🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#32 平和祈念像から全ては始まった

主人公、タケルは仕事帰りにふと立ち寄った公園で、平和祈念像を眺めていた。戦争の犠牲者を祈るその姿に、ふと心を奪われた。

「この像、いつも静かに祈っているなあ……平和、か」

そうつぶやいた瞬間、目の前の像が突然光り輝き、タケルは気を失った。目を覚ますと、目の前に広がるのは異世界の大地。空は赤く染まり、地平線の彼方では戦が繰り広げられている。

「おいおい、なんだここは！？」

背後から声がした。振り返ると、平和祈念像にそっくりな女性が立っている。ただし、彫刻ではなく生身の姿だ。

「あなた、ここに来たってことは、戦争を止める役割を担ってもらうわよ」

「え？ なんで俺が！？」

「だって、あなたが『平和』について考えた瞬間、召喚されたのよ。この世界は戦争が絶えず、平和を願う人々は絶望しているの。でも、あなたが平和を象徴する存在になれば、戦を終わらせる力が得られるわ」

タケルは面食らったが、気づけば右手に謎の光を帯びた剣が握られていた。

「なんだよ、これ……？」

「それは『祈りの剣』。この剣は攻撃力ゼロだけど、戦場で振るえば、全員が強制的に休戦状態になるの」

「攻撃できない剣なんて……役に立つのか？」

「平和を目指すには、攻撃なんていらないわよ。勇気と、祈りがあれば十分」

戦場に向かったタケルは、剣を掲げた。
「戦うのは、もう終わりにしよう！」

剣の光が世界を包み、戦っていた兵士たちは全員剣を下ろし、驚いたように空を見上げた。

「これは……なんだ？」

「平和だよ」
とタケルは笑いながら、剣を握りしめた。

異世界の平和は、祈念像が導いたタケルの勇気で実現される――そんな物語が始まるのだった。

「結局、俺ってただの祈るおじさんになっただけじゃないか？」

「まあ、祈るだけで世界が平和になるなら、悪くないでしょ？」

「……そうだな。悪くない」

いつか元の世界に持って帰ろうと決意した。