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#9 異世界食堂から始まる王宮生活

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 ある夜のこと、腹が減って仕方がなかった。
 目が覚めたら、そこは見たこともない異世界だった。石畳の道、木組みの建物、そして、空には二つの月。

「ここは何処だ?」

 俺は辺りを見回すが、人っ子一人いない。途方に暮れて歩いていると、古びた看板が目に入った。

『腹ペコ亭』

 吸い込まれるように店に入ると、カウンター席にちょこんと座る猫耳の少女がいた。

「いらっしゃいませ、ご注文は?」

「えっと、何があるんだ?」

 少女はニヤリと笑うと、一枚の食券を差し出した。

「当店自慢の『異世界満腹定食』でございます。ただし、お値段はお客様次第」

「値段が俺次第?」

 俺は首を傾げた。少女は続ける。

「はい。お客様の空腹度合いに応じて、食券の価値が決まります。腹ペコであればあるほど、お得になるというわけです」

 なるほど、面白いシステムだ。俺は腹の虫と相談し、食券に「100億円」と書き込んだ。少女は目を丸くして、厨房へと消えた。

 しばらくすると、少女は大きな盆を抱えて戻ってきた。盆の上には、見たこともない料理が所狭しと並んでいる。黄金色に輝くローストチキン、宝石のようにきらめくフルーツポンチ、そして、湯気を立てる謎のスープ。

「どうぞ、ごゆっくり」

 俺は夢中で料理にかぶりついた。どれも絶品で、一口食べるごとに力が湧いてくるようだ。あっという間に完食し、満腹感に満たされた。

「ごちそうさまでした。最高だったよ」

 俺は少女に礼を言うと、店を出た。すると、目の前に高級そうな馬車が止まっている。御者が恭しく頭を下げた。

「100億円のお客様ですね。こちらへどうぞ」

 俺は馬車に乗り込み、王宮へと向かった。異世界での新たな生活が始まろうとしていた。


 王宮に到着した俺は、豪華な謁見の間へと通された。玉座には、美しい女王が座っている。

「よく来てくれました、我が夫よ」

 女王は微笑みながら、俺の手を取った。

「実は、私はこの国の女王でね。あなたを異世界に召喚したのは、私なの」

「え、どういうことだ?」

 俺は驚きのあまり、言葉も出ない。女王は続ける。

「私は予言で、あなたこそが私の運命の相手だと知ったの。だから、あなたを召喚するために、あの食堂を作ったのよ」

「あの食堂が?」

「そう。あの食堂は、私の魔力で作られた特別な空間。そこであなたが食べた料理は、あなたの空腹を満たすだけでなく、あなたの潜在能力を引き出す効果があったの」

 女王は俺の額にキスをした。

「さあ、一緒にこの国を治めましょう。あなたとなら、きっと素晴らしい未来が待っているわ」

 こうして、俺は異世界の女王の夫となり、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし?

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