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アレンシア戦役
第33話 決着 アレンシア戦役
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エリックの謀叛はあっという間にアレンシア国軍の間に広まった。
「伝令! 緊急事態! エリック様が謀叛を起こしました!」
「来たか! 我らも続け! 豚王の支配を終わらせるんだ!」
「ニッカ様!? 反逆するおつもりですか!?」
「当然だ! 我らの真の君主はモリス様だ! あの豚王ではない! 行くぞ! エリック様を援護するんだ! ついてこい!」
それを聞いたモリスの配下であったイトリー家支持派がそれに続けと言わんばかりに次々と謀反を起こした。
「伝令! 敵軍のエリックより!『我が300の兵の中に豚王に味方するもの、1兵たりともなし!』」
「伝令! 敵軍のニッカより!『我らが兵150、打倒豚王のために助太刀いたす!』」
「来たか!」
次々とあがる報告をマコトは聞く。計3部隊、総勢600名もの敵軍が味方に寝返った。
「これで相手は1600に対して俺達は2600! この戦い、勝てるぞ! 一気に押し込め!」
全軍にイトリー家、ならびに支持派の部隊が味方になったという伝令を飛ばす。戦力差が若干不利程度から2倍弱にまで一気に広がる!
「伝令! 緊急事態! エリック及びその支持派が謀叛を起こしました! 現在敵軍と合流しわが軍を攻撃中です!」
「エリック!? あのモリスのガキか! あの野郎、ぶっ殺せ! 見つけ出して八つ裂きにしろ!」
来兎の軍は魔物が主戦力で人間の兵は軽視され、末端の部隊に充てられていた。エリックをはじめとするイトリー家およびその支持派には嫌がらせで人間の兵を充てていたが、それがあだとなった。
「大丈夫だ、魔物や獣人は常にオレの味方だ。絶対裏切らねぇし士気が落ちることもねぇ。そいつらを使えば勝てねぇ戦なんて無ぇ! 叩き潰せ!」
「ぐっ!?」
防戦一方だったシュネーはカーマインの猛攻に耐えきれず右腕に深い切り傷を負ってしまう。撤退しても良い傷だが盾をしまい剣を左手に持ち替え臨戦態勢を解かない。
刺し違えも辞さないと思ったその時、矢の雨がカーマインの背後から、さらには兵士による剣の斬撃も彼の元へと飛び込んで来る!
「ガァア!?」
「あの部隊は……ニッカ隊!? 同士討ちしてる!?」
「伝令! 閣下より!『イトリー家とその支持派と共に敵を撃破せよ!』との事です!」
「そう。そう言う事ね。各員! ニッカ隊と協力して敵を包囲せよ!」
カーマイン隊に対してシュネー隊とニッカ隊による挟み撃ちを仕掛ける! 包囲攻撃は目に見えて効果がありカーマイン隊は見る見るうちに溶けるように数を減らしていく。
「グルゥア! グルゥアアアア!」
味方の兵がことごとく力尽き、カーマインが敵に囲まれ四方八方から剣で斬られ、槍で突き刺されられる。
「グル……グゥ……ア……」
最初こそ抵抗したものの、やがて大量の失血で意識を失い、倒れた。
「お父様!?」
「!? メリル! 何でここに!?」
「お願い、殺さないで! お父様がこうなったのは絶対わけがあるから!」
「衛生兵、彼を運びなさい。それと私に簡単な止血をお願いするわ。応急手当てが終わり次第、私はまた戦線に復帰する」
シュネーはこの場に居るはずのない、おそらく軍規違反を犯したであろう彼女を相手にしても冷静に判断し指示を出した。
「ぐあっ!」
「おいチビ! くたばるのはまだ早えぞ! 根性入れろ! って、ダメか」
右翼に展開するウラカンの部隊は劣勢に追い込まれていた。まだミノタウロスはそのほとんどが生き残っているが味方のゴブリンやコボルト、それに人間は大分やられた。
「兄貴、さすがにやばくないですか俺達」
「この程度の不利な状況は1度や2度ではねえだろ! 持ちこたえろ!」
「兄貴! 敵の様子が変です! エリックの部隊が同士討ちを始めてますぜ!」
「なにぃ? 同士討ちだとぉ?」
「伝令! 閣下より!『イトリー家とその支持派と共に敵を撃破せよ!』との事です!」
「はは~ん。なるほど。これが閣下の秘密兵器って奴か。お前ら! あの豚共を囲むように動け! エリックの部隊と挟み撃ちだ!」
ウラカンはマコトの秘策に勘付いて指示を飛ばす。挟み撃ちにして一気に敵を殲滅するつもりだ。
「伝令! リューシャ隊長討死! 残存兵、残りわずかです!」
「伝令! カーマイン隊壊滅! 隊長の安否は分かっていません!」
「畜生! エリックの首はまだか!?」
豚王は部下の戦死報告を聞き、焦る。こんなはずはなかった。予定では今頃マコトを引きずり出して軽く拷問にでもかけてるはずだったのに。
「おいテメェ! 何とかならんのか!?」
「閣下、それがエリックとイトリー家支持派の謀叛で陣形は崩れて指揮系統が混乱しています! とても戦うどころではありません!」
「ふざけてんのか! 何とかしろ給料ドロボーがっ! 殺されてえのか!? ええ!?」
「閣下、このままでは全軍壊滅してしまいます! こうなったら城へ籠城するしかありませんぞ!」
「クソッ! 全軍に退却命令をだぜ! 籠城する! 殿はお前がやれ!」
「ええっ!? 私ですか!?」
「テメェが籠城しようって言いだしたじゃねーか! うまくやれ!」
「……承知しました」
◇◇◇
「閣下! 敵軍、退却していくもようです! いかがなさいますか!?」
「俺達の勝ちか! 追撃しろ! 一気に叩け!」
マコトは部下からの報告を聞き上機嫌だ。追撃を指示し、絶好の攻撃機会を逃さない。
こうして後にハシバ国に伝わる「アレンシア戦役」と呼ばれる一連の戦争のクライマックスと言える戦いはマコトの勝利で終わった。
「伝令! 緊急事態! エリック様が謀叛を起こしました!」
「来たか! 我らも続け! 豚王の支配を終わらせるんだ!」
「ニッカ様!? 反逆するおつもりですか!?」
「当然だ! 我らの真の君主はモリス様だ! あの豚王ではない! 行くぞ! エリック様を援護するんだ! ついてこい!」
それを聞いたモリスの配下であったイトリー家支持派がそれに続けと言わんばかりに次々と謀反を起こした。
「伝令! 敵軍のエリックより!『我が300の兵の中に豚王に味方するもの、1兵たりともなし!』」
「伝令! 敵軍のニッカより!『我らが兵150、打倒豚王のために助太刀いたす!』」
「来たか!」
次々とあがる報告をマコトは聞く。計3部隊、総勢600名もの敵軍が味方に寝返った。
「これで相手は1600に対して俺達は2600! この戦い、勝てるぞ! 一気に押し込め!」
全軍にイトリー家、ならびに支持派の部隊が味方になったという伝令を飛ばす。戦力差が若干不利程度から2倍弱にまで一気に広がる!
「伝令! 緊急事態! エリック及びその支持派が謀叛を起こしました! 現在敵軍と合流しわが軍を攻撃中です!」
「エリック!? あのモリスのガキか! あの野郎、ぶっ殺せ! 見つけ出して八つ裂きにしろ!」
来兎の軍は魔物が主戦力で人間の兵は軽視され、末端の部隊に充てられていた。エリックをはじめとするイトリー家およびその支持派には嫌がらせで人間の兵を充てていたが、それがあだとなった。
「大丈夫だ、魔物や獣人は常にオレの味方だ。絶対裏切らねぇし士気が落ちることもねぇ。そいつらを使えば勝てねぇ戦なんて無ぇ! 叩き潰せ!」
「ぐっ!?」
防戦一方だったシュネーはカーマインの猛攻に耐えきれず右腕に深い切り傷を負ってしまう。撤退しても良い傷だが盾をしまい剣を左手に持ち替え臨戦態勢を解かない。
刺し違えも辞さないと思ったその時、矢の雨がカーマインの背後から、さらには兵士による剣の斬撃も彼の元へと飛び込んで来る!
「ガァア!?」
「あの部隊は……ニッカ隊!? 同士討ちしてる!?」
「伝令! 閣下より!『イトリー家とその支持派と共に敵を撃破せよ!』との事です!」
「そう。そう言う事ね。各員! ニッカ隊と協力して敵を包囲せよ!」
カーマイン隊に対してシュネー隊とニッカ隊による挟み撃ちを仕掛ける! 包囲攻撃は目に見えて効果がありカーマイン隊は見る見るうちに溶けるように数を減らしていく。
「グルゥア! グルゥアアアア!」
味方の兵がことごとく力尽き、カーマインが敵に囲まれ四方八方から剣で斬られ、槍で突き刺されられる。
「グル……グゥ……ア……」
最初こそ抵抗したものの、やがて大量の失血で意識を失い、倒れた。
「お父様!?」
「!? メリル! 何でここに!?」
「お願い、殺さないで! お父様がこうなったのは絶対わけがあるから!」
「衛生兵、彼を運びなさい。それと私に簡単な止血をお願いするわ。応急手当てが終わり次第、私はまた戦線に復帰する」
シュネーはこの場に居るはずのない、おそらく軍規違反を犯したであろう彼女を相手にしても冷静に判断し指示を出した。
「ぐあっ!」
「おいチビ! くたばるのはまだ早えぞ! 根性入れろ! って、ダメか」
右翼に展開するウラカンの部隊は劣勢に追い込まれていた。まだミノタウロスはそのほとんどが生き残っているが味方のゴブリンやコボルト、それに人間は大分やられた。
「兄貴、さすがにやばくないですか俺達」
「この程度の不利な状況は1度や2度ではねえだろ! 持ちこたえろ!」
「兄貴! 敵の様子が変です! エリックの部隊が同士討ちを始めてますぜ!」
「なにぃ? 同士討ちだとぉ?」
「伝令! 閣下より!『イトリー家とその支持派と共に敵を撃破せよ!』との事です!」
「はは~ん。なるほど。これが閣下の秘密兵器って奴か。お前ら! あの豚共を囲むように動け! エリックの部隊と挟み撃ちだ!」
ウラカンはマコトの秘策に勘付いて指示を飛ばす。挟み撃ちにして一気に敵を殲滅するつもりだ。
「伝令! リューシャ隊長討死! 残存兵、残りわずかです!」
「伝令! カーマイン隊壊滅! 隊長の安否は分かっていません!」
「畜生! エリックの首はまだか!?」
豚王は部下の戦死報告を聞き、焦る。こんなはずはなかった。予定では今頃マコトを引きずり出して軽く拷問にでもかけてるはずだったのに。
「おいテメェ! 何とかならんのか!?」
「閣下、それがエリックとイトリー家支持派の謀叛で陣形は崩れて指揮系統が混乱しています! とても戦うどころではありません!」
「ふざけてんのか! 何とかしろ給料ドロボーがっ! 殺されてえのか!? ええ!?」
「閣下、このままでは全軍壊滅してしまいます! こうなったら城へ籠城するしかありませんぞ!」
「クソッ! 全軍に退却命令をだぜ! 籠城する! 殿はお前がやれ!」
「ええっ!? 私ですか!?」
「テメェが籠城しようって言いだしたじゃねーか! うまくやれ!」
「……承知しました」
◇◇◇
「閣下! 敵軍、退却していくもようです! いかがなさいますか!?」
「俺達の勝ちか! 追撃しろ! 一気に叩け!」
マコトは部下からの報告を聞き上機嫌だ。追撃を指示し、絶好の攻撃機会を逃さない。
こうして後にハシバ国に伝わる「アレンシア戦役」と呼ばれる一連の戦争のクライマックスと言える戦いはマコトの勝利で終わった。
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