。

そして、再び現れた通知書にはこう書かれていた。

「封印成功。異世界での業務は終了しました。引き続き、現世でのハンコ押し業務をお楽しみください」

大和は再び元の世界に戻り、いつものデスクに座っていた。だが、心には一つの確信が残った。

「どんな異世界だろうが、ハンコは世界を救うんだ……」

そうして、彼はいつもと変わらぬハンコ押しの業務に、ほんの少し誇りを感じるようになったのだった。