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第二章 あれ?思った以上に過酷な世界なの?

村の近くじゃダメなんですか?

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そこは木々の間から木漏れ日が差し込む美しい森だった。町中の喧騒はなく、小鳥のさえずりが歌っているかのような心地よい。体を伸ばしながら空気を思いっきり吸い込む。
「はぁー、空気がうまい。世界が壊れかけているなんて言ってたけど、意外と想像よりは平気そうだな。」
よし、どうしようかな。まずは……..町でも探すか。しまった。ここがどこだか分んないからどうしたもんかなぁ。うーん、そうだ、ストレージになんか入ってないかぁ?
えーっと、
「ストレージオープン!」
あれ??何も起きない。
(ブンっ!)
機械音がしたかと思うと目の前には黒い板が空中に浮いていた。
「これがストレージ?」
どうやって使うのこれ??横から見てもそこに厚みはなく、まるで消えたように見える。後ろからみるとその黒い板は存在しない。元の位置に戻ると四角い板が浮いている。まさに魔法としか表現ができない。なんだかよくわからんが、とりあえずその黒い板に触ってみようと手に触れた瞬間、頭の中に言葉が浮かんでくる。

・金貨30枚
・鉄の剣
・鉄の盾
・名刺
・ボールペン

「名刺?ボールペン?…いやいやサラリーマンの基本だけど、もうちょっと今使えるものを入れておいてくださいよ」
しょうがない、適当に歩くか。水場でも見つかればめっけものだよな。

ざっざっざっ
そこは以前の世界にあったような森ではないため、人が整備をしているわけではない。そのため、思っていたよりも大変である。木の根や落ちている小枝を避けながら歩くだけでも体力はガシガシ削られていく。
「はぁはぁはぁ、なんだかんだで3時間は歩いてないか?いったいこの森はどんだけ広いんだよ。」
いい加減愚痴が飛び出てきたところで水の音が聞こえる。
「おぉ!助かった。川が近くにあるぞ。」
さっきまでの重い足取りも軽くなる。すると目の前の木々の隙間から川が見える。川に飛び込みたい衝動を抑え、川の水を飲み込む。
ゴクゴク
「ぷはぁ、生き返る!!」
もう一回、川の水を飲もうとしたところで、
「やめておけ!」
「えっ」
急に声を掛けられて驚いて周りを見回すと、向こう岸に人がいた。
「生水をたくさん飲むと腹を下すぞ」
そうだった。以前テレビでそんなことを言っていたことを思い出した。五人組のアイドルのリーダーがイケメンに注意していた。あの番組は結構好きだったんだけどもう見れないのは残念だな。
「忘れてました。ありがとうございます」
そう返事をしながら、相手を見るとアドバイスをくれたのは全身フルプレートの鎧を着た騎士のようだった。隣で馬が水を飲んでいるとこを見ると休憩中といった所だろうか。
「気にするな。腹を下すと辛いからな」
そう言いながら、騎士が兜を取ると口ひげを生やしたナイスミドルが笑っていた。
「小僧!一人旅か?」
「そうです。実は道に迷ってしまって、困っていたんです。すいませんが一番近い町は何所か教えてもらえないでしょうか?」
「そうであったか。ここから一番近いのはチノベ村だな。川沿いに下っていけば見えてくるはずだ」
「ありがとうございます。」
そう言うと騎士は手を振り、兜を被りなおしていた。
「気を付けて行けよ。さらばだ小僧」
イケオジ騎士は馬にまたがり、あっという間にいなくなってしまった。

よし!休憩できたし道も聞けた。
「あとちょっと頑張りますか」

日が傾き夕方になるころには村が見えてきた。
「やっと着いた。はぁ、以外に遠かったなぁ」
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