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第26話 クリームパスタ
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「……寒くなってきたな」
将軍職を勤め上げ、現役時代には『猛獅子』の2つ名で恐れられた男、ライオネルはそうつぶやきながら街を歩く。
昼間はそれほどではないが朝晩は「寒い」と言える位には冷え込むようになり、コートが必要になる事もある。
若かったころは多少の暑さ寒さではビクともしないタフな肉体であったが、今ではそれらが身に染みるようになった。
それが「老いる」というものだろう。
いつものようにすっかりなじみの店となった「光食堂」の入り口のドアを開ける。いつものようにチリンチリンと鈴の音が鳴った。
「いらっしゃいませ。あらライオネルさん。いつもごひいきありがとうございます」
「こんばんわ光さん、また来たよ」
普段であれば適当に開いている席に座るのだが、今回はとある男の後ろ姿を見て彼の隣に座った。
「ご注文はいつものナポリタンでよろしいでしょうか?」
「いや、今回は別の品を注文したい」
今日の料理はいつものナポリタンはお休みにしよう。店に来る前からそう決めていたのだ。
「光さん、今回はクリームパスタを頼むぞ」
「はいかしこまりました。少々お待ちいただけますか?」
ライオネルは注文をした後、あえて彼の隣の席に座った目的……
調べたところ王都にある貴族向けの料理屋で腕を振るう料理人らしいヒョウ型の獣人に声をかける。
「やぁ、クラウスとか言ったな若いの。相変わらず仕事中なのか?」
「いや、今日は完成祝いです。何とか納得のいく味になって今年の冬本番までには間に合うめどが立ちましたよ」
「そうかそうか、それは良かったな。今度お前さんの店で食わせてもらうことにするよ」
「!! もったいないお言葉、ありがとうございます」
それをきっかけに会話が始まる。ライオネルは昔、将軍職にいた頃に会食した際の料理の話を、クラウスは最近の仕事の話をして時間を潰す。
お互いに新鮮な話だったようで会話は弾んだ。
「お待たせしました。クリームパスタになります。あとクラウスさんにはハンバーグとパン、それに赤ワインですね」
「おお、来たか」
会話をしていると時間なんてあっという間に過ぎる。体感的には注文してすぐお目当てが出たように感じられた。
ライオネルはさっそく料理を食べ始める。スプーンでとろりとした白いスープをすくいながらフォークで麺をからめとり、口に運ぶ。
ミルクの持つ甘味にバターのコクが加わり、貴族向けの店でも味わえないような美味となる。
その濃厚なソースにパスタが絡んで、文句のつけようがないくらい、美味い。
この料理で使われている「ホワイトソース」なるものは、見た目や味からして隣に座る男が再現したという
クリームシチューとほぼ変わらないものが使われているのだろう。
彼にとってはナポリタンのケチャップなるソースこそがこの店では最も美味いと思っているが、このホワイトソースもこれはこれで美味い。
たまに食いたくなるものである。
「ふーむ、クリームパスタですか。見た目からはクリームシチューと同じようなソースが使われているような感じですね」
「だろうな。おそらくは同じだろう。クリームソースが再現できたならもしかしたら大して手間もかからずにこの料理も再現できるのではないか?」
「……かもしれませんね」
クラウスは考える。言われてみればそうだが多少の調整は必要だろう……
でもシチューに使っていたのとほとんど同じクリームソースを使っているからおそらく再現するのは今の彼からすれば簡単だろう。
シチューは夏場になると注文は大幅に減る。だがパスタ等の麺類は年間を通じて注文が入る。
材料はほぼ同じだがクリームパスタを新メニューに加えることが出来たら店はさらに繁盛するだろう。
「よし……やってみるか」
「おおそうか。楽しみにしているよ」
「待っていてくださいよ。必ず再現してみせますんで」
クラウスはクリームシチューの再現という大仕事をやった後、さらに新たな仕事をすることに決めた。
こいつも再現出来ればさらに売り上げが上がるだろうと見込みつつ。
【次回予告】
種族的に魚嫌いのゲルム。知り合いに背中を押されて注文するが結果はいかに。
第27話「サンマのかば焼き」
将軍職を勤め上げ、現役時代には『猛獅子』の2つ名で恐れられた男、ライオネルはそうつぶやきながら街を歩く。
昼間はそれほどではないが朝晩は「寒い」と言える位には冷え込むようになり、コートが必要になる事もある。
若かったころは多少の暑さ寒さではビクともしないタフな肉体であったが、今ではそれらが身に染みるようになった。
それが「老いる」というものだろう。
いつものようにすっかりなじみの店となった「光食堂」の入り口のドアを開ける。いつものようにチリンチリンと鈴の音が鳴った。
「いらっしゃいませ。あらライオネルさん。いつもごひいきありがとうございます」
「こんばんわ光さん、また来たよ」
普段であれば適当に開いている席に座るのだが、今回はとある男の後ろ姿を見て彼の隣に座った。
「ご注文はいつものナポリタンでよろしいでしょうか?」
「いや、今回は別の品を注文したい」
今日の料理はいつものナポリタンはお休みにしよう。店に来る前からそう決めていたのだ。
「光さん、今回はクリームパスタを頼むぞ」
「はいかしこまりました。少々お待ちいただけますか?」
ライオネルは注文をした後、あえて彼の隣の席に座った目的……
調べたところ王都にある貴族向けの料理屋で腕を振るう料理人らしいヒョウ型の獣人に声をかける。
「やぁ、クラウスとか言ったな若いの。相変わらず仕事中なのか?」
「いや、今日は完成祝いです。何とか納得のいく味になって今年の冬本番までには間に合うめどが立ちましたよ」
「そうかそうか、それは良かったな。今度お前さんの店で食わせてもらうことにするよ」
「!! もったいないお言葉、ありがとうございます」
それをきっかけに会話が始まる。ライオネルは昔、将軍職にいた頃に会食した際の料理の話を、クラウスは最近の仕事の話をして時間を潰す。
お互いに新鮮な話だったようで会話は弾んだ。
「お待たせしました。クリームパスタになります。あとクラウスさんにはハンバーグとパン、それに赤ワインですね」
「おお、来たか」
会話をしていると時間なんてあっという間に過ぎる。体感的には注文してすぐお目当てが出たように感じられた。
ライオネルはさっそく料理を食べ始める。スプーンでとろりとした白いスープをすくいながらフォークで麺をからめとり、口に運ぶ。
ミルクの持つ甘味にバターのコクが加わり、貴族向けの店でも味わえないような美味となる。
その濃厚なソースにパスタが絡んで、文句のつけようがないくらい、美味い。
この料理で使われている「ホワイトソース」なるものは、見た目や味からして隣に座る男が再現したという
クリームシチューとほぼ変わらないものが使われているのだろう。
彼にとってはナポリタンのケチャップなるソースこそがこの店では最も美味いと思っているが、このホワイトソースもこれはこれで美味い。
たまに食いたくなるものである。
「ふーむ、クリームパスタですか。見た目からはクリームシチューと同じようなソースが使われているような感じですね」
「だろうな。おそらくは同じだろう。クリームソースが再現できたならもしかしたら大して手間もかからずにこの料理も再現できるのではないか?」
「……かもしれませんね」
クラウスは考える。言われてみればそうだが多少の調整は必要だろう……
でもシチューに使っていたのとほとんど同じクリームソースを使っているからおそらく再現するのは今の彼からすれば簡単だろう。
シチューは夏場になると注文は大幅に減る。だがパスタ等の麺類は年間を通じて注文が入る。
材料はほぼ同じだがクリームパスタを新メニューに加えることが出来たら店はさらに繁盛するだろう。
「よし……やってみるか」
「おおそうか。楽しみにしているよ」
「待っていてくださいよ。必ず再現してみせますんで」
クラウスはクリームシチューの再現という大仕事をやった後、さらに新たな仕事をすることに決めた。
こいつも再現出来ればさらに売り上げが上がるだろうと見込みつつ。
【次回予告】
種族的に魚嫌いのゲルム。知り合いに背中を押されて注文するが結果はいかに。
第27話「サンマのかば焼き」
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