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10月
第48話 うまい話なんてあるわけない
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10月末日の前日。貯金を見せる機会こそなくなったが読書感想を話す時が来た。
「小僧。課題書は「カイジ 命より重いお金の話」だったがそれに何が書いてあったか聞かせてもらおうか?」
「はい。「借金の保証人にはなるな」という事と「紙に書いてあることが全てでハンコを押したらどんな内容でも従わなくてはならない」という事、
あとは「契約書をきちんと読めなければ成功できない」それに「うまい話なんてあるわけない」といったところでしょうか?」
「うん、良いだろう。読んでいるようだな」
ススムは満足げにうなづく。
「人間は誰しも「自分だけは特別だから美味しい話が転がり込んできてもおかしくない」と思い込みたくなるものさ。誰だってそうだ。
自分の実の子供に「そんなうまい話があるわけないじゃないか」と言って聞かせる親達だってそうだ。
彼らとて「欲」はある。人間が欲を持ち続ける限り、詐欺の話は永遠になくなることはない」
ススムは話を続ける。詐欺の手口を紹介してくれた。
「詐欺の手段の1つに「ポンジ・スキーム」というものがある。
あまりにも強力な手段だから初登場した1920年代以降もおよそ100年間、根幹の部分は変わらず枝葉を変えて現代でも使われている詐欺の代表的な手口だ。
こいつは「預かった投資金に対して配当を出す」と言って他人からカネを出資させるんだが実際には運用されておらず、
預かったカネの一部を配当金と偽って返しているだけだ。
例えば「私に出資すれば月利5%の配当が得られますよ」と言って100万円を預かったらその中から毎月5万円を返し続ければ何もしなくても20ヶ月は持つわけだ」
ススムによる詐欺の手口の紹介は続く。
「その間に信用を育てていって何百人、何千人という人々から合計何億、何十億とかき集めて最後の最後にトンズラをかますわけだ。
警察もカネを返し続けている間は被害者が誰もいないから法律上動けない。トンズラをかました時点で初めて警察は動けるんだが大体は泣き寝入りするしかないな。
そもそも「月利5%払いますから出資してください」という時点でおかしいと思わんとダメだ。月利5%は年利にすると60%だ。
単利だとしても100万円がたった1年で160万円にもなるんだぞ? 1.5倍以上だ。1000万なら月50万、年600万というとんでもない大金になるんだぞ?
複利だともっと配当金は高くなる。それでいてやる事と言えばただカネを出すだけだ。おかしい話だとは思わないか?
年利60%なんていう大金を払うくらいなら銀行へ行くなり日本政策金融公庫に行くなりして、別の方法で融資を引き出せば年利数%程度で払う金利はずっと少なくなる。
それをしない時点で怪しいと思わないと騙されることになるぞ。気を付けるんだな小僧」
ススムは進に「ポンジ・スキーム」という強力かつ代表的な詐欺の種類を教えた。
「人間のサガとでもいうべきものだが「自分だけは特別に選ばれた人間だ」とか「もしかしたら今度だけは本当の話かもしれない」と心の奥底では思ってる。
根柢の部分では欲望まみれで「自分だけは選ばれた特別な存在で、他の人とは違って楽してカネを得られる素質がある」とか
「自分だけ都合よくぬれ手にあわで楽して稼ぎたい」という思いを持っているんだろうな。
そういう「欲」がある限りこの手の話は無くならずに、引っかかる者は出続けるだろう。
人間に欲望がある限り詐欺の話は永遠になくならない。いつの人の世にもぴったりと寄り添っているだろう」
「ススムさんはどうなんですか?」
「オレか? オレも昔はそうだった。何度か引っかかった事もある。金額が1番でかい話では詐欺師に合計150万持っていかれたこともあった」
「!! 150万もですか!?」
目の前の老人が150万円という進からしたら大金を失ったことに大いに驚く。
「ああそうだ。オレだって昔はそうだった。小僧、お前はオレの教訓を生かして詐欺には引っかかってほしくないな。貴重なカネをドブに捨てるようなもんだ。
さすがにこの年となると煩悩はなくなったが、オレだって昔は若くてバカだった時もあったさ。出来れば同じ目には遭ってほしくない。
オレの事を反面教師にして同じ轍は踏まないでほしいな。
それと、来月からの課題本を出そう。「イヌが教えるお金持ちになるための知恵」という本を買って読め。もちろん感想も聞くから内容を覚えていて欲しい。
アマゾンなら買えるはずだ。買って読んでくれ。今のお前には少し物足りんかもしれんが基礎を学ぶ点では重要だぞ」
「ススムさんからの課題本を読んでると基本的なことばかり出てきますね」
進の愚痴ともとれる一言にススムは反応し、その眼を向ける。
「それだけ基本というのが大事だからだ。剣道だってまず最初に「型」を徹底的に学ぶ。
それと同じ様に金持ちになりたければ金持ちになるための基礎を徹底的に身体に叩き込むんだ。多くの者はここでつまづく。
基礎ばかりで退屈になって応用を学ばせてくれと言ってろくに基礎もできてない時点で上級者向けの事をやってズタボロになるものさ。
そうなった奴をオレは何十人とみてきたから、基礎を徹底的に固めるために課題本を読ませているんだ。それもこれもお前のためなんだぞ?
来月の月末前日までに読み終えることだな」
【次回予告】
失敗はなぜ失敗なのか? 成功はなぜ成功なのか? 抽象的な話だが全ては「ラベル貼り」なのだという。
第49話 「解釈の違い」
「小僧。課題書は「カイジ 命より重いお金の話」だったがそれに何が書いてあったか聞かせてもらおうか?」
「はい。「借金の保証人にはなるな」という事と「紙に書いてあることが全てでハンコを押したらどんな内容でも従わなくてはならない」という事、
あとは「契約書をきちんと読めなければ成功できない」それに「うまい話なんてあるわけない」といったところでしょうか?」
「うん、良いだろう。読んでいるようだな」
ススムは満足げにうなづく。
「人間は誰しも「自分だけは特別だから美味しい話が転がり込んできてもおかしくない」と思い込みたくなるものさ。誰だってそうだ。
自分の実の子供に「そんなうまい話があるわけないじゃないか」と言って聞かせる親達だってそうだ。
彼らとて「欲」はある。人間が欲を持ち続ける限り、詐欺の話は永遠になくなることはない」
ススムは話を続ける。詐欺の手口を紹介してくれた。
「詐欺の手段の1つに「ポンジ・スキーム」というものがある。
あまりにも強力な手段だから初登場した1920年代以降もおよそ100年間、根幹の部分は変わらず枝葉を変えて現代でも使われている詐欺の代表的な手口だ。
こいつは「預かった投資金に対して配当を出す」と言って他人からカネを出資させるんだが実際には運用されておらず、
預かったカネの一部を配当金と偽って返しているだけだ。
例えば「私に出資すれば月利5%の配当が得られますよ」と言って100万円を預かったらその中から毎月5万円を返し続ければ何もしなくても20ヶ月は持つわけだ」
ススムによる詐欺の手口の紹介は続く。
「その間に信用を育てていって何百人、何千人という人々から合計何億、何十億とかき集めて最後の最後にトンズラをかますわけだ。
警察もカネを返し続けている間は被害者が誰もいないから法律上動けない。トンズラをかました時点で初めて警察は動けるんだが大体は泣き寝入りするしかないな。
そもそも「月利5%払いますから出資してください」という時点でおかしいと思わんとダメだ。月利5%は年利にすると60%だ。
単利だとしても100万円がたった1年で160万円にもなるんだぞ? 1.5倍以上だ。1000万なら月50万、年600万というとんでもない大金になるんだぞ?
複利だともっと配当金は高くなる。それでいてやる事と言えばただカネを出すだけだ。おかしい話だとは思わないか?
年利60%なんていう大金を払うくらいなら銀行へ行くなり日本政策金融公庫に行くなりして、別の方法で融資を引き出せば年利数%程度で払う金利はずっと少なくなる。
それをしない時点で怪しいと思わないと騙されることになるぞ。気を付けるんだな小僧」
ススムは進に「ポンジ・スキーム」という強力かつ代表的な詐欺の種類を教えた。
「人間のサガとでもいうべきものだが「自分だけは特別に選ばれた人間だ」とか「もしかしたら今度だけは本当の話かもしれない」と心の奥底では思ってる。
根柢の部分では欲望まみれで「自分だけは選ばれた特別な存在で、他の人とは違って楽してカネを得られる素質がある」とか
「自分だけ都合よくぬれ手にあわで楽して稼ぎたい」という思いを持っているんだろうな。
そういう「欲」がある限りこの手の話は無くならずに、引っかかる者は出続けるだろう。
人間に欲望がある限り詐欺の話は永遠になくならない。いつの人の世にもぴったりと寄り添っているだろう」
「ススムさんはどうなんですか?」
「オレか? オレも昔はそうだった。何度か引っかかった事もある。金額が1番でかい話では詐欺師に合計150万持っていかれたこともあった」
「!! 150万もですか!?」
目の前の老人が150万円という進からしたら大金を失ったことに大いに驚く。
「ああそうだ。オレだって昔はそうだった。小僧、お前はオレの教訓を生かして詐欺には引っかかってほしくないな。貴重なカネをドブに捨てるようなもんだ。
さすがにこの年となると煩悩はなくなったが、オレだって昔は若くてバカだった時もあったさ。出来れば同じ目には遭ってほしくない。
オレの事を反面教師にして同じ轍は踏まないでほしいな。
それと、来月からの課題本を出そう。「イヌが教えるお金持ちになるための知恵」という本を買って読め。もちろん感想も聞くから内容を覚えていて欲しい。
アマゾンなら買えるはずだ。買って読んでくれ。今のお前には少し物足りんかもしれんが基礎を学ぶ点では重要だぞ」
「ススムさんからの課題本を読んでると基本的なことばかり出てきますね」
進の愚痴ともとれる一言にススムは反応し、その眼を向ける。
「それだけ基本というのが大事だからだ。剣道だってまず最初に「型」を徹底的に学ぶ。
それと同じ様に金持ちになりたければ金持ちになるための基礎を徹底的に身体に叩き込むんだ。多くの者はここでつまづく。
基礎ばかりで退屈になって応用を学ばせてくれと言ってろくに基礎もできてない時点で上級者向けの事をやってズタボロになるものさ。
そうなった奴をオレは何十人とみてきたから、基礎を徹底的に固めるために課題本を読ませているんだ。それもこれもお前のためなんだぞ?
来月の月末前日までに読み終えることだな」
【次回予告】
失敗はなぜ失敗なのか? 成功はなぜ成功なのか? 抽象的な話だが全ては「ラベル貼り」なのだという。
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