魔法仕掛けのルーナ

好永アカネ

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フリード編

ジョージ・ホーネット6

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「あんたいい加減、私とフリード以外ともちゃんと付き合いなさい。いい歳なんだから」
 フリード——俺のもう一人の友人。『学園』の管理する森の中に居を構え、魔法薬の研究をしている魔法使いだ。しばらく会っていないが、相変わらず男一人で静かに暮らしていることだろう。
 フリードのことを考えていたら、思いついたことがあった。
「ハウスキーパーでもやってやるか」
「は? 何の話?」
「ほら、あいつ集中してると周りが見えなくなるタイプだろう? ときどき食事するのも忘れるらしいよ。それならメイドでも雇えばいいって前に言ってやったんだけど……この俺がついててやれば解決だ。そうだろう?」
「あんた、他人の世話なんてできるの?」
「何年一人暮らししてると思ってるんだい? なんなら君の専属になってあげてもいいよ」
「結構よ」
「つれないなぁ」
 次は何と言って気を引こうか。そう考えていたら、頭の上の方からコツコツと微かな物音が聞こえてきた。
 ヴィヴィアンと目が合う。お互いに「自分じゃないぞ」とアイコンタクトが取れたところで、二人で高い天井を見上げた。
 天井付近に、明かり取りの窓がいくつかついている。窓の外は暗くなり始めていたが、一箇所、ぼんやりと瞬いているところがあった。目を凝らすとそこには、くちばしで封書を挟んだ一羽の青白い小鳥がいた。
「ヴィヴィアン、鳥だ。ちゃんとした鳥だ。よく見ておきなよ。ほら、ヴィヴィアン」
「もう、うるさい!」
 ヴィヴィアンは魔法でできた小鳥に向かって右手を払うような仕草をした。すると窓ガラスが内側に向かって音もなく開き、小鳥が中に入ってきた。
 小鳥が舞い降りたのは、なんと俺の頭の上だった。
「おいおい、家主はあっちだぞ」
 俺は戸惑いながらも、小鳥が目の前におろしてきた封筒を両手で受け取った。間も無く、小鳥の気配がなくなった。
 封筒には『フリード・シアンより ジョージ・ホーネットへ』と書かれていた。
「おや、噂をすれば……なんとやらだ」
「彼からなの?」
 ヴィヴィアンは驚いて目を丸くしている。それを尻目に、俺は封筒を開けて中身を確認した。書き手の焦燥や動揺が、乱れた文字にあらわれていた。
「彼はなんて?」
「ええと……」
 俺は慎重に言った。
「メイドが見つかったのかも」

 * * *

 親愛なるジョージ

 僕だ。最近会っていないけど元気かい?
 不躾ですまないが急ぎで頼みたいことがあるんだ。
 女性の服が入用になったので、何着か用立ててもらえないだろうか。
 君にしか頼めないんだ。僕は女性の服なんて買ったことがないから……。
 サイズはよくわからないんだけど、標準的なサイズだと思う。
 下着も必要なんだけど、いいかな?
 とにかくすぐに必要なんだ。ジョージ、お願いだ。

 フリード・シアン
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