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#37 ウィークエンド
しおりを挟む「おい、待てよ! ここどこだ!?」
目を覚ました瞬間、俺は見知らぬ街の真ん中に立っていた。上空には巨大な二つの太陽、見たことのない建物、そして周りを行き交う人々はみんなカラフルな服装で、まるで祭りの最中のようだ。
「ようこそ、ウィークエンドへ!」
陽気な声が聞こえた。振り返ると、派手な衣装をまとった男がにこやかに手を振っている。
「俺はこの街の案内人だ。君は……地球人か?」
「え? ウィークエンド? 地球人? どういうことだ?」
「ここはウィークエンドだよ。君たち地球の人々が言う、週末の概念が具現化した世界さ。毎週、金曜の夜から月曜の朝までの72時間だけ存在するんだ。」
「そんな馬鹿な……」
男は肩をすくめた。
「まぁ、信じようが信じまいが、ここではすべてが"週末仕様"なんだよ。何をしても楽しいことしか起きない。それがウィークエンドのルールだ。」
「楽しいこと……しか?」
「そう。どんな仕事も、どんな悩みも、この世界では解決される。例えば、君が問題を抱えているとしよう。その瞬間、それを解決するためのパーティーが開かれるんだ。悩む暇はない!」
俺は周りを見渡し、確かにこの街は祝祭ムード一色だ。誰もが笑顔で、何もかもが輝いている。
「……でも、これじゃあ逆に落ち着かないんじゃないか? ずっと楽しいことだけじゃ疲れるだろ。」
「おっ、君は鋭いな。」
案内人はニヤリと笑った。
「実は、それがウィークエンドの唯一の落とし穴さ。この世界に長く居続けると、楽しさが常識になりすぎて、君は現実に戻れなくなる。いつか、月曜の朝が来るってことを忘れてしまうんだ。」
「そんな……」
「さぁ、君の時間は限られている。72時間しかないんだぞ。楽しむか、それとも逃げるか、決めるのは君だ。」
俺は少し考えた。そして、決断した。
「楽しいことはいいけど……俺には現実がある。ここには長居しないさ。」
案内人は満足そうにうなずいた。
「そうか、それが賢明な判断だ。しかし、もう少しだけウィークエンドを体験してみてもいいんじゃないか?」
その瞬間、目の前にパーティーが始まり、音楽が街中に響き渡った。
俺は一瞬迷ったが、心の中でこう思った。
週末は一瞬で過ぎる。だからこそ、楽しまなきゃいけないんだ。
72時間後、俺は再び現実の世界に戻った。だが、ウィークエンドの記憶は消えなかった。
「現実に戻る前に、もう一度だけ……ウィークエンドに行きたい。」
そう思わずにはいられなかった。
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