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#29 非常識スキル発動!
しおりを挟む俺は、中田。ごく普通のサラリーマンだったはずなのに、気づけば異世界に転生していた。
目の前には豪華な玉座、そして玉座に座る王様らしき男。
「救世主よ!」
王は満面の笑みで俺に手を広げる「魔王を倒して、この世界を救ってくれ!」
ま、異世界転生のテンプレってやつだ。俺は内心冷静に突っ込んでいたが、頭の中に突然、奇妙な感覚が走った。
「転生スキル『非常識』が発動しました」
『非常識』? なんだそれ。俺の脳内でスキルの説明が表示される。
【スキル『非常識』: 周囲の常識を崩壊させ、敵味方を問わず混乱させる能力】
「……何だこれ?」
王は俺の困惑顔を見て不安そうだ。
「そ、そなた……大丈夫なのか?」
「もちろん大丈夫です、陛下」
と俺は笑顔で応えた。
「ちょっと試させてもらっていいですか?」
俺は、王の目の前で突然、片足で立ちながら両手を真上に伸ばし、無意味に回転し始めた。くるくる、くるくる。
「何をしているんだ?」
騎士たちがざわつく。
「まさか、これが彼の……」
俺はさらに続けて、床に寝転び、腹這いでペンギンのように滑りながら「にゃー」と鳴いた。
沈黙。宮殿中が息を呑む。王も呆然としている。
「な、なぜ……? この者、狂ったか?」誰かがつぶやく。
すると、その場にいた魔法使いが、突然笑い声をこらえきれずに爆笑し始めた。杖を握りしめ、床を叩いて転がり回る。
「バカな……腹が……笑いすぎて……もう戦えない…!」
「そ、そんな!」
王が驚きながら俺を見つめる。
「これが…救世主の力か?」
俺はただニヤリと笑って立ち上がった。
「『非常識』が、敵のスパイに通じたようですね。」
こうして俺は、その圧倒的な非常識っぷりで魔法使いを無力化した。敵を倒す戦い方は、これでいいらしい。
そしてついに、魔王の城へ。
俺は玉座に座る恐ろしい魔王と対峙する。
「貴様が救世主か?」
魔王は目を光らせていた。
「そう、俺が救世主さ。」
俺は満面の笑みで答える。
「で、魔王さん……いきなりなんだけど、ビーチボールでバレーボールしない?」
「……何?」
「ってことで!」
俺は無意味に手を叩きながら、空を仰いで大声で
「いらっしゃいませー!」と叫んだ。
魔王は一瞬硬直し、周囲の配下たちも固まっている。
「な、何だこの男……何をしようとしている……?」
「じゃあ、そろそろ試合開始ってことで!」
俺は無意味に空中でバク宙してみせた。
魔王は顔を引きつらせ、両手を頭に抱え込む。
「もうやめろ! 非常識すぎる! 我が理解を超えた存在だ…!」
次の瞬間、魔王は配下を連れて逃げ出した。
こうして、俺は誰一人手を下すことなく、非常識だけで異世界を救った。
「救世主よ!」
王が涙ぐみながら俺に抱きついてきた。
「この世界は君のおかげで平和になった!」
俺はただ微笑んで肩をすくめた。
「まあ、常識なんて捨てたもん勝ちですよね?」
王はぽかんとした顔で俺を見つめたが、すぐに首を傾げた。
「な、なるほど、深い……」
だが俺は、ただ楽しんでいるだけだった……。
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