🎊異世界転生が流行っているので１ミリも知らないけど書いてみたら何か良作が生まれた件 （▶20から毎日投稿挑戦開始）

#5 お墨付き転生譚

「転生特典は、お墨付きです」

神様はそう言って、一枚の巻物を手渡した。トラックに轢かれて死んだはずの俺、佐藤一郎は、異世界転生というまさかの事態に直面していた。

「お、お墨付き……ですか？」

巻物を開くと、達筆な文字でこう書かれていた。

『右に出る者なし！　――創造神』

「……神様、これってどういう……」

「私の名前で好きに振る舞っていいですよ。この世界なら、知らない人はいませんから」

創造神はニヤリと笑い、俺を光で包んだ。

次の瞬間、俺は中世ヨーロッパ風の街に立っていた。周囲の人々は俺を見るなりひれ伏す。どうやら、このお墨付きは絶大な権威を持っているらしい。

俺は試しに、街で一番大きな屋敷を指さし、「ここを私のものにしよう」と言ってみた。すると、屋敷の主人は顔面蒼白になりながら鍵を差し出した。

その後も、お墨付きのおかげでやりたい放題。美味しいものを食べ、美しい女性を侍らせ、毎日を贅沢に過ごした。

しかし、そんな生活にも飽きてきた頃、ある疑問が湧いた。なぜ、神様はこんなにも強力なお墨付きを俺に与えたのか？

その答えは、意外な形で判明した。

ある日、魔王軍が街を襲撃してきたのだ。街の人々はパニックに陥り、逃げ惑う。

「魔王を倒さねば！」

俺は意気込んで、お墨付きを掲げて魔王の前に立ちはだかった。しかし、魔王は俺を見るなり、大爆笑した。

「なんだ、その紙切れは？　そんなもので俺がひるむと思うか？」

魔王は嘲笑しながら、魔法を放ってきた。俺は慌ててお墨付きで身を守ろうとしたが、魔法は巻物を貫通し、俺を直撃した。

「ぐわあああ！」

激しい痛みに襲われ、俺は意識を失った。

次に目を覚ました時、俺は元の日本の病院にいた。どうやら、トラックに轢かれた時から意識不明で、長い夢を見ていたらしい。

「……それにしても、変な夢だったな」

俺は苦笑しながら、ベッドから起き上がった。その時、一枚の紙が床に落ちているのに気づいた。

それは、夢で見たお墨付きだった。

『右に出る者なし！　――創造神』

俺は巻物を見つめながら、ある事実に気づいた。

「……これ、ただのメモ帳の裏紙だ」

どうやら、神様は俺にただのメモ帳の裏紙をお墨付きとして渡していたらしい。

俺は脱力しながら、夢の中でのお墨付き転生譚を思い出した。そして、こう呟いた。

「……まあ、夢の中では楽しかったから、いっか」

お墨付きはただの紙切れだったが、夢の中で俺に与えてくれた興奮と高揚感は、本物だった。

俺はメモ帳の裏紙を大切にポケットにしまい、病院を後にした。