人魔共和国建国記

あがつま ゆい

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激闘 ヴェルガノン帝国

第112話 法王の使い

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 ヴェルガノン帝国兵を後方から攻撃したことに何事だ、と攻める側守る側も同じようにざわつく。
 疑問に思う兵たちに不死者達のさらに後方からハーピーの伝令兵がメッセージを持ってやってくる。

「伝令! 西大陸各地より集った法王配下の僧兵、およそ3000が加勢するそうです!」
「味方が……来てくれたのか!?」

 マコトから聞いていた始まりの島を治める法王の命を受け、いざという時には彼に助力しろと頼まれていた援軍。
 イルバーンを救うためにハシバ国を発つ際にマコトが援護要請をしていたのが今、たどり着いたのだ。

「総員、不死者アンデッドを恐れるな! 進め!」

 隊長の合図とともに僧兵たちが斬り込む。彼らは聖なる力を持った剣や光の魔法で敵兵を次々と倒していく。
 仮に人間の兵士が相手だったとしても五分以上の力を有する僧兵たちは不死者アンデッド達にとっては天敵とでも言える。その敬虔けいけんな信者たちの力は数の暴力を押し返すほどであった。

「味方が来たんだ! 踏ん張れ! 耐えきるんだ!」

 ハシバ国の下士官が味方を鼓舞する。パワーバランスが一気に傾いた。



「グウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ア゛!」
「ア゛ァ゛ア゛! ア゛ァ゛ア゛! ア゛ァ゛ウ゛……」

 アンデッド達にとって「一番戦ってはいけない相手」との戦いで彼らは次々と敗れ、2度目の死を与えられる。10000近くある兵数が見る見るうちに数を減らし、弱っていく。

「ティアラ様! 我が隊は壊滅状態です!」
「伝令! メギド隊長が討ち取られて隊員が混乱しています!」

 僧兵の参戦で彼女の軍勢は一気に形勢が不利になる。

「くっ! もう少しだったのに! 仕方ない。全軍に退却命令を出しなさい」
「ティアラ様、よろしいんですか?」
「このままでは全滅する危険性もある。活路を開きなさい!」
「ぎょ、御意!」



 僧兵参戦からしばらくして、敵兵に動きがあった。退却する模様だ。

「敵軍、撤退していきます!」
「た、助かった……」
「し、死ぬかと思った……ひ、ひぃい……」

 援軍が来なければ負けていたであろう戦いに勝てたことで、初陣だったこともあり緊張の糸が切れて腰を抜かす兵士も多かった。
 死者たちが去った後で、ディオールは援護してくれた僧兵の指揮官にあいさつする。

「ありがとうございます。おかげで助かりました。もしあなた方が来てくれなかったら、負けていたでしょう」
「ディオール様ですね。ご無事で何よりです。我々は法王猊下げいかからマコト様の力になってくれとの命を受け救援に参りました。ただ、残念ながら敵将は逃がしてしまいました」
「構いません。我々が生き延びれただけでもありがたい話です」
「今後もマコト様の下で力になってくれと法王猊下げいかからのご命令を仰せつかっています。あなたたちとともにヴェルガノン帝国を討ちましょう」

 2人は固い握手をした。



 それから遅れること1日……ハシバ国軍本隊がようやく帰国した。マコトはヴァジュラとヴァジュラヘッドを格納庫にしまって城の玉座の間へと向かう。

「すまんメリル。もういくさは終わったんだよな?」
「とっくの昔に終わりました」
「ハァ……情けないな。いいところがねえなぁ」
「あなたが僧兵たちに援護してくれるように言ってただけでも十分よ。もしそうしなかったら今頃私たちは……」
「そうだな。怖い目に遭わせてすまなかった」
「いいのよ。最近はこの辺りじゃ平定が進んでるけどいまだに乱世なんだし。それより晩御飯にしましょ」
「あ、ああ。そうだな」

 妻の無事を確認した王の顔からようやく緊張の糸が無くなった。今日からしばらくは良く寝れそうだとも思った。



【次回予告】
このままやられっぱなしでいるわけにはいけない。制圧された領土解放のために事は進めていた。

第113話 「反攻作戦」
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