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第23話 ダンスレッスン
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「1.2.3.4。1.2.3.4。その調子ですぞ、ずいぶんと踊れるようになっていますな陛下。ではこの辺で少し休憩しましょうか」
デニスはダンスの教師とのマンツーマンによるレッスンを受けている途中だった。休憩に入って一息つく。
「まーったく。なんで野郎同士で手をつないでダンス踊んなきゃいけねえんだよ」
「舞踏会に参加しないし、しても踊ろうとしないからではないのですか?
それにしてもあれだけダンスを嫌がっていたのに急にレッスンをマジメに受けるようになったのはどういう風の吹き回しで?」
相手が実質的な王とはいえ、教え子であるため敬語をあまり使わない(この部分はデニスの希望でもあった)講師は疑問に思う。
今までは予定を入れても何かと理由をつけてサボる問題児だったのに、今では自らレッスンをさせてくれと頼むようになったのは見違えるほどの変化だ。
「カレンだよ。今の俺にはカレンがいるからな。せっかくの舞踏会でダンスの1つでも出来なきゃカッコがつかねえじゃねえか」
「なるほど、彼女のためですか。良いことだと思いますぞ陛下。では続きと行きますか」
「よし、やるか」
休憩を終えてレッスンが再開しようとした時だった。
「あら、デニスさん。こんなところで何やってるの?」
カレンが様子を見に来た。
「恥ずかしいところ見られちまったなぁ……ダンスのレッスンだよ。俺は剣1本で王にのし上がったようなもんだから
内政や王族の嗜みってやつとは縁が遠かったのさ。特にダンスは1人でいるのならやらなくてもいいが、今の俺にはお前がいるからな」
「ふーん、私のためにね。とりあえず練習していいかな?」
「……俺が相手だと足を踏むかもしれんから、とりあえずは講師とやってくれないか?」
「そ、そう。わかったわ」
(「はい」か。本当に慣れてないのね)
カレンは講師の手を取って相手をした。
「1.2.3.4。1.2.3.4。ほほぉ、エドワード家もなかなかの教育をするではありませんか。さすがですな」
心を読むという忌み嫌われる能力を持っていながらも、カレンはダンスやテーブルマナーなどの一国の姫君としての教育はしっかりと受けていた。
基本的なダンスではあるが、ほぼ完ぺきにできていた。
「へー、うまいもんだなカレン。さすがはお姫様だけあるなー。俺だったら最低2回は足踏んでたところだぜ」
様子を見ていたデニスは感心してその様子を見ていた。しばらく踊りを眺めていると……。
「では陛下、せっかくですのでカレン様と試しに踊ってみてはいかがでしょうか?」
講師がそう言ってくる。そうなるだろうとは思っていたのだ実際にやるとなると不安だ。
「!! やっぱりそうなるよなぁ。でもいいのか? 絶対足を踏まない保証がない男だぜ?」
「大丈夫、ある程度はリードできるから。じゃあやりましょ!」
カレンは微笑みながらデニスの武骨な手を取った。
「1.2.3.4。1.2.3.4。」
ダンス講師の手拍子に合わせて踊るデニスとカレン。デニスは緊張したままついていくのに精いっぱいという感じだが、カレンは楽しんでるように見えた。
「1.2.3.4。1.2.3! はい終わりです」
「ふー……終わった」
「あら、もう終わりなの?」
踊り終えて「ぐったりと疲れた」デニスと「楽しんだ」カレンはそう漏らす。幸いお互い1回たりとも足を踏むことはなかった。
「とりあえず足を踏まないよう気を付けてたからかなりしんどかったな」
「へぇ。デニスさんってば言うほど酷くはないわね。もっと酷いと思ってたけど十分踊れるじゃない。まぁ私がリードしてるってのもあったけど」
「いやー助けられっぱなしだなぁ。あれがなければ2回は足踏んでたよ」
疲れの見えるデニスは、やや自虐的な言い方でカレンに接する。
「では今日のレッスンはこの辺にしておきますか」
「はいよー。うー飯だ飯。緊張して腹が減ったよ」
「フフッ。デニスさんらしいですね」
2人はそう言って食堂へと向かっていった。
デニスはダンスの教師とのマンツーマンによるレッスンを受けている途中だった。休憩に入って一息つく。
「まーったく。なんで野郎同士で手をつないでダンス踊んなきゃいけねえんだよ」
「舞踏会に参加しないし、しても踊ろうとしないからではないのですか?
それにしてもあれだけダンスを嫌がっていたのに急にレッスンをマジメに受けるようになったのはどういう風の吹き回しで?」
相手が実質的な王とはいえ、教え子であるため敬語をあまり使わない(この部分はデニスの希望でもあった)講師は疑問に思う。
今までは予定を入れても何かと理由をつけてサボる問題児だったのに、今では自らレッスンをさせてくれと頼むようになったのは見違えるほどの変化だ。
「カレンだよ。今の俺にはカレンがいるからな。せっかくの舞踏会でダンスの1つでも出来なきゃカッコがつかねえじゃねえか」
「なるほど、彼女のためですか。良いことだと思いますぞ陛下。では続きと行きますか」
「よし、やるか」
休憩を終えてレッスンが再開しようとした時だった。
「あら、デニスさん。こんなところで何やってるの?」
カレンが様子を見に来た。
「恥ずかしいところ見られちまったなぁ……ダンスのレッスンだよ。俺は剣1本で王にのし上がったようなもんだから
内政や王族の嗜みってやつとは縁が遠かったのさ。特にダンスは1人でいるのならやらなくてもいいが、今の俺にはお前がいるからな」
「ふーん、私のためにね。とりあえず練習していいかな?」
「……俺が相手だと足を踏むかもしれんから、とりあえずは講師とやってくれないか?」
「そ、そう。わかったわ」
(「はい」か。本当に慣れてないのね)
カレンは講師の手を取って相手をした。
「1.2.3.4。1.2.3.4。ほほぉ、エドワード家もなかなかの教育をするではありませんか。さすがですな」
心を読むという忌み嫌われる能力を持っていながらも、カレンはダンスやテーブルマナーなどの一国の姫君としての教育はしっかりと受けていた。
基本的なダンスではあるが、ほぼ完ぺきにできていた。
「へー、うまいもんだなカレン。さすがはお姫様だけあるなー。俺だったら最低2回は足踏んでたところだぜ」
様子を見ていたデニスは感心してその様子を見ていた。しばらく踊りを眺めていると……。
「では陛下、せっかくですのでカレン様と試しに踊ってみてはいかがでしょうか?」
講師がそう言ってくる。そうなるだろうとは思っていたのだ実際にやるとなると不安だ。
「!! やっぱりそうなるよなぁ。でもいいのか? 絶対足を踏まない保証がない男だぜ?」
「大丈夫、ある程度はリードできるから。じゃあやりましょ!」
カレンは微笑みながらデニスの武骨な手を取った。
「1.2.3.4。1.2.3.4。」
ダンス講師の手拍子に合わせて踊るデニスとカレン。デニスは緊張したままついていくのに精いっぱいという感じだが、カレンは楽しんでるように見えた。
「1.2.3.4。1.2.3! はい終わりです」
「ふー……終わった」
「あら、もう終わりなの?」
踊り終えて「ぐったりと疲れた」デニスと「楽しんだ」カレンはそう漏らす。幸いお互い1回たりとも足を踏むことはなかった。
「とりあえず足を踏まないよう気を付けてたからかなりしんどかったな」
「へぇ。デニスさんってば言うほど酷くはないわね。もっと酷いと思ってたけど十分踊れるじゃない。まぁ私がリードしてるってのもあったけど」
「いやー助けられっぱなしだなぁ。あれがなければ2回は足踏んでたよ」
疲れの見えるデニスは、やや自虐的な言い方でカレンに接する。
「では今日のレッスンはこの辺にしておきますか」
「はいよー。うー飯だ飯。緊張して腹が減ったよ」
「フフッ。デニスさんらしいですね」
2人はそう言って食堂へと向かっていった。
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