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アレンシア戦役
第24話 魔法部隊と亡国の姫君
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そろそろ「寒い」朝が来るようになり冬支度をすべき時期に突入してから、マコトの元にマンドレイクのオヒシバが久々に顔を出してきた。彼は堂々と自信満々の表情と態度をしている。
「王様! 新しい住人を連れてきました! それも魔法が使える住人ですよ!」
「新しい住人だと? ま、まぁいい。通してくれ」
マコトは若干不安に思いながらも連れてくるよう指示を出す。
彼が連れてきたのは頭がオレンジ色のカボチャになっていて、左手にこれまたカボチャのランタンを持った、ふわふわと浮かぶ幽霊みたいな魔物達……ジャック・オー・ランタンだ。彼らは一言で言えば陽気でノリの軽い連中だった。
「おう! アンタが王様ってやつか! これからは俺たちも協力するからよろしくたのむぜ! 兄弟!」
「特技は何だ? 魔法が使えると聞いたが?」
「聞いてんなら話は早え! こう見えても炎系はわりと自信あるぜ!」
「んじゃあテストしよう。ついてきてくれ」
さすがに王の間で魔法をぶっ放すわけにはいかない。マコトはたまたま空いていたクロスボウの射撃訓練場へと彼らを連れて行った。
的が置いてある場所に目標物としてレンガを置き、その威力を試させる。
「あのレンガを狙ってくれ」
「OK、任せとけ。ハアアアア……」
右手に持っているランタンに魔力を送ると、ランタンは激しい炎を噴き始める。そして、
「エクスプロージョン!」
ランタンから放たれた球体がレンガにあたると爆発を起こし、吹き飛ばした。
「おお! 結構威力あるな!」
「フム。これほどの威力があるのならすぐさま実戦投入できそうですな」
マコトとディオールがその想像以上の威力に目を見張る。
「よし、これほどの使い手ならすぐに使えそうだな。じゃあ忠誠を誓ってくれないか?」
「わかったぜ。俺はジャック・オー・ランタンのジャック、これからは兄弟のために働くぜ。今後ともよろしく!」
彼がそう言うと青い球状の光が胸から飛び出し、マコトのスマホの中に入っていった。
同様に他のジャック・オー・ランタンたちにも忠誠を誓ってもらい、32名の魔術師の部隊が加わった。
加入手続きが終わるとマコトはオヒシバにポケットマネーとして1000ゴールド銀貨3枚を渡す。
「王様、このお金は?」
「紹介料だ。タダでは悪いからな。受け取ってくれ」
「は、はい。ありがとうございます」
オヒシバは戸惑ったが人間の慣習だと思って素直に受け取った。
「よし、んじゃあお前たちは軍隊勤務になる。戦場では自慢の魔法で敵を蹴散らしてくれ。今日の所は解散でいいわ。明日から兵役に就いてもらうぞ」
そう言ってマコトは部隊を解散させた。
新たな戦力も手に入り少しは安心できるようにはなってきたある日。
マコトはアレンシア国内に放った内偵からの報告書を読み、これからどうすべきかを考えていた。
アレンシア国攻略の大きなカギとなるのは「イトリー家支持派」と「ビルスト国のメリル姫、ならびにアレックス王子」だ。
イトリー家は元々現在のアレンシア国領の中心地に近い部分を治めていた領主で、豚王来兎による武力侵攻および制圧後もこの地域の領民からの反発は根強く、今でも各地でレジスタンス活動が絶えないという。
ちなみに王や領主というのは地球からやってきた異界の王に限らずこの世界の住人、要は「現地住民」の中でも由緒ある血筋を引いたものや人々を束ねられるほどの武力や経済力を持つ者がなっていることがほとんど。
召喚が始まったばかりなのもあって地球から来た王で領土の広い者はなかなかいない。
また、元リシア国領土とアレンシア国中心地をつなぐルートから少し離れたところに獣人が暮らしているビルストという国があったが、そこは一切抵抗する事無く豚王の元に下った。
兵士達の3割、何よりビルスト国王が戦力は充分あるのになぜか戦わずして全面降伏してしまったからだ。
だが王の娘であるメリル姫とその弟アレックス王子は行方をくらましている。
噂ではイトリー家支持派と合流し、レジスタンスメンバーとして各地の拠点を転々としながらも反撃の機会を狙っているという。
彼らを味方に付ければ大きな戦力となるだろう。
「レジスタンスと接触して少額で良いから金銭、ならびに食料や武器の供給で支援してくれないか? 今は一人でも多くの味方が欲しい」
「承知いたしました。手配しておきます」
数日後、報告書を持って兵がマコトの元へとやってくる。
「閣下、内偵がイトリー家支持派との接触に成功しました。
噂通りメリル姫とアレックス王子はイトリー家支持派と共にレジスタンス活動をしておりました。
資金や物資の援助は有りがたいとは言っていますが、本格的に協力をするというのなら領土奪還後はイトリー家による再統治、ならびにビルスト国の再興が条件との事です」
「直接統治は不可能か。まぁいい。要求は全部飲むと話をつけてやってくれ」
「ハッ!」
相手側の要求は大体予想通りだった。まずはこちらが譲歩する形で協力を取り付けるのが先だとマコトは指示を出した。
正直台所事情はあまり良くない。
現在は借金こそしておらず今のところは産業基盤もしっかりしており、またミサワ国とランカ国の2国を吸収合併したこともあって黒字経営ではあるものの、手元に残るカネは微々たるものでさらに国を大きくするために近々銀行からまた融資を受ける予定である。
もちろん返すめどは今秋の収量を基に予測した1年後の数値もあるし、収量が足りない時は城の改修工事や民家の建設工事を遅らせてレンガや石の建材を売って急場をしのぐことも出来る。
と安全策を施しているので多分国家経営が破たんすることはないだろう。
この世界に来て半年以上、マコトは自分がここまで国家運営に向いているとは思わなかった。
地球ではこんな大仕事任せてくれることはおそらくないだろうと考えていただけに今の仕事は案外満足しているのだ。
もちろん不安が無いわけではない。予想もできない突発的な事で国が立ち行かなくなるのではという恐怖もある。
が、それを差し引いてもやりがいのある仕事だと感じていた。
「王様! 新しい住人を連れてきました! それも魔法が使える住人ですよ!」
「新しい住人だと? ま、まぁいい。通してくれ」
マコトは若干不安に思いながらも連れてくるよう指示を出す。
彼が連れてきたのは頭がオレンジ色のカボチャになっていて、左手にこれまたカボチャのランタンを持った、ふわふわと浮かぶ幽霊みたいな魔物達……ジャック・オー・ランタンだ。彼らは一言で言えば陽気でノリの軽い連中だった。
「おう! アンタが王様ってやつか! これからは俺たちも協力するからよろしくたのむぜ! 兄弟!」
「特技は何だ? 魔法が使えると聞いたが?」
「聞いてんなら話は早え! こう見えても炎系はわりと自信あるぜ!」
「んじゃあテストしよう。ついてきてくれ」
さすがに王の間で魔法をぶっ放すわけにはいかない。マコトはたまたま空いていたクロスボウの射撃訓練場へと彼らを連れて行った。
的が置いてある場所に目標物としてレンガを置き、その威力を試させる。
「あのレンガを狙ってくれ」
「OK、任せとけ。ハアアアア……」
右手に持っているランタンに魔力を送ると、ランタンは激しい炎を噴き始める。そして、
「エクスプロージョン!」
ランタンから放たれた球体がレンガにあたると爆発を起こし、吹き飛ばした。
「おお! 結構威力あるな!」
「フム。これほどの威力があるのならすぐさま実戦投入できそうですな」
マコトとディオールがその想像以上の威力に目を見張る。
「よし、これほどの使い手ならすぐに使えそうだな。じゃあ忠誠を誓ってくれないか?」
「わかったぜ。俺はジャック・オー・ランタンのジャック、これからは兄弟のために働くぜ。今後ともよろしく!」
彼がそう言うと青い球状の光が胸から飛び出し、マコトのスマホの中に入っていった。
同様に他のジャック・オー・ランタンたちにも忠誠を誓ってもらい、32名の魔術師の部隊が加わった。
加入手続きが終わるとマコトはオヒシバにポケットマネーとして1000ゴールド銀貨3枚を渡す。
「王様、このお金は?」
「紹介料だ。タダでは悪いからな。受け取ってくれ」
「は、はい。ありがとうございます」
オヒシバは戸惑ったが人間の慣習だと思って素直に受け取った。
「よし、んじゃあお前たちは軍隊勤務になる。戦場では自慢の魔法で敵を蹴散らしてくれ。今日の所は解散でいいわ。明日から兵役に就いてもらうぞ」
そう言ってマコトは部隊を解散させた。
新たな戦力も手に入り少しは安心できるようにはなってきたある日。
マコトはアレンシア国内に放った内偵からの報告書を読み、これからどうすべきかを考えていた。
アレンシア国攻略の大きなカギとなるのは「イトリー家支持派」と「ビルスト国のメリル姫、ならびにアレックス王子」だ。
イトリー家は元々現在のアレンシア国領の中心地に近い部分を治めていた領主で、豚王来兎による武力侵攻および制圧後もこの地域の領民からの反発は根強く、今でも各地でレジスタンス活動が絶えないという。
ちなみに王や領主というのは地球からやってきた異界の王に限らずこの世界の住人、要は「現地住民」の中でも由緒ある血筋を引いたものや人々を束ねられるほどの武力や経済力を持つ者がなっていることがほとんど。
召喚が始まったばかりなのもあって地球から来た王で領土の広い者はなかなかいない。
また、元リシア国領土とアレンシア国中心地をつなぐルートから少し離れたところに獣人が暮らしているビルストという国があったが、そこは一切抵抗する事無く豚王の元に下った。
兵士達の3割、何よりビルスト国王が戦力は充分あるのになぜか戦わずして全面降伏してしまったからだ。
だが王の娘であるメリル姫とその弟アレックス王子は行方をくらましている。
噂ではイトリー家支持派と合流し、レジスタンスメンバーとして各地の拠点を転々としながらも反撃の機会を狙っているという。
彼らを味方に付ければ大きな戦力となるだろう。
「レジスタンスと接触して少額で良いから金銭、ならびに食料や武器の供給で支援してくれないか? 今は一人でも多くの味方が欲しい」
「承知いたしました。手配しておきます」
数日後、報告書を持って兵がマコトの元へとやってくる。
「閣下、内偵がイトリー家支持派との接触に成功しました。
噂通りメリル姫とアレックス王子はイトリー家支持派と共にレジスタンス活動をしておりました。
資金や物資の援助は有りがたいとは言っていますが、本格的に協力をするというのなら領土奪還後はイトリー家による再統治、ならびにビルスト国の再興が条件との事です」
「直接統治は不可能か。まぁいい。要求は全部飲むと話をつけてやってくれ」
「ハッ!」
相手側の要求は大体予想通りだった。まずはこちらが譲歩する形で協力を取り付けるのが先だとマコトは指示を出した。
正直台所事情はあまり良くない。
現在は借金こそしておらず今のところは産業基盤もしっかりしており、またミサワ国とランカ国の2国を吸収合併したこともあって黒字経営ではあるものの、手元に残るカネは微々たるものでさらに国を大きくするために近々銀行からまた融資を受ける予定である。
もちろん返すめどは今秋の収量を基に予測した1年後の数値もあるし、収量が足りない時は城の改修工事や民家の建設工事を遅らせてレンガや石の建材を売って急場をしのぐことも出来る。
と安全策を施しているので多分国家経営が破たんすることはないだろう。
この世界に来て半年以上、マコトは自分がここまで国家運営に向いているとは思わなかった。
地球ではこんな大仕事任せてくれることはおそらくないだろうと考えていただけに今の仕事は案外満足しているのだ。
もちろん不安が無いわけではない。予想もできない突発的な事で国が立ち行かなくなるのではという恐怖もある。
が、それを差し引いてもやりがいのある仕事だと感じていた。
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