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オレイカルコス連合制圧戦
第90話 不死隊誕生
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「どうした? マコト。お前らしくもなくふさぎ込んで」
「あ、ああ、キーファー。いろいろあってな」
「とりあえず口にして吐き出すだけでもだいぶ違うぞ。こんなジジィで良ければ話相手になろう」
「あ、ああ。実は……」
秋になり紅葉が見ごろを迎えるころ、ダークエルフの森を訪ねていたマコトは彼らの長老的ポジションにいるキーファーに呼び止められ、彼の家の中で話を始める。
目下の課題はドワーフの銃だ。元込め銃の前では中世に毛が生えた程度の文明なんぞ赤子同然で、勝負の舞台に上がることすらできない。
彼はドワーフの銃がいかに優れていて画期的なのか、それに対抗する自分たちはいかに弱いかを語った。
「フーム。あのドワーフ共の銃がそんなに脅威なのか?」
「ああそうだ。お前の知ってる銃なんて子供のオモチャ以下だぜ?」
「そこまで言うか……まぁお前は嘘をつくような人間ではないし、信じてもいいだろう。実際今年の夏の戦はかなりの死者が出たと聞いているからな」
そこまで言って話が途切れる。重苦しくはないものの、長い間が流れる。
「ドワーフの銃に勝てる方法か……あると言えばあるぞ」
「おお! あるんだな。話だけでも聞かせくれないか?」
「分かった。あくまで話だけ、な」
キーファーは続ける。
「今となっては人間でいう旧エルフ文明とでも言うべき遺産の一つで、「不死化」と呼ばれる施術じゃ。
これを施すことで身体能力や魔力を爆発的に高め、さらにトロル以上の身体再生能力を与える。
ただし、一時的に超人的な力を得るがその副作用として1000年あるとされるエルフの寿命が半分に縮むとさえ言われている。
人間に施したらどうなるかワシ等でも予測はつかん。一応はワシも施術できるがハッキリ言って外法に入るぞ」
「そうか……」
そこまで聞いてマコトはハァ。と深いため息をつく。
確かにその力を使えば勝てるかもしれない。だが、施術された者の命の保証はないとなるととてもじゃないが出来るわけがない。
突破口になるかもしれないと思っていたマコトのもくろみは外れ、再び悩む日々が始まった。
うつむくマコトと入れ替わるようにダークエルフの青年が住居の中に入っていく。
「キーファー様、閣下がうつむきながら歩いていましたけど何かあったのですか?」
「お前は確か……最近やって来たエンジュとかいう者だな。エルフェンほどではないが結構な活躍をしているそうではないか。ふむ……まぁいい、教えてもいいだろう」
マコトの公布した「奴隷解放のお触れ」を聞いてやってきた奴隷たちは種族を問わなければ総勢およそ500名、男に限って言えば300名を超える数が集まっていた。
「エンジュ、本当か?」
「ああ、マコト様目下のお悩み事と言えばドワーフの銃らしい。キーファー様はそれを解決できる策を持っておられるそうだ」
元奴隷のダークエルフ、エンジュを起点に仲間の元奴隷たちに噂話が広まる。
マコトが悩んでいること、そしてそれを解決できる策があると言えばあるという状態であること。
それに対する答えは、ただ一つだった。
「なぁ、どうする?」
「そんなの決まってるじゃないか」
「ああ、行こうぜ!」
彼らは仲間を連れ、マコトの城へと向かった。
「閣下。元奴隷の集団が閣下との謁見を望んでいるそうですがいかがいたしますか?」
「何? 元奴隷たちが? まぁいい、話を聞こう」
衛兵からの報告を聞いてマコトは話を聞くくらいなら、と軽く承諾した。
「「「閣下! 俺たちに不死化の施術を施してください!」」」
マコトに出会うと開口一番、元奴隷たちはそう願い出た。
「俺たちは閣下に命を救われた! 今度は俺たちの番だ! 閣下のために働く! そのためだったら何でもやる!」
「閣下、あなたは奴隷の地位にいた我々を救ってくれた。今度は我々の番だ。差し出せというのならいかなるものでも差し出そう。持てる財全てであろうと、命だろうと、何だろうと」
「カッカ、イノチのオンジン。オレ、ナンデモヤル、カッカのタメナラ」
「俺も、ここにいるみんなも閣下のお役に立ちたいんです! 閣下! ご決断を!」
元奴隷たちの目は全員、本気だった。
「……お前たち。言っておくが命の保証はないぞ? 死ぬかもしれん。それでもいいのか?」
「構うもんか! 閣下のためになるのなら!」
「そうだ! 俺たちはもともと命を捨てる覚悟はできている!」
「閣下! お願いいたします!」
「閣下!」
「閣下!」
マコトは彼らの声を受け止め、決断する。
「……わかった。そこまで言うなら止めやしない。施術を受けるのを許可しよう」
これが、後のオレイカルコス連合との戦で大きな役目を果たした精鋭部隊、「不死隊」誕生の瞬間だった。
【次回予告】
季節は巡り、寒空の冬。
だが西大陸は戦乱の炎で熱く燃えていた。
第91話 「開戦 オレイカルコス連合制圧戦」
「あ、ああ、キーファー。いろいろあってな」
「とりあえず口にして吐き出すだけでもだいぶ違うぞ。こんなジジィで良ければ話相手になろう」
「あ、ああ。実は……」
秋になり紅葉が見ごろを迎えるころ、ダークエルフの森を訪ねていたマコトは彼らの長老的ポジションにいるキーファーに呼び止められ、彼の家の中で話を始める。
目下の課題はドワーフの銃だ。元込め銃の前では中世に毛が生えた程度の文明なんぞ赤子同然で、勝負の舞台に上がることすらできない。
彼はドワーフの銃がいかに優れていて画期的なのか、それに対抗する自分たちはいかに弱いかを語った。
「フーム。あのドワーフ共の銃がそんなに脅威なのか?」
「ああそうだ。お前の知ってる銃なんて子供のオモチャ以下だぜ?」
「そこまで言うか……まぁお前は嘘をつくような人間ではないし、信じてもいいだろう。実際今年の夏の戦はかなりの死者が出たと聞いているからな」
そこまで言って話が途切れる。重苦しくはないものの、長い間が流れる。
「ドワーフの銃に勝てる方法か……あると言えばあるぞ」
「おお! あるんだな。話だけでも聞かせくれないか?」
「分かった。あくまで話だけ、な」
キーファーは続ける。
「今となっては人間でいう旧エルフ文明とでも言うべき遺産の一つで、「不死化」と呼ばれる施術じゃ。
これを施すことで身体能力や魔力を爆発的に高め、さらにトロル以上の身体再生能力を与える。
ただし、一時的に超人的な力を得るがその副作用として1000年あるとされるエルフの寿命が半分に縮むとさえ言われている。
人間に施したらどうなるかワシ等でも予測はつかん。一応はワシも施術できるがハッキリ言って外法に入るぞ」
「そうか……」
そこまで聞いてマコトはハァ。と深いため息をつく。
確かにその力を使えば勝てるかもしれない。だが、施術された者の命の保証はないとなるととてもじゃないが出来るわけがない。
突破口になるかもしれないと思っていたマコトのもくろみは外れ、再び悩む日々が始まった。
うつむくマコトと入れ替わるようにダークエルフの青年が住居の中に入っていく。
「キーファー様、閣下がうつむきながら歩いていましたけど何かあったのですか?」
「お前は確か……最近やって来たエンジュとかいう者だな。エルフェンほどではないが結構な活躍をしているそうではないか。ふむ……まぁいい、教えてもいいだろう」
マコトの公布した「奴隷解放のお触れ」を聞いてやってきた奴隷たちは種族を問わなければ総勢およそ500名、男に限って言えば300名を超える数が集まっていた。
「エンジュ、本当か?」
「ああ、マコト様目下のお悩み事と言えばドワーフの銃らしい。キーファー様はそれを解決できる策を持っておられるそうだ」
元奴隷のダークエルフ、エンジュを起点に仲間の元奴隷たちに噂話が広まる。
マコトが悩んでいること、そしてそれを解決できる策があると言えばあるという状態であること。
それに対する答えは、ただ一つだった。
「なぁ、どうする?」
「そんなの決まってるじゃないか」
「ああ、行こうぜ!」
彼らは仲間を連れ、マコトの城へと向かった。
「閣下。元奴隷の集団が閣下との謁見を望んでいるそうですがいかがいたしますか?」
「何? 元奴隷たちが? まぁいい、話を聞こう」
衛兵からの報告を聞いてマコトは話を聞くくらいなら、と軽く承諾した。
「「「閣下! 俺たちに不死化の施術を施してください!」」」
マコトに出会うと開口一番、元奴隷たちはそう願い出た。
「俺たちは閣下に命を救われた! 今度は俺たちの番だ! 閣下のために働く! そのためだったら何でもやる!」
「閣下、あなたは奴隷の地位にいた我々を救ってくれた。今度は我々の番だ。差し出せというのならいかなるものでも差し出そう。持てる財全てであろうと、命だろうと、何だろうと」
「カッカ、イノチのオンジン。オレ、ナンデモヤル、カッカのタメナラ」
「俺も、ここにいるみんなも閣下のお役に立ちたいんです! 閣下! ご決断を!」
元奴隷たちの目は全員、本気だった。
「……お前たち。言っておくが命の保証はないぞ? 死ぬかもしれん。それでもいいのか?」
「構うもんか! 閣下のためになるのなら!」
「そうだ! 俺たちはもともと命を捨てる覚悟はできている!」
「閣下! お願いいたします!」
「閣下!」
「閣下!」
マコトは彼らの声を受け止め、決断する。
「……わかった。そこまで言うなら止めやしない。施術を受けるのを許可しよう」
これが、後のオレイカルコス連合との戦で大きな役目を果たした精鋭部隊、「不死隊」誕生の瞬間だった。
【次回予告】
季節は巡り、寒空の冬。
だが西大陸は戦乱の炎で熱く燃えていた。
第91話 「開戦 オレイカルコス連合制圧戦」
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